主のうちにあるなら全てが新しい　コリント第二5：17

主のうちにあるなら全てが新しい　コリント第二5：17　　　　　　　　　　　　　主の2005.2.20礼拝

日本が戦争に負けて2年後、短い期間でしたが、片山哲氏（1887－1978）が総理大臣を務めました。この方はクリスチャンで、1947年内閣組閣の晩に、自分の所属する富士見町教会島村亀鶴牧師に祈ってもらってから、それぞれの大臣を選んだことで知られています。100年程前、イギリスにグラッドストーンという総理大臣がいました（1809－98）。彼は、「自分の生涯で大学を一番で卒業した時も、国会議員に当選した時も、総理大臣になった時もうれしかった。しかし、最もうれしかったのは、青年時代、イエス様を救主と信じ、新しく生まれ変わったことを経験し、洗礼を受けた時でした」と語っています。

本日はコリント第一5：17です。「誰でもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である」とあります。「キリストを心に信じ受け入れた者は、誰であっても罪を赦され、心の生まれ変わりを与えられ、永遠の命を受けている者である」という恵みの御言葉です。片山哲氏+は生まれ変わったクリスチャンであることを忘れることなく、総理大臣になっても奢らず、祈って大臣を決めて行きました。グラッドストーンは「イエス様を信じ、洗礼を受けたことが人生の中で最もうれしかったことである」と述べ、イエス様を信じて新しい人生が開けたことを感謝しています。私たちひとり一人も、キリストを信じる恵みを与えられていることを感謝し、全身全霊をもって主のメッセージを受けとめ、主の語りかけを自分のためであると信じ、聖霊によって祈り、新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

1、キリストの招きに応え、キリストによって新しくされた者がクリスチャンである。

2、キリストの招きに応え、キリストを見上げて前進する者がクリスチャンである。

資料問題

コリントの手紙第一、第二は使徒パウロの記したもの。コリント教会から寄せられた質問に答えつつ、コリント教会に対し霊的指導を与えている。２通の手紙の中に、キリストを信じる信仰共同体である教会の抱える諸問題、例えば教会の分裂騒動、信者の淫行問題、結婚について、偶像にささげた肉の問題、聖餐式の正しいあり方、聖霊の賜物、復活の教え、パウロの使徒職を否定する者達への反論、献金のしかた、パウロの第三の天の体験などが取り扱われ、それらは現代教会にも共通の事柄である。

本日の御言葉は、キリストを信じる者の全く新しい生き方を示すものである。この前の箇所にキリストの愛の豊かさと激しさ。後の箇所にキリストによる和解と、和解の使者たれという勧めがある。なお5：21はキリストに関する重要な聖句である。「キリストにある」とはキリストを信じて、新生し、全く新しい人間になったことを意味している。「古いものは過ぎ去った」とはキリストの救いは過去にあった罪を消し去り、同時に心の傷も癒されていることを示している。

1、キリストの招きに応え、キリストによって新しくされた者がクリスチャンである。

だれでもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である。古いものは過ぎ去った。見よ、すべてが新しくなったのである。

現代の私たちを取りまいているものは不安です。少し前まで、日本全体が経済成長一本槍で進み、物の豊かさが人間を幸せにすると思って頑張ってきました。しかしバブル経済が崩壊し、頼りにしていた会社がどんどん潰れる時代に変わってしまい、生活の基盤がガタガタになっています。さらに悪いことには、経済至上主義で進んでいるうちに、心を忘れてしまい、学校も家庭もガタガタになっています、多くの人が生活の基盤、また心の拠り所を失ってしまい、その影響で年間自殺者が何と3万人以上にのぼり、15分に一人が自ら命を絶っている悲惨な状況になっています。

この不安定な時代にあって、聖書の中心であるイエス・キリストは「わたしの平安をあなたがたに与える」と言われ、さらに「わたしが与える平安とは、世が与えるようなものとは異なる。あなた方は心を騒がせるな、また怖じけるな」と励まして下さっています（ヨハネ14：27）。先ほど読みましたイザヤ書の中に主が、「見よ、わたしは新しいことをなす。やがてそれは起る」と言われています。それは「荒野に道を設け、砂漠に川を流れさせる」という人間の常識を超えた素晴らしいことであると宣言されています（イザヤ43：19）。キリストを知る前、私たちの人生は荒野のように傷つき、砂漠のように実りのない日々でした。キリストを知り、信じて私たちの人生は変わりました。きょうの御言葉は、キリストが私たちの人生を新しくして下さるという恵みのメッセージです。キリストによってどんなふうに新しくなったのでしょうか・・・。

