クリスチャンの群れにおける長老の使命と若い人への勧めペテロ一5：1

クリスチャンの群れにおける長老の使命と若い人への勧め ペテロ一5：1－5　主の2004.9.12礼拝

孫の慧は、自転車のカギを持っておもちゃの自動車に乗り、ハンドルの下あたりにカギを差し込む真似をします。親が車を運転する時にキーを差し込んでエンジンをかけるのを見ていたのでしょう、１歳半の赤ん坊ですが、ちゃんとエンジンキーをかける仕草を真似ているのです。子どもは大人をお手本にして、その真似をします。親がお祈りをしていれば、子どももお祈りするようになります。親がギターを弾いていれば、弾く真似をして喜んでいます。何でも大人をお手本、模範にして成長して行きます。

本日の個所はペテロ第一5：1―5です。1－4節に長老（牧師、伝道師、指導者を指す）への教えがあり、３節終りに、長老は「群れの模範となるべきである」との勧めがあります。私たちの模範はキリストであり、キリストに倣って行く時に霊的成長があります。例えばキリストが愛をもって人々に接したように、長老たる者はキリストを模範にして、教会の一人一人を愛し、導くことが求められています。これは教会の奉仕役員、長年信仰生活をしている人にも当てはめて考えることができます。５節には若い人々への勧めがあります。若い人への勧めであると同時に群れの指導者である長老に対比して、若い人とは教会員全般を指しているとも受け取れます。キリストは弟子の足を洗うことによって、身をもって謙遜な態度を示して下さいました（ヨハネ13章参照）。私たちもキリストを模範にして、キリストに倣って謙遜を身につけて行くことが大切です。

主の日の朝、ご一緒に御言葉に耳を傾け、祈って新しい一週間を出発して参りましょう。

内　容　1、長老への勧め。5：1－4

　　　　2、若い人への勧め。5：5

資料問題　１節、「長老プレスビュテロス」は教会生活を導く長老たち全体（冠詞なし）。次の「私も長老のひとり」の長老はペテロ自身を指している（定冠詞ホあり）。長老は、本来は部族、家族の首長、ユダヤ教では会堂の有力者、または民の長老と呼ばれる地方の指導者。そこからキリスト教会の役員、指導者に用いられるようになった。長老の資格はテトス1：6。「監督エピスコポス」のように、教会の伝道、牧会、管理など重要な役割を担っている。多分両者は同じであろうが確かではない。使徒の下にあった役であり、今日の牧師、伝道師、また教会奉仕役員に相当すると思われる。「キリストの苦難についての証人」、ヨハネ15：27、使徒1：8、21,22、ルカ24：44－48。２節「牧しなさい」は羊の成長にあらゆることをして、飼い育てて行きなさいという意。「恥ずべき利得」はアイスクロス（恥ずべき、見苦しい）とケルドス（利得）という言葉で、意地汚い利得のために心が動かされる危険があることを警告している（テトス1：7）。３節、「権力をふるうことをしない」はマルコ10：42－45参照。「模範となる」は実例を示し、ともに実践して行くようにすること。4節、「しぼむことのない栄光の冠」、ヤコブ1：12、黙示2：10,11.参照。５節「身につける」は帯のついた着物を着て結ぶことで全身に着物がピッタリ身についている姿。「高ぶる者をしりぞけ、へりくだる者に恵みを賜う」、箴言3：34、詩138：6、コロサイ3：12－15.参照。

