伸び行く信仰―信仰の三つの段階―　　ルカ9：57

伸び行く信仰―信仰の三つの段階―　　ルカ9：57－62　　　　主の2004.10.24礼拝

陸上競技に三段跳びという種目があります。踏切板の所までスピードをつけて走り、そこからホップ、ステップ、ジャンプという形で三歩飛びます。踏切板から最後のステップの着地点まで、飛んだ距離の長さを競う競技です。始めの第一歩、ホップでは踏切板を正しく踏んでスタートします。踏切板をはみ出れば、ファール（反則）となり、幾ら遠くへ跳んでも、それは無効になります。二歩目のステップで体のバランスを保ちつつ跳んで、最後のジャンプに備えます。三歩目のジャンプは、ホップ、ステップと飛んできた勢いを利用して、思いっきり前の方に跳びます。これを信仰生活に当てはめれば、最初の一歩はキリストを信じて信仰に踏み出して行く。そして信仰の方にバランスを保ちながら、天国に向かって飛躍して行くことになります。三段跳びでは一番遠くに跳んだ者が勝利者になります。信仰の場合には、キリストを信じる者は、例外なく最後の着地点は天国になります。

本日の聖書箇所はルカ福音書9：57－62、メッセージのテーマは「伸び行く信仰」です。先週は「行き詰まらない信仰」でしたが、さらに積極的に信仰生活に励み、「伸び行く信仰」を得るために、信仰に三つの段階があることを知りたいと願っています。一つは、イエス様を信じた、信仰がわかった、信仰を得たという「信仰を握ったという喜びの出発」、二つは「信仰は、試され、決断を問われ、成長してゆくものである」、三つは「信仰とは、ひたすらキリストを求めるものである」ということです。主のメッセージを聴いて、祈って新しい決断を捧げて、共に新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容　1、信仰を握ったという喜びの出発。

　　　　2、信仰は、決断して成長してゆくものである。ルカ9：57－62

　　　　3、信仰とは、ひたすらキリストを求めるものである。ルカ9：62

資料問題　ルカ9：57－62は直接には使徒に対する命令。またキリストに従う者たちへの命令でもある。57―58節、59－60節はマタイ8：19－22と同じである。61－62節はルカ独自のもの。この箇所はキリストの弟子は、自分を棄て、十字架を担って行かねばならないことを示している（ルカ9：22－27を見よ）。57節、「ある人」は「律法学者」（マタイ8：19）である。58節、「人の子には枕する所がない」、人の子はキリストのこと。キリストは全ての人を救うお方であるのに、ナザレから追われ、サマリヤ人に拒まれ、カペナウムを離れている。キリストに従う者も全てを棄てるようになる。60節「死人を葬ることは死人に任せておくがよい」、これは「肉体的死」と「霊的死」の二重の意味を含む言葉「死人」で構成されている。「肉体的に死んだ者の世話は、霊的に死んだ者に任せておけ」の意である（フランシスコ会ルカ注解123ｐ）。肉体的死人のことは、霊的死人即ち神を信じない者に任せておけば充分であり、霊的に新生した者は、更に重要な緊急の使命があり、それは神の国を宣べ伝へることである。62節、「手を鋤（すき）にかけてから後ろを見る者」、農夫がすきを使うとき、後ろを見ないのと同じように、キリストに従う者も、家族、家、財産などを喜んで棄てなければならない。この箇所で「イエス様に従う」とは、弟子として伝道に従事する事を意味しているが、同時に信仰に入り、信仰の道を進む者についても、そのまま適応できるものである。

1、信仰を握ったという喜びの出発がある。

信仰はイエス・キリストを信じることが出発点になります。キリストを信じるために、いろいろな道があります。ある方は、道傍で熱心に聖書の話をしている人に出会い、それがきっかけになって聖書を読んで、信仰を与えられています。ある方は、自分の行った学校がキリスト教主義の学校で、毎朝聖書の話を聞いて信じるようになっています。ある方は親がクリスチャンで、小さい時から聖書と祈りと教会という環境の中で育って信じるようになっています。その逆に子どもが先にクリスチャンになって、親が信仰を持ったという方もいます。ここに100人ほどの方々がいますが、100通りの様々な道筋を経て、キリストを信じる信仰にたどり着いています。信仰にたどり着いた道を振り返ってみる時に、

第一に知る事は、「我は天地の造り主、全能の父なる神を信ず」（使徒信条の冒頭）と告白されている「まことの神」についてです。日本の八百万の神々と違い、聖書の神は生きている唯一の神で、全世界を創造された、何でもお出来になる神であり、しかも全ての人の父なる神であるということを知ります。

