我らを愛して下さるイエス・キリスト　Jesus loves us

我らを愛して下さるイエス・キリスト　ヨハネ福音書21：1－14　　　主の2005.4.10礼拝

教会の歴史を紐解いてみますと、1965年12月第一日曜日、アメリカからやって来たクラー宣教師一家5人、中沢牧師（隠退している）、私の７人で礼拝を捧げ、開拓伝道が開始されました。それ以来、毎週礼拝が捧げられて来ました。信徒数ゼロからの出発でしたが、多くの方々が救われて、今ここにキリストを信じる者の群れが形成されていることを、主なる神様に感謝します。クラー宣教師は現在アメリカにいますが、大学で教え、教会の伝道牧会を助け、毎日聖書のメッセージをインターネットで世界に向けて発信し、私も読んでいます。娘さんのポーラさんがご主人と子ども4人でインドネシヤで宣教活動をしていますが、その働きのために当教会より宣教献金を送っています。以前、私たちはクラー先生夫妻をアメリカに訪ね、教会の集会、家庭訪問などにお供させてもらいました。先生は人に出会うと「Jesus loves you.」と明るく声をかけていました。この言葉を通して、先生自身がイエス様によって愛されていることを深く感謝し、「あなたにもイエス様の素晴らしい愛が注がれていますよ」というメッセージを人々に伝えていたのです。

先々週に復活祭をお祝いし、墓を打ち破って死から甦り、私たちと共にいて下さるイエス・キリストの恵みを讃えました（ルカ24：1－7）。先週は、イエス・キリストこそが甦りであり、生命（いのち）の主である恵みを教えられました（ヨハネ11：25－26）。本日はヨハネ21：1－14です。ペテロ達が漁に行きますが、何の獲物もなく、疲れ切って帰って来た時、復活されたキリストが現れ、魚の居場所を教え、朝食の準備をして、弟子達を迎えてくれたことが記されています。この事を通して、キリストは、「私はあなた方のことを愛している。それは言葉や口先だけの愛ではなく、あなた方の疲れを癒し、お腹を満たし、新しい生きる力を与える」という恵みを示しておられます。今朝、ご一緒にキリストの恵みのメッセージを聴き、祈って新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

１，イエス・キリストは、私たちを守り、助けて下さる真の救主である。21：1－8

２，イエス・キリストは、私たちを寛容をもって受け入れて下さった愛の救主である。21：9－14

資料問題

ヨハネ21章前半はルカ5：1－11に類似している。この記事を読む者は復活のキリストの実在性と深いキリストの愛を知ることができる。後半15－25節には、主を裏切ったペテロが、主ご自身によって赦しと共に使命を与えられていることが詳述されている。4節、「岸辺に立つイエス・キリスト」。キリストの復活の姿はいろいろである。マグダラのマリヤは復活のキリストを園の番人と思った（20：15）。エマオへ旅する二人の弟子は、並んで歩くキリストに気づかずに、旅人だと思った（ルカ24：16）。5節、「食べるもの」は副食物（おかず）の意で、ここでは魚を意味している。7節、「イエスの愛しておられた弟子」は使徒ヨハネのこと。8節、「50間」は約100メートル。200ペークスで1ペークスは約45センチ。11節、「網は裂けないでいた」。すべての人は教会という一つの網によって一つになることを示していると解釈できる。14節、「弟子達に現れたのは3度」。特に12弟子に現れたことで第1回は20：19以下。第2回は20：26以下。Ⅰコリント15：5の12弟子は第２回と第3回とをひとまとめにして記したようである。

1，イエス・キリストは、私たちを守り、助けて下さる真の救主である。21：1－8

イエスは彼らに言われた、「舟の右のほうに網をおろして見なさい。そうすれば何か、とれるだろう」。彼らは網をおろすと、

魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。（６節）

ペテロ達7人はテベリヤの海（ガリラヤ湖の別名）で漁に出かけています。一晩中網を打ちましたが、魚は一匹も網にかからず、彼らは夜明け頃に岸に戻ろうとしていました。その岸辺に復活のイエス様が弟子達を待っていたのです。イエス様は常に私たちと共にいて下さるのですが、信仰が鈍くなったり、祈りが足りなかったり、或いは人に頼ったりしている時には、イエス様のことがぼやけてしまいます。実はペテロ達は既に復活のキリストに出会い、「父がわたしをお遣わしになったように、わたしもまたあなた方を遣わす」（20：21）という命令を受けていました。しかし、それを忘れて漁に出かけ、一匹の魚も獲れずに、疲れて、重苦しい気持で舟を漕いでいました。そういう状態ですから、岸辺に立っている人が、イエス様であると認めることが出来なかったのです。そこで、イエス様の方から「子たちよ。何か食べるものがあるか」と呼びかけています。弟子達は反射的に「ありません」と答えています。すると、イエス様は「舟の右のほうに網をおろせ」と告げます。言われたとおりにすると、たくさんの魚が網に入り、彼らはそこで始めて、声をかけてくれたのはイエス様であることに気づきます。１－８節の出来事から、活きておられるイエス様の恵みが私たちに伝わってきます。

第一に、イエス様は弟子達を見捨てないお方です。一匹の魚も獲れずに落ち込んで帰って来た弟子達に、主は「何か食べる物があるか」と呼びかけています。一晩中漁をして、腹ぺこになっている彼らには一番心に響く問いかけです。イエス様は、「何で自分勝手なことをしているのか。なぜ祈って出かけなかったのか」と弟子達を叱る前に、いま彼らに最も必要な事であるお腹を満たしてあげようとしておられます。弟子達を放りっぱなしにしないで、見捨てることなく、声をかけ、助けようとしておられます。

