クリスチャンは苦難に遭うが、苦難に負けない　ペテロ第一4：12

クリスチャンは苦難に遭うが、苦難に負けない　ペテロ第一4：12－19　主の2004.9.5礼拝

もしも私が苦しまなかったら

神様の愛を知らなかった

もしもおおくの兄弟姉妹が苦しまなかったら

神様の愛は伝えられなかった

もしも主なるイエス様が苦しまなかったら

神様の愛はあらわれなかった　　　　（水野源三（1934－87）「わが恵み汝に足れり」より）

この詩は小学校4年生の時に高熱に罹り、それが原因で重度の脳性麻痺になり、口が利けなくなり、寝たっきりになった水野源三さんの詩です。寝たっきりの源三さんのことを知ったその町の宮尾牧師が一冊の聖書を届けたがことがきっかけになり、源三さんはキリストを信じます。その後お母さんが指さす五十音表を、瞬きで知らせて字を綴ってもらい、多くの信仰の詩を発表し、全部で4冊の詩集を出版しています。源三さんは自分で動くことができず、着替え、洗面、トイレ、食事を全面的に世話をしてもらうという生活でしたが、心にはキリストを信じる喜びが溢れていました。源三さんの祈りを通して、ご両親もキリストを信じて天国に召されて行きました。

本日の聖書はペテロ第一4：12－19です。この中に「苦しみ」「試練」という言葉があります。この個所では、直接には信仰の故に受ける苦しみについて言われています。さらに人生には様々な苦しみ、困難が付きまとっています。そうした中にあって、真実な神に自分を委ねて生きて行こうという事が教えられています。水野源三さんは苦しみを通して神の愛、キリストの救いの素晴らしさを知りました。その体験を通して、苦しみが自分の人生を幸いに導いてくれたという驚くべき真理を詩に表しています。私たちも病気、事故、問題で苦しむ事があり、また迫害のために苦しむ時もあります。しかしクリスチャンは苦しみを乗り越える力と恵みを下さるキリストの導きを信じています。メッセージによって信仰の希望と力とをいただき、祈って、新しい一週間を出発して参りましょう。

内　容1、クリスチャンは、主によって苦しみに負けない恵みを受けている。4：12－16

　　　2、クリスチャンは、善にして善を行われる主に信頼している。4：17－19

資料問題　12節、「火のような試練」、火は迫害の激しさを象徴している。また火は世の滅亡の始まりの徴である（Ⅱペテロ3：10.12）。13節前半はマタイ5：11と似ている。14節、「栄光の霊」とは「人間のそしり」に相対応するものである。フランシスコ会訳は「神の霊である栄光の霊」。15節、「他人に干渉する者」allotriepiskopos とは、直訳すると「他人の物事の監督」。他の人の私事に過度の興味を持つ事でお節介屋の意。16節、「クリスチャン」、Christianos使徒11：26.を見よ。「キリストの者」の意で、反対者より受けた軽蔑の名称であった。しかし今ではキリストを信じる者の一般的敬称として広く使われている。17節、エゼキエル9：6を見よ。18節、箴言11：31を見よ。19節、「真実」は偽りを言わず、約束を必ず成就すること。「創造主」は天地万物の造り主である神。

1、クリスチャンは、主によって苦しみに負けない恵みを受けている。4：12－16

むしろキリストの苦しみにあずかればあずかるほど、喜ぶがよい。それは、キリストの栄光が現れる際に、よろこびあふれるためである。（13節）

人生には浮き沈みがあり、上り坂下り坂があり、まさかという思わぬ出来事にぶつかる時もあります。ある宗教では「信じれば無病息災、商売繁盛です。ご利益がたくさんあります。」と宣伝します。しかし、その宗教に入信しても病気や事故はあります。「宣伝文句と違うじゃないか。」と言うと、「それはあなたの信心が足りないから。」「あなたのお布施が少ないから。」と無責任な逃げ口上を言います。聖書は人生に苦しみがないとは告げません。生きている限りは苦しみがあると言います。12－14節を通して、苦しみから受ける恵みを知ることが出来ます。

第一に、迫害を通して恵みがあります。12節、火のような試練とは、迫害の激しさを言い表しています。ペテロの時代、ローマ帝国に属する者は皇帝礼拝を強制されました。クリスチャンは神以外のものを拝まないので（出20：3参照）、なぜ皇帝を拝まないのかと責められ、そのために仕事を奪われるという迫害を受けました。現在の日本では表だった迫害はないように見えますが、いろいろな所で信仰のために摩擦があり、戦いがあります。お盆が過ぎましたが、墓参り、焼香、仏壇にご飯、花を供えるということがある。仕事を選ぶ時に日曜日は礼拝のために休みたいという願いがある。冠婚葬祭に関して親戚近所との付き合いの問題がある。会社によっては神社参拝がある。地鎮祭、建前などの神道行事があるなど数え上げてみると、宗教的な事柄との接触が多くあります。そうした中にあって、キリストを信じる信仰を妥協しないで貫いて行くためには戦いがあります。

