あなたは、わたしに従って来なさい

「あなたは、わたしに従って来なさい。You must follow me.」ヨハネ21：22　主の2005.3.6礼拝

「人生は出会いで決まる」と言われますが、どんな友に出会うか、どんな先輩に巡り合うか、どんな先生に指導されるかなどによって、私たちの人生が左右されることは確かであろうと思います。私事ですが、小学校から中学校にかけて兄弟のように親しい友がいました。話し好きで、明るい聡明な友でしたが、高校に入って間もなく病気で亡くなりました。その死を通して、私は「なぜ人間は死ぬのだろうか」ということを身近な事として意識するようになりました。また高校の担任が最初のクラスで「私はクリスチャンです」と自己紹介をされました。そして後から分ったのですが、クラスに洗礼を受けたクリスチャンが二名いました。死の問題、クリスチャンの先生、クラスメートに洗礼を受けたクリスチャンがいたことが、私がイエス・キリストに導かれる大きな要因になったことを思います。

本日はヨハネ２１:２２後半の御言葉です。復活の主イエス・キリストがペテロに向かって言われた御言葉であると同時に、これは今ここにいる私たちひとり一人に言われている御言葉でもあります。「人生は出会いで決まる」とするならば、私たちはキリストに出会って罪を赦され、永遠の命を受け、喜びの人生を歩むようになった者です。今朝、あらためてキリストの救いの恵みに感謝を捧げ、「あなたは、わたしに従って来なさい」という主イエス・キリストの招きの御声に、祈って、「主よ、従って参ります」という決断を献げ、新しい一週間の旅路を共に出発して参りましょう。

内　容

1、私たちは主イエス・キリストに従うように招かれ、選ばれている。

2、私たちは主イエス・キリストに従うために、『三流』のクリスチャンになろう。

資料問題

ヨハネ福音書は２０章をもって閉じられている（２０:３１参照）。しかし、ヨハネは忘れることの出来ない復活の主の顕現を体験したので、それを是非とも後世に伝えたいという思いから、聖霊に導かれて２１章を付録として付け加えたのである。２１章はペテロに焦点が合わせられている。ガリラヤ湖で主の指示通りに網を下ろすと１５３匹の魚が獲れるという奇蹟があった（ルカ５章の記事を思い起させる）。キリストのペテロに対する「あなたはわたしを愛するか」という三度の質問、ペテロが殉教するという予告（逆さ十字架による殉教の死）等が記されている。ペテロはペンテコステの日に聖霊に満たされ、主の十字架と復活を伝え、人々に悔改めを迫り、3000人が救われ、洗礼を受け、教会が発足した。彼は公同書簡と言われるペテロの手紙（Ⅰ）（Ⅱ）を記している。

1、私たちは主イエス・キリストに従うように招かれ、選ばれている。

ペテロは復活のイエス・キリストから三度「あなたは、わたしを愛するか」と問われています（21：15－18）。三度という数は、十字架を前にした裁判の時に、ペテロが鶏の鳴く前に三度「私はイエス様とは無関係だ」と言って、イエス様を裏切った回数と符合します（マタイ26：57－75）。イエス様はペテロに「あなたは、わたしを愛するか」と三度問うことによって、裏切りの罪を正し、彼が悔改めて再献身するように導かれたのです。ペテロは心底悔改めて、イエス様の弟子として仕えて行くことを再決意しました。ところが、ふと隣にいるヨハネのことが気になって、「私は従いますが、このヨハネはどうなりますか」と聞いた時、イエス様が答えたのが２２節です。イエス様は、「仮にわたしが再臨する時までヨハネが生き永らえることが出来たとしても、それは彼の人生であって、あなたには何の関係もない。わたしは、ペテロよ、今あなたにのみ語っているのだ。あなたがわたしに従って来ることは、わたしとあなたの問題だ。人や周りのものを見ないで、あなたはわたしだけを見て、わたしに従って来なさい」という事をペテロにハッキリと告げています。

