「クリスチャンはキリストを主とあがめる」ペテロ第一3：13

「クリスチャンはキリストを主とあがめる」ペテロ第一3：13－22　　　主の2004.8.15礼拝

本日は、日本が戦争に負けて無条件降伏をした終戦記念日です（正しくは敗戦記念日）。それから約60年が経っていますが、世界には戦争が絶えません。イラクでは大規模な戦闘があり、イスラエルでも戦いが続いています。また世界各地にテロの脅威があります。この世界の現状を考える時に、「主の祈り」の中に「御国をきたらせたまえ。御心の天になるごとく、地にもなさせたまえ」という祈りがあることは素晴らしいことです。神の恵みが全世界を覆って行くように、思いを新たにして「主の祈り」を祈り続けて行くことが大切です。

先週は教会全体の祈りの中で、軽井沢バイブルキャンプが開かれ（8日夕―10日昼）、58名が参加し、豊かな恵みを受けました。最初の晩にビデオで中国教会の実状を見ました。中国は神を認めない共産主義による独裁国家であり、キリスト教への迫害がずっと続いています。北京など大都市には立派な建物の教会（政府公認の三自愛教会）がありますが、中国人出席者は共産党に名前を登録し、説教の内容は共産党がコントロールし、聖書の真理を語ることは禁じられています。自由と真理のない政府公認教会を避けて、聖書の中心であるキリストの恵みを伝える家の教会に続々と人々が集っています（非公認で家の教会と呼ばれる）。ビデオの中では、1030人の洗礼式の様子が紹介されていました。クリスチャンになれば、仕事を制限され、特に伝道者になれば逮捕投獄という危険があるにもかかわらず、続々と多くの人がキリストを信じて、命を賭けてクリスチャンとしての道を歩んでいるということです。

本日はペテロ第一3：13－22です。クリスチャンに対し、義のために苦しむようなことがあっても人を恐れず、ただ、心の中でキリストを主と崇めなさいとの励ましがあります（13―15節）。中国のクリスチャンは純粋にキリストを主と崇めて生活し、キリストを伝道しています。16節以下に、キリストの十字架の救いについて述べられ、救いの業（わざ）は陰府（よみ）にまで伝えられたことが記されています。さらにノアの箱舟は洗礼を象徴するものであり、洗礼の重要性が説かれています。今朝は、特に「ただ、心の中でキリストを主とあがめなさい」(15節)との御言葉を心に刻み、メッセージを聴き、祈って、新しい一週間を出発して参りましょう。

内　容　❶クリスチャンは、キリストを主とあがめる者である。3：13－16

　　　　❷クリスチャンは、キリストの十字架に感謝している者である。3：17－18

　　　　❸クリスチャンは、洗礼を受け、教会に繫がって行く者である。3：19―22

資料問題　3：13－4：11は、2：11からの日常生活に関するものの続きで、ここでは迫害の時にクリスチャンのとるべき態度を教え、善の実践の勧めがある。そうすれば、迫害は祝福となる（マタイ5：10－12）。この部分の中心はキリストの苦しみと死（十字架）である（2：20―25参照）。15節「心の中でキリストを主とあがめる」とはキリストと他のもののいずれかを選ばなければならない時、いつでもキリストを選ぶという意味である。19―21節は難解な個所である。キリストはハデス(陰府)にいる者たちに、キリストの救いの業（わざ）の勝利を宣べ伝えた（ケーリューソー、告げ知らせるの意。喜びのおとずれを伝える（ューアンゲリゾー）と異なる言葉が使われている）。この個所は死後に救いの機会があるということを意味してはいない。21節、「明らかな良心」、洗礼はその人の内面を造り変え、新生活の実行を約束する（コロ2：10－13）。聖霊によって新しい命が与えられるが、それは復活したキリストの命である。