ペテロは、＜信仰のために苦しみを受け、迫害を受けるであろう。迫害を受けるのは真実の信仰をもっている徴である。私たちを救うために十字架に上って下さったキリストを憶えよう。迫害を受けるが、キリストは栄光の霊を私たちの心に満たし、『私はあなた方を棄てて孤児とはしない』という約束をもって支えて下さる。特にキリストの名のために苦しむ場合には喜ぼう。栄光の霊があなた方に宿るからである（12－13節）＞とクリスチャン達を励ましています。

第二に、ここでは直接には言われていませんが、人生における様々な苦しみを通して恵みがあります。人生の苦しみには病気、経済問題がある。自分に落ち度がないような状態で災害に巻き込まれることがある。先週関東北東教区会が群馬県の浅間山に近い所であり、帰って来て浅間山噴火のニュースを聞いて驚きました。地元ではキャベツ、レタスに火山灰が降り、収穫がゼロになるという被害が出ています。人間関係のもつれで泣いている人もいる。私たちは老いて行く、そして人生の終わりには死という苦しみがあります。

そこで、ある宗教では柔和な顔をした仏像が、苦しみから逃れるために「悟りを開きなさい」と私たちを招いています。ある宗教で「仲間を増やせば苦しみが消える」と言って、信者獲得に人を駆り立てています。ある宗教では多額のお布施を強要する、また意味もなく南無妙法蓮華経を唱え続ければご利益があると言います。どの教えも私たちに「頑張れ」と言い「頑張れば救われる」と説きます。キリストは違います。キリストは人の苦しみを見て涙を流しています（ヨハネ11：35）。私たちに頑張れとは言わないで「その重荷、苦しみを私が背負ってあげよう」（マタイ11：28）と言われます。病気の人に手をつけて癒し（マタイ8：1－4）、生まれつき目が見えない人に「あなたに神のみ業が表れるように」（ヨハネ9：3）と言って目を見えるようにし、その魂を救いに導いておられます。キリストは、人の苦しみの原因は罪にある。人は罪をもったままでいるので、神に罰せられて死んで滅んで行く。人を助けるために罪のない私が人間の受ける罪の罰の身代りになって、死んでお詫びしますと決意して十字架に死んで下さったのです。神は愛です、誰でもキリストの十字架を信じれば、罪を赦し、神の子にして下さると約束されました（ヨハネ1：12）。

第三に、苦しみを怖れないという恵みがあります。信仰による迫害はキリストを信じていることの証です。また様々な苦しみがありますが、聖書朗読の詩篇119：71「苦しみにあったことは私にとってよい事です。これによって私はあなたの掟を学ぶ事ができました」とあるように、苦しみを通して神を信じるように導かれていることを感謝します。15―16節を通して、ペテロは信仰以外のことで苦しみを招かないように警告しています。15節、人殺し、盗人、悪を行う者というのはすぐ分かります。最後の「他人に干渉する者」とありますが、これは他人の生活やプライベートなことに必要以上に首を突っ込むお節介屋にならないようにということです。

2、クリスチャンは、善にして善を行われる主に信頼している。4：17－19

だから、神の御旨に従って苦しみを受ける人々は、善を行い、そして、真実であられる創造者に、自分の魂を委ねるがよい。（19節）

ペテロは世の終りが近いことを意識しています（4：7参照）。世の終りには神の審きがあります。17節前半、神の審きは神の家である教会から始まる、と厳粛に告げられています。旧約の預言者エゼキエルは「まずわたしの聖所から始めよ」という神の審きの声を聞いています（エゼ9：6）。ペテロは、17節後半―18節、神の審きが神の家から始まるとすれば、神の戒めを無視し、キリストの救いの恵みを拒み、神に不従順である人々は一体どうなることであろうかということを、箴言11：31を引用しながら、訴えています。日本では何と99％の人々がノンクリスチャンです。この現状を一番憂えているのはイエス・キリストです。家族が救われ、天国に行くように祈り、また機会を見つけて伝道しましょう。また友の救いのためにも祈りましょう。この9月の間に、救いに与る方々が起されるように祈って行きましょう。洗礼を決断する方々が起されるように祈り続けましょう。　

クリスチャンは世の終りの日に神の前に立ちます。コリント第二5：10を読みます。神の審きの時があることを知る時に、私たちの心に安らぎと共に悪の誘惑に対するブレーキがかかります。私の中学時代に、若い日本人の修道士が毎朝聖書の話しをしてくれました。「悪がはびこっている。悪い人がのさばっている。正直に働き、一生懸命にやっている人がなかなか報われないということがある。だが神は生きている。神は不正や悪や隠れた所でしている悪事をも見通しておられる。神は悪を審かれる。悪いことをしてもこの世では見つからないままで終わるという事があるか知れない。だが神の最後の審判がある。そこで全てのことを神は明らかにして、公平に審かれる。だから悪いことをするな、神が見ておられる。悪口を言うな、神が聞いている。憎んだり妬んだりするな、神は人の心の中のことまでご存知である。」。50年前、顔を真赤にして、神の前に正しく生きろと教えてくれた修道士の言葉は今でも私の心に刻み込まれています。