ところで、私たちは信仰を自分で求めて、自分で探したと思っています。しかし、それは違うのです。聖書朗読の箇所、イザヤ４３章に「わたしはあなたの名を呼んだ」とありました。最初の人間アダムとエバが罪を犯して、神様に見つからないように身を隠したことがあります。その時に主なる神は「あなたはどこにいるのか」とアダムとエバに呼びかけておられます（創世記38－9）。それ以来、主は人間を罪から救い、永遠の天国に導くために、私たちを呼び求めておられます。その呼びかけがあるので、私たちはその呼びかけに応じて、主を求めることが出来るのです

イエス様は、「わたしに従って来なさい」と、あらゆる機会を通して、今でも私たちに呼びかけておられます。例えば、家族を通し、友を通し、ラジオ、テレビの伝道番組を通し、文書を通して呼びかけておられます。私の場合は、友の死、クリスチャンの担任、クラスメートを通して呼びかけがありました。皆さんはどうだったでしょうか・・・。

時には、イエス様は苦難という非常手段を通して呼びかける時があります。ある方は健康を誇っていましたが、突然に体に変調を来たし、その苦しみが切っ掛けになり、主を求めるようになり、救われて行きました。倒産、リストラを通して主に導かれた方もいます。ある方は結核になり、社会から隔離された山奥の療養所に送られ、「治るのだろうか？」という絶望の日々の中にあって、朝早くラジオから微かに聞こえてくる伝道番組を通してイエス様を信じるように導かれました。

実に様々な方法を通して、イエス様は「わたしの許に来なさい。あなた方を休ませてあげよう」（マタイ11：28）と言われ、私たちを救いに導いて下さいました。ある方は、イエス様の救いを受けながら、教会から離れていましたが、病気になり主の御許に立ち返るように導かれました。ある方は死の床で、「長年イエス様から離れていたが、やはりイエス様は私の救主です」ということを再告白し、牧師に祈ってもらい、心静かに天に召されて行きました。ある方は遠く離れた外国にあって、聖書を読み、大事な御言葉を書き写して、天に召されて行きました。

「あなたは、わたしに従って来なさい」・・・私自身は、今この御言葉に応答するように、イエス様が私に語りかけて下さっていることを信じます。そう信じることが出来るのは、それは私が救いの選びを受け、「イエス・キリストは主である」（ピリピ2：11）という信仰を与えられているからです。皆さんも同じです。誰がどのような形でイエス様の救いを受けるのかは、私たちには分りません。大事なことは、「私はイエス様を信じ、イエス様に従い続けます」という信仰を日々に告白することです。昨日信じていたから、今日は自動的に信じることが出来るということはありません。従うのは今日であり、今です。従う者に対し、イエス様は「わたしは、決してあなたを離れず、あなたを棄てない」（ヘブル13：5）と約束されています。イエス様に従って行こうという決断を、祈って新たにして参りましょう。

2、私たちは主イエス・キリストに従うために、『三流』のクリスチャンになろう。

何でも優れたものは、人であれ、ものであれ、一流と呼ばれます。世の中は一流志向です。イエス様は私たちの救主として一流どころか、全てに勝る唯一の、まことの救主です。しかし、イエス様の生き方を福音書の中に探って行きますと、イエス様は『三流』のお方であることが分ります。皆さんは、「そんなことはない、いま一流以上の、全てに勝る救主と言ったではないか」と反論されると思います。だが、イエス様は間違いなく『三流』のお方である、イエス様の生き方そのものが『三流』に徹しておられたことは間違いのない事です。私たちもイエス様に倣って『三流』のクリスチャンになって、信じ、従う道を歩んで行くように、祈り、努めることが大切です。