1、長老への勧め。5：1―4

「・・神の羊の群れを牧しなさい。・・群れの模範になりなさい」。（2―3節）

ペテロの手紙が記された頃は、教会に対する迫害が激しい時代でした。そこでペテロは手紙を閉じるにあたって、クリスチャンの一致結束を呼びかけ、教会の指導者である長老の使命と責任について教えています。さらに若い人という呼びかけで、教会員が謙って長老の指導に服すべきことを教えています。初代教会では長老は、監督と同じとも言われています。長老、監督というこの二つが重なり合って、長老というのは牧師職に相当する立場にある者と考えれば分かりやすくなります。牧師だけではなく、教会員のために祈り、仕え、教会運営の先頭に立っている奉仕役員についても当てはまります。さらには信仰生活の長い人を指して用いられる時もあります。1節前半で、ペテロは教会指導者である各地にいる長老たちに呼びかけています。ペテロは「自分も長老のひとりであるが、キリストの苦難の証人として十字架と復活に直接に関わった者である」と言っています。これは彼がキリストと三年半寝食を共にし、特に十字架と復活の証人であり、キリストの使徒であることを意味しています。1節後半では、ペテロは、キリストの再臨の時には栄光に与り、天国に行く者であるという確信を述べています。

1－4節において、ペテロは、伝道牧会している長老たちに大事なことを教えています。

第一の教えは、「自分の信仰をしっかりと保つこと」です。信仰の中心点はキリストの十字架と復活です。聖書は＜誰でもキリストを信じれば、罪を赦されて神の子になり、「生命（いのち）の書」（ルカ10：20、黙示録20：12）に名前を記され、やがて天国に導かれ、主と共に永遠に生きる恵みを与えられる＞という救いを告げ知らせています。キリストは、十字架の上で血を流しながら、朝の九時から昼の三時まで私たちの罪の身代りとなって苦しまれ、罪の罰である死を引き受けて下さった救主です。ペテロは「私はキリストの苦しみの証人である」と言っています。証人とは殉教者を意味する言葉で、「命を賭けてキリストの十字架の救いを証言します」ということを表しています。ペテロは、この手紙のはじめに「イエス・キリストに従い、かつ、その血の注ぎを受けるために・・」（1：2）、また「あなた方のよく知っているとおり、あなた方が先祖伝来の空疎な生活から贖い出されたのは、銀や金のような朽ちる物によったのではなく、傷も、しみもない子羊のようなキリストの尊い血によったのである」（1：18－19）と記すことによって、キリストの十字架による救いを強調しています。このことはクリスチャン全てに共通する恵みです。私たち一人ひとりがキリストの十字架の証人です。

　第二の教えは、「自分の使命を果せ」ということです。２節「あなた方に委ねられている神の羊の群れを牧しなさい」と言われています。「牧しなさい」とは「教会に集まっている一人一人

を養い育て、サタンの手から守るようにしなさい。クリスチャンの霊的成長のために、全力を尽くしなさい」という意味です。ここで大事なことは、「委ねられている」（新改訳―あなた方のうちにいるでは意味が弱い）と「神の」という言葉です。教会に集まる人が数人、数十人、百人、千人、何十万人であろうとも、その人々は神の民であり、神が長老たちに委ねたものです。「私が伝道して、これだけになった」ということは伝道牧会している者が言うべき言葉ではありません。教会の頭（かしら）はキリストです。全てはキリストが与えて下さった恵みによるものです。これを忘れると「恥ずべき利得のため」という罪に陥る危険があります。「恥ずべき利得」とは、キリストを忘れ、意地汚い欲に支配されることです。悪い例ですが、アメリカ全土に放映されていた二つのキリスト教テレビ番組がありましたが、二つとも消えて行きました。それは主宰していたテレビ牧師が、自分の力で番組が人気を博していると思い始め、自分の力を過信し、自分勝手に献金を使い込み、性的罪を犯したからです。これは本当に恥ずべき事でした。私たちは、いつでもキリストを崇め、神に栄光を帰するという事をして行くならば間違うことはありません。牧師も奉仕役員も聖霊に導かれ、純粋な心で、祈って主に仕え、教会員のため祈って、仕えて行く事が大切です。また、これは全てのクリスチャンに当てはまる大切な事です。