第二に知る事は、まことの神を信じない事、神から離れている事が「罪」であるということです。日本では罪と言うと刑事上の犯罪、法律を犯す事であると思うので、罪という言葉を聞くと反発したり、或いは「私には罪がない」と主張したりします。聖書でいう罪とは、神に背いている心の罪を指しています（英語のSIN）。聖書は、罪を持ったままでいるなら、死んで滅びだと警告しています（ローマ6：23前半）。自分に罪がある、自分は神から離れている罪人であると気づくときに、初めて罪の赦しの道があることに対して心が開かれて行きます。

ですから第三に知ることは、罪の赦しがキリストによって与えられるという良き音信（おとずれ）即ち福音の恵みを知る事が出来るようになってきます。福音の内容について、使徒パウロは、「キリスト・イエスは罪人を救うためにこの世に来て下さったという言葉は、確実で、そのまま受け入れるに足るものである」（Ⅰテモテ1：15）と述べています。その御言葉のとおりに、神の独り子イエス・キリストが私たちと同じ人間になり、私たちの罪の身代りになって十字架にそのきよい命を捧げて下さったのです。キリストが、私の罪の身代りになって死んで下さったという事を信じ受け入れることによって、新しい人生が始まります。キリストを信じて、古い過去を葬り、キリストと共に生きる新しい人生に踏み出して行くために洗礼を受けます。洗礼を受けて、教会員になり「ああ、これで私はクリスチャンとして生きて行く」という確信を深めて、教会を中心にして信仰生活をして行くようになります。信仰初期の頃は「遂に信仰を握ったぞ」という思いが強くあります。それは当然の気持と言えます、聖書の御言葉を通して十字架と復活を知り、キリストの呼びかけに答えて、自分の心の扉を開いてキリストを個人的に救主、また主としてお迎えしたという喜びがあります。このようにして、私たちの信仰生活が始まって行きます。クリスチャンの方々は自分がキリストを信じ受け入れた日、或いは洗礼を受けた日を思い起して感謝が心に湧きあがってくると思います。キリストを求めている方は、今キリストを心の中にお迎えすれば、「私は生まれ変わった」という恵みを受けることができます。キリストを信じている方は、洗礼を受けようという決断をして下さい。洗礼においては条件が整ったら受けようとして人がいるかも知れません。例えば家族の了解を得るとか、自分の信仰がもう少し成長してからという事などです。そこで間違ってならないことは人間の理解、自分の納得ではなく、キリストに従うことが最優先であることです。信仰をもって前に向かって踏み出せば、問題は神様が解決して下さいます。

2、信仰は、決断して成長して行くものである。9：57－62

「わたしに従って来なさい」（59節）

不思議な神の選びによって救われ、洗礼を受け、教会員になり、信仰生活を励むようになります。信仰をもって本当に良かったと思い、感謝の日々が続きます。そうしている中に、ふと「自分の信仰が成長しているのだろうか？」という気持になる時があります。礼拝を捧げることが習慣のように思えたり、自分の信仰とは何なのかを考えてしまう時がきます。他の人を見ると、結構恵まれているようだ、活き活きとして信仰生活をしているようだ、何の苦労もなく恵みが溢れているように見えて、自分はこれでいいのだろうかと思ってしまう時があります。メッセージを聴けば励まされるが、メッセージによって教えられた事を自分の生活の中に取り入れることが出来ないというモドカシサを感じたりして悩んでしまうことがあります。教会自体はキリストを喜び、キリストを伝える教会として働きを継続している。教会全体は進んでいる。だが、これは自分の問題であるとは思うが、何となく合性があわない人がいたりする。或いは礼拝を休む人もいるではないか。大体みんなはどれ位の真剣さでメッセージを聴いているのだろうかなどと余分なことまで考えてしまうのです。

ルカ9：57－62には、そういった私たちに似た思いを持つ人々の事が出ています。最初の人は「イエス様が行く所なら何処へでも従って参ります」。キリストは「狐には巣があり、空の鳥には帰るべき巣がある。しかし、私には枕する安住の場所がない」と答えています。これは、「キリストに従って行くためには安易な気持を棄てなければいけない。信仰には辛い事もある」という事を伝えているのです。第二の人は「従って行きますが、父を葬りに行かせて下さい」と言っています。するとキリストは「先ずわたしに従って来なさい。死人を葬ることは、他の人に任せなさい。今もっとも緊急を要する伝道のためにわたしについて来なさい」と答えています。第三の人は「主よ、従って行きますが、家の者に別れを告げに行かせて下さい」と言っています。キリストの答は「手をすきにかけてから、後ろを見る者は、神の国にふさわしくない者である」と答えています。三人とも、従うとは言っているが、自分の都合などを優先して、何が何でもキリストについて行くという気持が欠けているのを指摘されているのです。最初の人は全てを投げ打って行こうという気持に欠けているので、安住の場所がないぞ、それでもいいのかかという覚悟を問われています。第二の人は、世の中の事柄に捕らわれ、また人の目を気にしている。だからキリストは敢えて強い言葉で、従う者にとって最も重要なことは神の国を求め、神の国を広めることであると教えています。第三の人に対しては「始めたことを後戻りして、やめてはならない」と諭しています。