第一に、イエス様は汗を流された救主でした。イエス様は３年半の公生涯の間、１２弟子と共にユダヤの全地方を巡り歩いて福音を宣べ伝え、満足に休む時間も場所もない有様でした（マタイ8：10）。聖歌の中に「昔、主イエスが汗ながして働いたのを憶えながら」という歌詞があります（総合３０７番）。イエス様は生きるために、大工の子として汗を流して苦労することを体験しています。クリスマスに、聖歌隊によりイエス様の生涯が歌われました。その中に「食する暇も打ち忘れて、虐げられし人を訪ね、友なき者の友となりて、心砕きしこの人を見よ」と歌われていました。イエス様は生きる事の辛さを身をもって体験されているので、悩み苦しむ人の所へ積極的に労苦を厭わず出かけて助けておられます。例えば、レギオンに占領されている若者の所へ湖を渡って助けに行っています（マルコ4：35－5：20）。讃美を聴きながら、黙々と汗を流して奉仕しておられるイエス様の姿に心が熱くなりました。イエス様はゲッセマネの園で血の汗を流して祈り（ルカ22：44）、最後には重い十字架を担いで、私たちの罪の身代わりとなるために、ゴルゴタの丘に向かっています（ヨハネ19：17）。イエス様ほど徹底的に汗を流して人に仕えたお方は他に誰もいません。私たちも汗を流されたイエス様に倣って、汗を流して主に仕え、人に仕えて行くことが大事です。私たちは汗をかかずに、楽をして華やかなことをしようという誘惑にかられます。内村鑑三というクリスチャンがいました。多くの信仰の書物を出版し、その集会には毎週何百人という人が詰め掛けていました。彼は「私のことを宗教的偉人であるとか、才能があるからであるか言う人がいる。そうではない。本を出版し、集会を保つためには多くの隠れた骨折り仕事（drudgery）がある」ということを述べています。雑用１０年という言葉があります。役にも立たないような下働きを通して、仕事の大切さ、また人と協調して行く態度などが養われて行きます。奉仕をしている方々は人知れぬところで汗を流して備えていると思います。例えば、英語通訳、手話通訳は予め説教原稿を読んで、備えをしています。その原稿のために私は何十時間もの隠された備えがあり、原稿の一字一句をパソコンで用意します。讃美も選曲、練習という隠された備えがあり、音響調整、歌詞をパソコンに打ち込むという備えがあります。少しの例だけを言いましたが、教会の奉仕すべてが多くの隠れた骨折り仕事をコツコツとする方々によって行われています。ここで改めて、すべての奉仕のために祈って下さるようにお願いします。私たちの流した汗は無駄になりません。使徒パウロは、「愛する兄弟たちよ。堅く立って動かされず、いつも全力を注いで主のわざに励みなさい。主にあっては、あなた方の労苦が無駄になることはないと、あなた方は知っているからである」と述べています（Ⅰコリ15：56）。

第二に、イエス様は涙を流された救主です。イエス様は常に人間のことを考える思いやりの深いお方です。世の中には沢山の宗教と言われるものがありますが、どの神々も強くて弱みを見せない超越的な姿で人間に臨んでいます。イエス様は限りなく人間に同情され、涙を流されるお方です。イエス様は天の栄光の位を棄てて、人間となり、公生涯に入るまで３０年の間、ひとりの人間として暮らしていました。その事によって、人生のあらゆる事柄を体験され、人の悲しみ、痛みなどに深い思いやりをもって対処できるのです。イエス様はラザロの墓の前で涙を流しておられます（ヨハネ11：35）。イエス様は滅び行くエルサレムの都のことを思って、人々の前で泣いています（ルカ19：41）。ゲッセマネの園では激しい叫びと涙とをもって祈っています（ヘブル5：7）。

イエス様の涙は単に悲しいから流している涙ではありません。それは人が罪によって死んで、滅んで行くことへの悲しみ、憤りの思いが含まれている涙です。イエス様は行い澄ました救主ではなく、人の悲しみをご自分の悲しみとされ、涙を共にして下さるお方です。そして罪を十字架で滅ぼすために、人の救いのために涙を流して祈り、勝利の確信をもって、十字架に上って下さった救主です。イエス様は、復活後に天にお帰りになり、今は父なる神の右の座で、私たちのために執り成しの祈りを捧げ続けておられます（ローマ8：34）。