キリストは私たちの罪を赦し、心を新しくし、平安を下さる救主です。一言でいえば、私たちの人生を新しくして下さったこと、これこそがキリストによって与えられた最大の恵みです。本日の御ｌ言葉をご覧下さい。「新しい」という言葉が2回あり、キリストを信じて私たちの人生が根本的に新しくなるということが告げられています。よく「心を入れ換えて一生懸命やります」、「死んだ気になってやり直します」と言います。それは今までの古い人生を棄てて、新しい人生に入って行きたいという願望の表れであり、大切な決心であると思います。しかし問題があります。それは悪い心が善い心に入れ換わって、本当に新しくやり直せるかどうかという事です。あまり良い例ではないのですが、幼児に対する性的事件が頻発して大きな社会問題になっています。この種の事件の特徴は再犯者が多いということです。事件を起した犯人は、裁判を受け、刑務所に送られます。刑務所で刑期を果しつつ、再犯防止の教育を受け、刑期が満ちると出所します。ところが、残念な事に出所した者の半数以上が再び同じ罪を犯して、刑務所に戻って行きます。何故なら、心が根本的に生まれ変わっていないからです。出所後しばらくは再犯防止教育により、「心を入れ換えて・・」という気持が残っています。しかし、やがて受けた教育を忘れ、罪の力に負けて、人は何度でも過ちを犯してしまうのです。心の罪を解決しない限り、根本的解決には至らないのです。

人間が抱えている罪は、ガンコで根深いものです。頭がよくても、お金があっても、地位があっても、教育を受けたエリートであっても、難行苦行しても、罪の力に打ち勝つことはできません。その証拠に、例えば学校の教師や警察官などの罪がニュースで報じられています。神の独り子イエス・キリストは人間として３３年の人生をおくり、罪のために人間がどんどん悪に誘われ、遂には死んで、滅びの地獄に向かって行く姿をつぶさにご覧になった。そこでキリストは「わたしが人の罪の身代わりになり、死んでお詫びをします」という決断をして十字架にのぼり、「父よ、彼らを赦したまえ」と祈って、そのきよい命を私たちの罪の身代わりにして下さったのです。十字架について、こまかくお話する時間がありませんが、自分の罪を認めて、キリストの十字架を信じれば、罪が赦され、私たちは新しい人間になることができます。このことは、ここにいる全てのクリスチャンが体験している事実です。それが「誰でもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である」という御言葉の意味するところです。

誰でも自分の罪を認め、悔改めて、キリストを個人的に救主と信じることによって全ては新しくなります。好地由太郎という人の事を話したことがあります。彼は1882年18歳で勤務先の女主人に暴行を働き、殺害し、犯行を隠すために放火。未成年であったので死刑を免れ無期懲役になる。一年後脱獄し、強盗に入り捕まり、21歳の時に北海道・空知刑務所に入る。ある晩、「この本を読めば幸福になり、永遠の命を受けられる」という不思議な夢を見る。実は、彼は聖書を差し入れてもらっていたのですが、字が読めず、放ってあった。獄中で平カナから習い始め、聖書が読めるようになり、罪を示され、キリストの十字架による救いを受けます。彼は手に負えない受刑者の面倒をみるようになり、模範囚になる。23年後に仮釈放になり、結婚し、全国の刑務所を廻って伝道し、多くの囚人をキリストの救いに導いています。殺人犯であった彼の心を新しくしたのはキリストの十字架による救いです。まことに「だれでもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である」という御言葉は真実であることが立証されています。