ここで大事なことは、キリストに従う道は決断であるということです。決断というのは自分とキリストとの関係であるということを忘れないで下さい。私たちは「自分はこれでいいんだろうか」ということを思い、また「あの人は一体どうなっているのか」という事を気にします。この世の事も気になり、自分が何か言われはしないかと気にしています。そういう私たちに対し、キリストはたった一言、「わたしに従って来なさい」と呼び掛けて下さっています。私たちの信仰が足りなかろうが、他の人がどうであろうが、「あなたはわたしに従って来なさい」(ヨハネ21：22後半)と言われます。思いを新たにして、自分自身がキリストに従う決断を新たにするように祈って行きましょう。

3、信仰とは、ひたすらキリストを求めることである。9：62

イエスは言われた、「手を鋤にかけてから、後ろを見る者は、神の国にふさわしくない者である」。（62節）

農夫は畑を耕す時に、一心に前を見つめて、鋤（すき）という道具を使って土地を耕して行きます。後ろを振り返れば、手元が狂って真っ直ぐ前に進めなくなります。これはキリストを信じて信仰生活に踏み出した者は、真っ直ぐにキリストを見上げて、またキリストから目を離さないで進んで行きなさい（ヘブル12：2前半）という教えです。或いはキリストを見上げて、キリストに全てを賭けて行くという勧めです。パスカル（1623－62）は、「信仰はキリストに賭けることである」という意味の言葉を言ったと伝えられています。賭けというのは、勝つか、負けるかのどちらかです。ところがキリストに負けはありません。キリストは十字架において罪を滅ぼし、復活によって最後の敵である死を打ち破った，今も生きている救主だからです。パスカルが亡くなって、遺品の洋服を整理していると上着のエリに紙切れが縫い込んであった。そこには次のような言葉が記してあった。「1654年11月23日、月曜日、夜10時半から12時半頃まで。アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神。哲学者や、学者の神ではない。確実、確実、直感、よろこび、平安。イエス・キリストの神、わたしの神、またあなた方の神。あなたの神はわたしの神です。・・・永遠の命とは、唯一の、まことの神でいますあなたと、あなたが遣わされたイエス・キリストを知ることであります。イエス・キリスト。イエス・キリスト。・・・もうどんなことがあろうとも、彼から離れることがありませんように。・・・イエス・キリスト、そしてわたしの指導者へのまったき服従。地上の試練の一日に対して、永遠のよろこび。わたしはあなたの御言葉を忘れません。アーメン」。（メモリアル抜粋）。

私たちもキリストに全てを賭けて従う決断を捧げましょう。キリストとの関係がハッキリとすれば、怖れるものは無くなり、人のことが気にならず、キリストに従って行く喜びが心より湧き上がってきます。もし信仰生活がパッとしないように思える。もっと恵まれたいと望んでいるならば、キリストに全部を賭けるという祈りを捧げて下さい。また家族の救い、経済問題の解決、仕事の事、人間関係の勝利などキリストに全てを賭けて祈って行くという決断が大切です。私事になりますが、私が献身したいと言った時、父は怒り、母はガッカリしたようです。でもやがて献身したことを喜ぶようになり、二人とも信仰を得て天国に帰って行きました。私たち一人ひとりがキリストを見上げて、信仰第一の道を進んで行くように祈りましょう。

まとめ

1、信仰を得て新しい人生に踏み出したことを感謝しましょう。

2、信仰生活をして行く時に、自分がだめに見えたり、他の人が気になったりするような時があります。何があってもキリストに従う決断をもって従って行きましょう。

3、信仰はキリストを求め、キリストに全てを賭けて行くことです。キリストは十字架と復活によって罪を滅ぼし、死に打ち勝った勝利の主です。キリストに全てを賭けて行けば、祝福が与えられます。後ろを見ないで、前にいるキリストを見上げて祈りましょう。

祈　り

天地の主である神様、キリストの救いの中に入れて下さって感謝します。「手を鋤にかけてから、後ろを振り返る者はわたしにふさわしくない」と言われたキリストの御言葉を心に刻んで何があろうとも、人はどうあろうとも、私は一生を賭けて従って行く決断をします。どうか私の決断を受け入れて、私の心に住んで中から内から導い下さって、主に従う道を歩ませて下さい。生きている救主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ルカ注解―フランシスコ会、黒崎、米田、LAB，口語略解。「パスカル著作集Ⅰ・田辺訳・教文館」