最後に19節からの教えを二つ心に留めて下さい。

一つは、神は善を行い、真実なお方であるということです。聖書朗読した詩篇119：68前半に、「あなたは善にして善を行われる。」（「いつくしみ深くあられ、いつくしみを施されるー新改訳」。「あなたは善なる方、すべてを善とする方―新共同訳」。「You are good, and you do what is good.― TEV訳」）とあるように、神のなさることはすべてが善です。神は真実です。真実とは偽りを言わず、約束を実行するという意味があります。神はアダムとエバが罪に堕ちた時に、救主を遣わすと約束され（創世記3：15参照）、時満ちてキリストを世に遣わし、十字架の救いを成就されました。私たちはキリストの十字架によって救われていることを感謝します。

二つは、神に信頼し、自分の魂を委ねるという信仰を持つことです。ところで、少し逸れますが、ペテロの手紙をここまで読み進んできました。読んできて気がつかれたと思いますが、この世には苦しみがある。また火のような試練、迫害がクリスチャンに襲い掛かってくるという事実は述べられていますが、なぜという答は記されていないということです。ペテロは、苦しみに直面しているクリスチャンの現在の立場を認め、その苦しみの中でクリスチャンとしてどのように生きるかということに焦点を絞って語っています。ペテロの願いは、クリスチャンが善にして善を行われる眞実である神に信頼し、すがって行くようにというところにあるのです。

神に自分の魂を委ねるということは、神の前に先ず静まり、祈ることから始まります。善いことも悪いこともあるが、全ては主の許しの中にあることを信じることです。神は物事すべてを相働かせて、万事を益に変えて下さるという信仰に立つことです（ローマ8：28）。かつて山崎パンの工場が焼けたことがあります。その時クリスチャンの山崎パンの社長は、いろいろと飛び回る前に一晩神の前にひざまずいて神の導きを求め、再建することが出来たのです。前の日本銀行総裁のクリスチャン速水氏は重要な政策を発表する時は、先ず祈って神の導きを求めてから発表し、政策を実施したということです。神に信頼し、神に委ねて行くということは先ず静まって祈ることから始まります。神の前に静まり、キリストの御名によって、聖霊によって祈ることが信仰の恵み、力になります。

神に自分の魂を委ねるということは、「先ず神の国とその義とを求めよ」（マタイ6：33）という生活をすることです。これは神を優先すると言うことです。具体的に、朝起きて祈って一日を始める。日曜日には共に集って礼拝を捧げる。収入の十分の一を神に捧げる。主のために奉仕をもって仕える。病んでいる人や困っている人のことを思い遣り、声をかけ、助けの手を伸べる事などを実践して行くことです。具体的に神を第一にして生きて行く時に、自分の必要が与えられていることを体験することが出来ます。

仕事、先行きのこと、家族のこと、結婚のことなど気にかかることがあります。先ず自分を神に委ね、静まって祈ることです。今朝あなたの問題は何でしょうか。善にして善を行われる神に信頼し、聖霊の導きの中にキリストの御名によって祈って行くならば、物事すべては神が恵みに変えて下さいます。先回マザーテレサの証をしました。インドで多くの死に行く人、病人などを助ける働きを始め、発展させ、彼女の死後もその働きは全世界に拡大されています。彼女の働きの根源は毎朝の礼拝にありました。先ず静まって神に祈り、キリストの愛に満たされ、聖霊に導かれて一日を始めるのが日課でした。善にして善を行われる神に信頼し、キリストの御名によって祈りましょう。

まとめ

1、13節、人生は迫害、また様々な困難、苦しみがある。キリストは苦しみに負けないように私たちを守って下さる救主である。キリストに信頼し、祈って、すがって行こう。

2、19節、善にして善を行われる真実なる神に信頼して行こう。先ず何があっても静まって祈ろう。今朝、自分の事をキリストの御名によって神に祈ろう。必ず万事を変えて益として下さる。神に自分を委ねて祈って行こう。

＊聖歌628（590）番を歌い、お祈りをささげます。

祈　り

天地の主である神様、救主イエス・キリストによって私たちを神の子にしていただき感謝します。信仰の故に摩擦、迫害があっても、何があろうとも私たちはキリストに従って行きます。あれこれ動き回り、人に頼りがちですが、先ず静まって、聖霊に助けられてキリストの御名によって祈るように導いて下さい。病気の方を癒し、家族を救いに導き、困難の中にある方を助けて下さい。主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献

ペテロ注解―フランシスコ会、黒崎、バークレー、宮村、ＬＡＢ。　「水野源三詩集1―4巻」