❶クリスチャンは、キリストを主とあがめる者である。3：13－16

ただ、心の中でキリストを主と崇めなさい。（15節）

ペテロの手紙が書かれた時代は、ローマ皇帝を礼拝する時代でした。多くの人が皇帝を礼拝する中にあって、まことの神を信じるクリスチャンは皇帝礼拝をしませんでした。そのために、クリスチャンが正しく生きているのに、非難攻撃されることがありました。キリストは弟子達に対し、「信仰に反対する者は理由なしにわたしを憎む」（ヨハネ15：25）と言われました。キリストの弟子である私たちクリスチャンも、特別な理由がないのに信仰に反対される事があります。例えば、日曜日に「礼拝に行く」と言えば、理由がないのに「ダメだ」と反対される事があります。Aさんは、小学生の時から日曜学校に出席していてイエス様を信じた。中学生になって礼拝に行こうとすると、親から「あんまり深入りするな。教会に行くのは程々にしなさい」と言われた。しかし、Aさんは礼拝出席を続け、洗礼を受け、社会人になり、クリスチャンと結婚し、子供たちに救いの恵みが伝わり、家族で信仰生活を継続しています。ここで、皆さんに是非とも心に留めていただきたいことは、信仰のことは人の基準ではなく、神の御言葉の基準に合わせて行くということです。Aさんは神の御言葉に従って、礼拝に出席し続けて祝福を受け続けているのです。14節に、「人を恐れることなく、心を乱すことがないように」と言われています。15節後半―16節には、信仰について尋ねられたら、「やさしく、慎み深く、明らかな良心をもって弁明しなさい」と言われています。それは、親切な心をもって相手に接し、相手の話に耳を傾けつつ、キリストを語りなさいということです。

もう一度15節前半を読みます。「ただ、心の中でキリストを主とあがめなさい」という御言葉こそ信仰生活のカギを握る大切な御言葉です。この御言葉をわかり易く言えば「イエス様が一番」ということです。イエス様と他のものとを選ぶ時に、迷うことなくイエス様を選ぶということです。「心の中に」とありますが、これは心の底から、真心をこめて、キリストを主と告白し、また従うという意味です。口先だけ、或いは形だけ従うのではなく、自分の身も心もキリストに捧げて、裏表のない心をもってキリストに従うという決意を言い表しています。「イエス様が一番」ということを繰り返し思い続け、祈ってイエス様に従って行くように決断をもって祈って下さい。「キリストを主とあがめる」こと、即ちイエス様が一番ということに徹して行かないと、私たちはパートタイムクリスチャンになり、「フーポン信者」になってしまいます。パートタイムクリスチャンとは日曜日に礼拝に出席し、聖書を開きます。しかし月曜日からは聖書を開くこともなく、困った時は祈るという程度で、まったく信仰が無いよう生活をおくります。そうなると、日曜日の朝に一週間の間、開かないまま置いてある聖書の埃をフーと吹き払い、手でポンと汚れを落として教会に向かうので、パートタイムのフーポン信者なのです。

キリストを主とあがめる生活をして行くために三つの大事なことがあります。

➀朝に聖書を読み、祈って一日を出発することです。聖書をゆっくり読めない時もあるでしょうから、御言葉入りのカレンダーをかけて置くことが必要です。何事も祈って行きましょう。

そして週の初め、主の日の礼拝を重んじ、恵みを受けて一週間を出発することです。

②主を讃美することです。人種差別のために戦ったマルティン・ルーサー・キング牧師（1929－68）は銃で撃たれ、臨終の床で「慕いまつる主なるイエスよ」（聖歌総合版581）を口ずさんで召されて行きました。咄嗟の時に主を讃えるためには、日々の讃美が大切です。

➂主から託されている時間を捧げ、経済の恵みに感謝し献金して行くことです。ある方は十一献金を捧げる時に心を試されたが献金した。すると神の答があり、思わぬ所から働き口が開かれて祝福を受けたということです。キリストを主とあがめることを実践して行きましょう。

❷クリスチャンは、キリストの十字架に感謝している者である。3：17－18　　　　　（18節）

キリストもあなた方を神に近づけようちして、自らは義なる方であるのに、不義なる人々のために、一たび罪の故に死なれた。

17―18節はキリストの十字架の恵みについて語られていますが、これは2；20－25と対応しています。この個所ではキリストの十字架の恵みがしっかりと記されています。ペテロは、キリストの十字架の時には逃げてしまったのですが、そんな不甲斐ないペテロをキリストは見捨てずに赦して下さいました（ヨハネ21章参照）。ペテロはキリストの恵みに感謝し、キリストの愛の源である十字架の意義について記しています。