2、キリストの招きに応え、キリストを見上げて前進する者がクリスチャンである。

本日の御言葉の中に、「古いものは過ぎ去った」という宣言があり、「見よ、すべてが新しくなったのである」という希望の言葉が続いています。

キリストを信じたことによって、古いものは過ぎ去ったのです。これを忘れないで下さい。この手紙を記した使徒パウロは「兄弟たちよ。わたしは既に捕らえたとは思っていない。ただこの一事を努めている。すなわち、後ろのものを忘れ、前のものに向かって体を伸ばしつつ、目標を目指して走り、キリスト・イエスにおいて上に召して下さる神の賞与（栄冠）を得ようと努めているのである」（ピリピ3：13－14）と言っています。クリスチャンは後ろを見て生きるのではなく、前を見つめて生きて行くものです。ここで私の過去を映像にしてプロジェクターで映し出したら、ここにいることが出来ないでしょう。それ程に私の罪は大きかったのです。その罪の醜い過去を、キリストは十字架の血で清めて下さったのです。それは、「イエス・キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも（永遠までも）変わることがない」救主だからです（ヘブル13：8）。キリストの十字架には、私たちの過去の罪や過ちの全てを完全に清め、癒す力があります。キリストを信じた瞬間に私たちの罪は赦され、神様は「キリストの十字架を信じた者には罪がない」ということを認めて下さっています（義認の恵み、義化）。サタンは逆です。「お前はそれでもクリスチャンか。あの時あんな事をした、あんな事を言っただろう。お前はクリスチャンではない。聖書もろくに読んでいない。集会も時々パスするではないか」と私たちを責め、執拗にまとわりついてきます。あの宗教改革を成し遂げたマルチン・ルッターも、サタンによって過去の罪や過ちを突っつかれ、心を責められるということがありました。その時、彼はインク壷を壁に投げつけ、「御子イエスの血がすべての罪から私たちを清めるのである」（Ⅰヨハネ1：7）と祈り、叫んでサタンを撃退したと伝えられています。きょうの御言葉にも「古いものは過ぎ去った。見よ、すべてが新しくなった」とハッキリと言われています。キリストを信じ続け、何があってもキリストに縋って行きましょう。後ろではなく前に向かって進んで行きましょう。

キリストを信じたことによって、受けた心の傷や痛みも悲しみも、或いは体に受けた傷も、全てをキリストは包み、いやし、きれいにして下さっています。イザヤは、「キリストは我々の咎のために傷つけられ、我々の不義のために砕かれたのだ。キリストは自ら懲らしめを受けて、我々に平安を与え、その打たれた傷によって、我々はいやされたのだ」とキリストの十字架の恵みについて記しています（イザヤ53：5）。過去に受けた心の傷が邪魔をする。例えば虐待されて、愛されずに育った人が、どうやって人を愛したらよいのか分らずに悩むことがあります。キリストは人々によって唾を吐きかけられ、理由もなく、拳でぶたれ、ムチで背中を叩かれ、罵られています。重い十字架を担いで、よろめきながらゴルゴタの丘へと歩かされています。キリストは私たちよりも先に人の辱めを受け、体を傷つけられています。キリストは既に私たちの全ての苦しみを体験され、私たちの痛み、苦しみを分りすぎるほど分っていて下さいます。全ての悲しみを担って下さったキリストに打ち明け、傷を癒して下さいと祈りましょう。そして、もう過去の傷によって悩まされることのない、恵みの道を歩くように祈って行きましょう。