第三の教えは、「群れの模範になる」ということです。私たちは、相手の欠点を直したがり、教えたがる傾向があります。ペテロは、「権力をふるってはならない」と注意し、「あなた方の生活という実例を通して、人に模範を示しなさい」と教えています。例えば、キリストは、病気の人がいれば、手を差し伸べて癒しています。朝早く、あるいは人を避けて、祈りを捧げています。キリストは生活の実際を通して、大切なことを模範として誰の目にも分かるように示しています。パウロはテモテに対し「言葉にも、行状にも、愛にも、純潔にも、信者の模範になりなさい」（Ⅰテモ4：11）と教えています。また「わたしがキリストに倣う者であるように、わたしに倣いなさい」（Ⅰコリ11：1）とも言っています。私たちも、模範を示しましょう。

私たちは喜びのクリスチャンになりましょう。「イエス様を信じるとうれしい」という喜びを、笑顔をもって、讃美をもって表して参りましょう。

聖書を読んで下さい。聖書のことはあの人に聞けば、何でも教えてもらえると言われるような聖書の人になって下さい。

祈って下さい。あの人に祈ってもらおうと言われるぐらい、祈りに打ち込んで行きましょう。

集会に出席して下さい。あの人に会いたければ集会に行こうと言われるぐらい、集会に励みましょう。

感謝をもって献金しましょう。奉仕に励みましょう。そうすれば、やがて私たちは天国において栄光の冠を受けることができると約束されています。

2、若い人への勧め。5：5

同じように、若い人たちよ。長老たちに従いなさい。また、みな互いに謙遜を身につけなさい。神は高ぶる者をしりぞけ、へりくだる者に恵みを賜うからである。（５節）

５節に入る前に、４節後半にある大牧者ということを見てみましょう。大牧者とはイエス・キリストのことです。ペテロは上がり下がりの多い信仰の持ち主でした。一番初めにキリストを神の御子であると告白したのはペテロです（マタイ16：16）。しかし、その後でキリストが十字架にかかることに反対した為に、キリストから「サタンよ、私の十字架の邪魔をするな。」という叱責を受けています（マタイ16：23）。キリストが十字架にかかる前に「私は死ぬことを覚悟して従って行きます」と言いながら、いざとなると逃げ出し、気を取り直して引き返してキリストの裁判を見ていましたが、人から「あなたもキリストの弟子でしょう」と言われると怖くなって３回も「キリストと自分は無関係だ」と言ってしまいます（マタイ26章）。そんな彼を見捨てないで、ペテロに復活のキリストが現れて、「わたしを愛するか」と三度尋ねて、「わたしの羊を養いなさい」という命令を与えています（ヨハネ21章）。そうしたキリストの愛の取り扱いを受けたペテロは「イエス・キリストこそ、まことの羊飼い、愛の深い牧者である」という信仰の感謝を「大牧者」という言葉で表しているのです。

５節に入ります。

「若い人たちよ」とありますので、文字通り若い人へのメッセージと受け取ることができます。しかし１－４節において、長老たちへということで、教会の牧師、奉仕役員、また信仰歴の長い人に対する教えがありました。教会の指導者を長老と呼んでいるので、それに対して、一般の信徒の方々を若い人という言葉で表現していると考えられます。ここでは「長老たちに従いなさい」という言葉で、教会全体が、神によって立てられている指導者に従って行こうという勧めがなされているのです。５節後半には、「みな互いに・・」とあるので教会全体がへりくだった思いをもって、互いに祈り合い、励まし合って行こうということが勧められています。

「長老たちに従いなさい」と言われています。教会は牧師を中心にして、形成されています。従いなさいということは、長老のために祈ることから始まります。私が、いつもお願いしていることは、私たち夫婦のために祈って下さい、ということです。皆さんの祈りなしには教会の務めを継続することは不可能です。来週は関城で個人伝道研修会の奉仕を夫婦でいたします。私は10月、岡山教会礼拝メッセージ、倉敷市で中国聖会のメッセージのご用を3回します。全ての働きのために祈りが必要です。皆さんの祈りの徴をいろいろなことで心に感じ、手紙で、メールで励ましを受けたりして感謝しています。また当教会には６名の奉仕役員がいます。ファミリー家長、教会学校教師がいます、礼拝のことを考えると楽器奉仕者、ＰＡ奉仕者、さんび奉仕者がいます、外には駐車係りがいますし、輸送隊の働きがあり、その他実に様々な働きが一つになって礼拝を構成しています。全てが一つになってキリストの栄光となるように、聖霊の導きが豊かであるように祈って行くことが恵みの秘訣です。