第一に、「不義なる人々のために、一たびは罪の故に死なれた」とあるように、キリストの十字架は私たちの罪のためでした。キリストは罪のない潔い神の御子でしたが、罪人が受けるべき罪の罰である死を身代りに引き受けて下さったのです。「一たび」とあるように、キリストの死は完全な身代りであることを示しています。それまでは罪の身代りに、その都度動物を殺して捧げていましたが、キリストの十字架の死は二度と繰り返す必要がない完全なものでした。

第二に、「死なれた」とあるように、キリストの十字架は私たちに対する愛の表れです。ヨハネは「主は私たちのために命を捨てて下さった。それによって私たちは愛ということを知った」（ヨハネ第一3：16）と述べています。私たちが罪を犯している者であっても、悔い改めてキリストを心に迎えれば、誰でも神の子になれます。そういう素晴らしい愛の表れが十字架です。

第三に、「神に近づけようとして（導こうとして）」とあるように、キリストの十字架によって神に近づくことが出来るようになりました。キリストを信じた者は神の子になり、聖霊を与えられて、「アバ、父よ」と祈ることができるようになります。

キリストを信じれば、誰でも救いを受けて生まれ変わり、永遠の命を与えられて天国に行くことが出来ます。

かつて売春婦であった少女が「私はイエス様の所に行けるかどうか分からない」と言った。彼女を導いている婦人が答えた。「どうして？イエス様はあなたを愛しておられる。神様の目にはあなたは尊い者です。イエス様の所に行くなら、イエス様は追い返したりはしない。神様はこの世界を良いものとしてお造りになった。人間は罪を知らなかったが、その後、悪を行い始め、神様は私たちを懲らしめなければならなかった。でも神様は愛です。独り子であるイエス様と話し合われた。『私は、人を懲らしめなければならないが、愛している』。するとイエス様が言われた、『父よ、私が地上に参りましょう。そして人間の受ける刑罰を負いましょう』。神様が同意したので、イエス様はこの世に来て33年半の間生活された。・・・イエス様が体験されたなかで最も悲惨なのは十字架にかかられた時だった。イエス様はそれから逃れることもできた。多くの天使が取り囲んでいたから、十字架から自分を守るようにとおっしゃれば、天使たちはそのようにしたでしょう。けれどもイエス様は苦しんで死ぬことを願われた。あなたや私の罪の代わりに死ぬために、この世に来られたのだから。イエス様を信じる私たちはもうどんな刑罰も恐れることはないの。自由なのよ。審（さば）きの日がきたら、私たちはみな、審（さば）きの場に立たなければならない。けれども主イエス・キリストを信じる私たちは何も恐れることはない。イエス様に属する人を責め立てる者はいない。イエス様ご自身が私たちの裁判官であり、弁護人だから」。少女は「でも、私は自分がなすべきことをしてはいない」と言った。「私たちにはしなければならないことなんてない。主イエス・キリストを信じることです。そうすれば救われる。しなければならないことはみな、イエス・キリストがして下さった。ただ、イエス様があなたの罪のために十字架にかかって死んで下さったということを受ければいいのです」。少女は手を組んで祈った。「イエス様、あなたが十字架でして下さったすべてを感謝します。私が自分を変えるために出来ることはわずかです。でも、あなたは私のうちに働いて下さいます。ありがとうございます」。

私たちも、今朝、キリストの十字架よる救いの恵みに感謝しましょう。キリストを信じて神の子にされていることを喜び、主を讃美しましょう。

❸クリスチャンは、洗礼を受け、教会に繫がって行く者である。3：19－22

この水はバプテスマを象徴する者であって、今やあなた方をも救うのである。それはイエス・キリストの復活によるものであって、からだの汚れを除くことではなく、明らかな良心を神に願い求めることである。（21節）