キリストは私たちの罪を赦し、受けた傷や痛みを癒し、私たちを尊い宝物のように慈しんで守って下さる恵みの神です。聖書の中に「あなたは我が目に尊く、重んぜられるもの。わたしはあなたを愛する」という御言葉があります（イザヤ43：4）。それは「わたしの目には、あなたは高価で尊い」ということです。人は何と言おうとも、神様の目から見れば、私たちひとり一人が限りなく尊く、なくてはならぬ、値段がつけられないほどの高価な存在であるという事です。私たちひとり一人が、神の御子イエス・キリストが命を捧げて下さるほどの素晴らしいものであるという事です。考えてみますと、主は褒め上手なお方です。常に私たちのことを認めて下さり、どんなことでも祈りを聴いて下さり、「あなたを愛している」とおっしゃって下さる愛に満ちたお方です。私たちは褒めてもらうことによって成長します。新聞にこんな投書が出ていました。『褒めて育てるという諺があるが、私が小学校５年生の時、提出した作文を銘々に男の先生から手渡された。何の取りえもない私に先生は、「よく書けてるよ、すごいなあ」とお褒めの言葉をいただいた。私は飛び上がるほど歓喜に満ちた。それと言うのも、一度も褒められたことがないから。その一言が脳裏に残った。書く事が好きになり、結婚して書き始めた日記も継続して、様々な形の日記帳が今、ダンボール箱一杯になった。文通する友だちも出来た。頭の隅には「すごいなあ」が消えたことはない。その先生も、とうの昔に大地にかえって今はいない。世の先生方、お世辞でもいい。褒めて下さい。今、こんなに充実した日々が送れるのも、先生の一言が原点であると思う』（農業・杉戸町茨島・高木克代・７０歳。２月１１日読売新聞）。私事になりますが、１０２歳で天に召された、アッセンブリー教団の創設者で神学校校長であった弓山先生は、私が神学生の時は論文の書き方、人への接し方などいろいろに注意して下さり、指導を受けました。ところが、第一線に出てからは、なぜか会う度ごとに褒めてくれました。「開拓伝道なかなかよくやっとるようじゃなー」、「この頃は個人伝道を一生懸命に進めとるなー」。関東教区青年部大会で講師を務めた時に、「君は教えることが上手だ」と皆の前で言って下さったことなどを思いだします。人は褒められて成長します。イエス様も私たちを愛し、私たちの罪を赦し、欠点を覆って導いて下さる愛の救主です。聖歌の中に、「罪があれば愛もて赦し、とがめだてせず、病あれば手をつけ、いやしました。この気高い救主が今も生きて、我らを救うのです」とイエス様のことが歌われています（総合聖歌198）。この讃美を歌うと、「十字架であなたの罪を赦した、だから私を信じて縋れば善いのだ。失敗しても転んでも善いから私についておいで。疲れていれば新しい力を与える。病気があればいやす。私は生きている主である。あなたをどこまでも愛し続けて、あなたを天の御国に連れて行く」というイエス様の愛が心に迫ってきます。キリストは私たちの過去の汚い姿ではなく、キリストを信じている今の私たちの姿を見て下さっています。そして言われます、「あなたは新しくなっている。あなたは大切な、美しい神の家族の一員である。わたしはあなたの過去を問わないし、忘れている。だから今という時に、わたしに従って来なさい」・・・主の招きに応えて、私たちの全てを新しくして下さった救主イエス様に従い続けて行くように祈って下さい。

最初に、もと総理大臣片山哲氏について言いましたが、この方は１９７８年５月３０日９０歳で天に召されて行きました。召される一週間前に蒲団の中で「主われを愛す」を歌っていたそうです。９０歳で召される直前に少年のころ覚えた讃美を歌いつつ、キリストを信じて罪を赦され、新しい者になったことを終生の恵みとして感謝し、もと総理大臣ではなく、ひとりのキリストを信じて新しくされたクリスチャンとして、「主われを愛す」を歌いつつ人生を閉じて、天の御国に向かって行ったのです。

まとめ

コリント第二5：17の御言葉を暗誦して下さい。

1、キリストの招きに応え、キリストを信じて、新しく生まれ変わってクリスチャンになったことを感謝しましょう。

2、キリストの招きに応え、うしろのもの、古い過去を忘れ、前にいて導いて下さる救主イエス・キリストに従って行く決断をして祈りましょう。心の罪、受けた心の傷、体に受けた傷も、全て十字架によって赦され、癒されていることを感謝しましょう。ますますキリストに縋って信仰の道を前進して行くように祈りましょう。　

　「誰でもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者」を讃美し、祈ります。

祈　り

天地の主である神様、救主イエス・キリストの十字架によって、罪を赦され、過去の傷を癒され、主によって、新しい者にされていることを感謝します。古い過去を忘れて、ただ真っ直ぐにキリストに従って行きます。私たちを導いて下さい。それぞれの祈りに応えて下さい。今週も恵み深い御霊によって私たちに祈りを与え、祝福の道を歩ませて下さい。駐車場のために、主よ、あなたの御旨を具体的に示して下さい。午後からのネームレス集会、夜の聖日夕拝を祝福して下さい。水曜日の朝、夜の祈祷会に導いて下さい。火曜日から土曜日の早天祈祷会に導いて下さい。土曜日の上野ホームレス伝道を祝福し、おにぎりをたくさん持参できるようにひとり一人を用いて下さい。私たちに救いと新しい人生を与えて、今も導いておられるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献コリント注解―フランシスコ会、黒崎、バークレー、文語略注。　「日毎の糧としての逸話・高野勝夫編・著」