人のために涙を流して祈って下さったイエス様の愛をいただき、私たちも人のために涙を流して祈ることをして行きたいと思います。汗を流し、涙を流して下さったイエス様に倣い、聖霊に導かれて家族のために、友のために、真剣に祈って行くように決断をして祈りましょう。祈りは必ず聴かれて行きます。特に人の救いは神様の望んでおられることですから、神様は救いについては条件をつけずに聴いて下さることを信じて祈りましょう。年頭に申し上げましたが、１２月３１日までに、祈って、誰か一人にイエス様を伝道することを目標にして進んで下さい。それが「キリストを喜び、キリストを伝える教会」になるということです。

第三に、イエス様は血を流された救主です。これは文字通りに、十字架の上で血を流された事実を指しています。神であるお方が、人間の罪の不始末を始末するために、十字架にかかって血を流して下さったのです。すなわち、命を賭けて、イエス様が私たちを愛して下さったことを意味しています。ですから、私たちも命がけでイエス様を信じて行くべきであることを教えられます。イエス様が血を流して十字架で死んで下さったことを忘れないで行く事が信仰を保つのに重要なことです。聖書朗読のイザヤ43：4「あなたは我が目に尊く、重んぜられるもの（高価で尊い）」と言われていますが、それは口先だけのことではなく、イエス様の十字架によって実現した愛です。

イエス様は、汗を流す、涙を流す、血を流すという『三流』の救主です。私たちはキリストに従う弟子です。汗を流してイエス様のために奉仕に励み、人に仕えて行きましょう。涙を流して、家族や友の救いのために祈って行きましょう。血を流して下さったイエス様のために、何があってもイエス様一番という命を賭けて従って行くということを祈って行きましょう。汗を流し、涙を流し、血を流し、『三流』のクリスチャンとならせて下さいと、祈り求めて下さい。

「あなたは、わたしに従って来なさい」・・・信仰は天国に入る日まで継続して行くものです。『三流クリスチャン』を目指して信仰生活を続けて行きましょう。そのためには、何があってもイエス様に縋り続け、教会に固くつながって行くことが信仰生活の極意であり、『三流』のクリスチャンになる秘訣です。ポリュカルポスという人は８６歳で火あぶりになって殉教しました。裁判の時に、彼が高齢なのを見て同情した裁判官が、「たった１回でいいからキリストを否定すれば命を助ける」と言います。彼は「イエス様は８６歳の今日まで私を一度も裏切らなかった。だから私は命を賭けて、血を流して下さったイエス様に従います」と言って、喜んで火あぶりの刑を受け、天国に凱旋して行きました。

まとめ

「あなたは、わたしに従って来なさい」・・・暗誦して下さい。

1、イエス様は、私たちを信仰の中に招き入れ、救いの選びを与えて下さいました。

2、イエス様は『三流の救主』です。私たちも汗を流し、涙を流し、血を流して『三流クリスチャン』となるように、イエス様に縋り、教会に固く結びつき、共に祈り合い、助け合い、赦し合い、愛し合って信仰の道を進んで行くように祈りましょう。

祈　り

天の神様、救主イエス・キリストによって私たちを罪から救い、神の子に加えていただき感謝を捧げます。イエス様が汗を流し、涙を流し、血を流して私たちの救いを完成して下さったことを感謝します。私たちも汗を流して主と人に仕えます。涙を流して真剣に家族や友の救いのために祈ります。血を流して救いを成し遂げて下さったイエス様に、何があっても従って行きます。『三流』のクリスチャンとして成長させて下さい。今週もそれぞれの仕事を祝福し、学びを祝福して下さい。３月は人事異動があります。卒業、進学、入試発表の時でもあります。それぞれにとって最善のことがなされますように導いて下さい。病気の方々を癒し、戦いの中にある方々に勝利を与えて下さい。私たちの救主、主であるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ヨハネ注解―黒崎、バークレー、米田、フランシスコ会、LAB.「信仰偉人群像」「身近に接した内村鑑三・石原兵永」