19―22節は、聖書の中で最も解釈が難しいと言われているところです。19―20節によると、キリストは十字架の上で肉体は死んだが、霊は生きていて、陰府（よみ）といわれる所に下って行かれたということです。そこは神を信じない人々の霊がいる所です。そこに行って「宣べ伝えることをされた（みことばを語ったー新改訳。宣教されたー新共同訳）」と記されているので、ある方々は、死後にも救いの機会があるというふうに拡大解釈をします。しかし、宣べ伝えることをされたという以上のことは記されていません。すぐに主題が変わって、ノアの時代に神を信じて救われたのは８名であったということが言われています。こ個所は、キリストが十字架によって救いの働きを完了されたことを世界の隅々に、陰府にまで、宣言されたことを意味していると理解するのが穏当です。

ペテロが言いたかったのは21節であると思われます。昔ノアの時代に神を信じない者達が大洪水によって滅ぼされ、神を信じていたノアと家族の計８名が箱舟に乗り込んで救われたという出来事がありました。ペテロは、ノアの出来事は、洗礼を受けて教会という箱舟に入る者が世の終りの滅びから救われるということを表していると説いています。ここにキリストを信じる者は洗礼を受けるという真理が明らかにされています。洗礼を受けることによって、「明らかな良心を神に願い求める（正しい良心の神への誓いー新改訳）」といわれています。それは、洗礼を受けて信仰を公にすることが大事である。信仰を公にする者に対して、甦ったイエス・キリストの命が豊かに働いて、新しい人生を力強く歩む恵みが与えられるということを示しています。

病床で死期の近い方などを除いては、信仰の実際は、➀まずキリストを信じる、②洗礼を受ける、➂教会の一員になる、④そして天国に入るまで教会に属して信仰生活を続けて行くのです。迫害の時代、洗礼を受けて信仰を公にすることは勇気と決断のいることでしたが、ペテロは洗礼を受けて信仰の旗色を鮮明にするように訴えています。最初に紹介しましたように、中国では、迫害覚悟でキリストを信じて洗礼を受ける者が続々と起されています。ここにいる多くの方々が洗礼を受けていますが、何の問題もなく洗礼を受けることが出来たのはクリスチャンホームの方々です。多くの方々が洗礼になると反対を受け、それを乗り越えて洗礼に至っていると思います。私も「少し早すぎる」とかいろいろ言われましたが、高校生の時に洗礼を受けて良かったと感謝しています。ある方は洗礼を受けるといったら離婚騒ぎになった。ある方は「家に入れない」「親が死んでも線香をあげてくれないのか」「結婚できない」などの反対に会っています。しかし、洗礼に踏み切ったことによって、神の祝福が豊かに与えられています。離婚に至ることもなく、家を追い出されることもなく、死んでから線香をあげるよりも生きている時にしっかり親孝行をしますと答え、また幸いな結婚をして恵まれています。ノアとその家族は箱舟に入って救われました。洗礼を受けた方々は、教会に属し、信仰の道を歩み続けていることを感謝しましょう。これから洗礼を受ける方々は、恵みを先に延ばすことをやめて、今この時に洗礼を受けますという決断の祈りを捧げて行きましょう。

まとめ

❶15節前半、キリストを主と崇めること、即ちイエス様一番の生活が信仰生活のカギです。

❷18節、キリストの十字架による救いに感謝しましょう。

❸21節、キリストを信じて洗礼を受けていることを感謝しましょう。キリストを信じている方々は今この礼拝で「洗礼を受けます」という決断の祈りを捧げて祝福をいただきましょう。

祈　り　天地の主である神様、独り子イエス・キリストが私たちの罪の身代りになって下さったことを感謝します。いつもキリストを主と崇め、イエス様を一番にする生活をして行けるように導いて下さい。洗礼を受けていることを感謝します。今朝「私も洗礼を受けます」という決断の祈りを捧げる人を起して下さい。病気の方々を支え、癒し、戦いの中にある方々に勝利を与えて下さい。この日本の国に福音が満ちて行くように導いて下さい。十字架によって私たちを救って下さったイエス・キリストの御名によって祈りを捧げます、アーメン。

参考文献ペテロ注解―フランシスコ会、黒崎、新聖書注解3、LAB。　「何という愛・ブーム・ことば社」