さらに「謙遜を身につけなさい」とあります。身に着けるとは、着物を着て帯を結べば、着物がピッタリと身について美しい姿になることを表しています。もし帯がなければ、着物は身に着かず、だらしない姿になります。どんなに聖書の知識があっても、いろいろなことで熱心であったとしても、高ぶった気持ちがあれば、それは帯のない着物を着ているようなものです。「神は高ぶる者を退け、へりくだる者に恵みを賜う」（箴言3：34からの引用）とあるように、高ぶりは神の御心に背くことです。最初の人間アダムとエバは神のようになれるというサタンの誘惑を受けて、神のようになりたいという高ぶった思いをもって、神に背き、罪人になってしまったのです（創世記3章）。

コロサイ3：12－15に謙遜とはどのようなことであるかが具体的に記されています。コロサイ3；13の御言葉は心に深く響きます。「赦し合う」ということが実現できれば、民族紛争も戦争もなくなって行くでしょう。それはまず身近なところから始まります。心に「赦さない」という重荷を隠しておかないで、キリストの十字架を見上げて「赦します」と祈って下さい。内村鑑三の臨終近い場面では「すべてを赦す」と言って、周囲の多くの方々に最後の赦しを請いながら、天国に行く備えをしている様子が記録されています。コロサイ3：14をもう一度読んでみます。「愛はすべてを完全に結ぶ帯」とありますが、愛がなければ一切の事柄は無益です。御使いの言葉を語っても、預言や知識に秀でていても、強い信仰があっても、全財産を人に施し、殉教の死を遂げたとしても、もし愛が無ければ一切は無益であると言われています（Ⅰコリ13：1－3）。愛の源はキリストにあります。キリストは弟子の足を洗い、最後には人の罪を背負って十字架に上って下さった救主です。100年以上前ですが片岡健吉（1843－1903）という政治家かいました。彼は政府の政策に反対したため、刑務所に入れられ、そこで便所掃除を命じられた。不満で仕方なかったが刑務所で新約聖書を読み、ヨハネ13章でキリストが弟子の足を洗ったという記事に出会った。「キリストでさえも弟子の足を洗った。私の便所掃除くらい何であろう。私は残る生涯を日本国民の汚れた足を洗うために働こう」と決意した。そしてイエス・キリストを救主として信じた。やがて日本に国会が開設され、彼は衆議院議員に当選し、国会議長にもなった。だが、この世での地位があがっても、彼は教会では玄関でみんなの履物を整理する奉仕を続けていた。キリストを信じることによって、彼に謙遜がピッタリ身についていたのです。

まとめ

1、 2―3節、指導者のために祈りましょう。私たち一人ひとりが群れの模範となるように、祈って信仰生活に励んで行きましょう。

2、 5節、互いに主の十字架を見上げて謙り、祈り合って行きましょう。

祈　り　天地の主である神様、私たちは救主イエス・キリストによって救われていることを感謝します。キリストの十字架こそ救いの原点であることを信じ、キリストの恵みを表す信仰生活をして行く者であるように導いて下さい。積極的に喜びをもってキリストの救いを讃美し、聖霊に導かれ、へりくだって信仰の道を歩ませて下さい。各自の仕事、学びを祝福して下さい。ファミリーの集まりを祝福して下さい。イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ペテロ注解―バークレー、黒崎、米田、フランシスコ会、ＬＡＢ，口語略解。「キリスト教例話事典2・藤井著」