第二に、イエス様は弟子達の必要を満たして下さるお方です。この場合の必要は魚が獲れることです。魚はお腹を満たし、また魚を売って、生活費を得るために必要なものです。「主の祈り」の中で「我らの日用の糧をきょうも与えたまえ」と祈りますが、イエス様は私たちの生活が支えられるように願っていることが分かります。生活が支えられるために、順番が大事です。昔、イサクは先ず第一番目に祭壇を築いて主の名を呼びました。これは神を礼拝することが全てに優先することを教えています。第二番目に天幕を張っています。これは主を中心にして、家庭を形成することを示しています。第三番目に井戸を掘っています。これは牧畜をするために必要な水を確保することで、仕事を指しています（創世記26：25）。神、家庭（家族）、仕事という順序です。読売新聞に「昇進よりも家族の幸せ」という記事が出ていましたが、日本は仕事、仕事で大切な家庭を失ってきましたが、ようやく人々が家庭の大切さに気づき始めています。上野ホームレス伝道に行って思うことは、家族から切り離されて路上生活をしている人々の心の寂しさです。彼らの上にイエス様の救いと生活の再出発が与えられるように祈って下さい。私事ですが、私の経済を支えてくれる御言葉が三つあります。一つは、「神様の事を、いつも第一にしなさい。そうすれば、衣食住は、天にいらっしゃる神様が必ず面倒をみて下さいます」（マタイ6：33現代訳）。二つは「けちけちしてささげる人は大きな祝福を受けることができない。気前よくささげる人は、豊かな祝福を受ける。だから嫌々ながらではなく、また強制されてでもなく、自発的に自分で決めてささげなさい。神は喜んでささげる人を祝福して下さるからである」（Ⅱコリント9：6－8現代訳）。三つは「わたしの神は、ご自身の栄光の富の中から、あなた方のいっさいの必要を、キリスト・イエスにあって満たして下さるであろう」（ピリピ4：19）です。三つ目に「富」とあるのは、核燃料になるプルトニウムの語源の言葉です。核燃料は膨大はエネルギーを出しますが、神の富は膨大な豊かなものであり、神様はケチらずに豊かに与えて下さるお方であることを示しています。

第三に、イエス様に従う時に豊かな恵みを受けることができます。弟子達は舟の右のほうに網をおろし、網が裂けるほどの魚を獲っています。実際にあった話ですが「荒野に水は湧く」という本に証が出ています（この本はキリストの証の本として出色）。石川県・今江潟で方角（ほうがい）定次郎という人がワカサギ漁をしていた。ある夜、網を引き揚げると、魚ではなく青い表紙の小さな本が２冊入っていた。「約翰伝（やっかんでん、ヨハネ伝のこと）とあり、濡れている本を舟の行火（あんか）で乾かし、読むともなく読んで見た。「我漁（すな）どりに行く・・・」とあるので「魚取りの本らしい」と思った。すると「舟の右方に網を下ろせ。然らば獲物あらん、すなわち網を下ろしたるに魚夥（おびただ）しくて・・・」とある（以上文語訳）。そこで網を舟の左から右に移動したところ、何とふだんの４倍のワカサギが獲れた。彼の網にかかったヨハネ福音書は、日本聖書協会が福音書の分冊を全国に頒布したものでした。その年の夏に、その地方の川が氾濫し、大きな被害が出た、洪水が起きたのは、なにかの祟りかもしれないと考え、家庭に配られた聖書が原因であるとした。聖書を集め、神主がお祓いをして、箱に入れて海に沈めたが、箱が壊れて聖書が飛び出て、その一部が方角青年の網にかかったのです。これがきっかけになって、彼はイエス様を信じ、小松教会を築きあげる中堅人物になり、また信仰のよき証人となったのです。これは、特別な例かも知れませんが実話です。大事なことは御言葉に従う時に恵みがあるという事です。

2，イエス・キリストは、私たちを寛容をもって受け入れて下さった愛の救主である。21：9－14

イエスは彼らに言われた、「さあ、朝の食事をしなさい」。弟子達は、主であることがわかっていたので、だれも、「あなたはどなたですか」と進んで尋ねる者がなかった。（１２節）

弟子達が陸に上がってみると、そこには既に朝食が整えられていて、弟子達を労って下さる主の愛が具体的に表されています。主は「魚をもってきなさい」と言われ、弟子達が働いて得たものを一緒に喜んで下さっています。魚は弟子達が獲ってきたものですが、しかし、その居場所を教えたのはイエス様です。ですから、本当は主が与えて下さったものであるということが分かります。私たちが働いて得るものを考えても、健康、働く能力、働き口など全ては主が備えて下さったものです。ダビデは、「主よ、大いなることと、力と、栄光と、勝利と、威光とはあなたのものです。天にあるもの、地にあるものも皆あなたのものです・・・すべての物はあなたから出ます。我々はあなたから受けて、あなたにささげたのです」（歴上２９：１０－１４）と祈っていますが、それはまた私たちの祈りでもあります。

弟子達は、主の給仕を受けながら、満ち足りた気持で朝ご飯を食べています。私も二千年前の弟子達のことを思いながら、ガリラヤ湖畔の緑豊かな場所で礼拝を捧げたことがありますが、ゆったりとした恵みの時であったことを思い出します。この９－１４節、ガリラヤ湖畔の朝食から、活きておられるイエス様の恵みが私たちに伝わってきます。

第一に、イエス様は人のために労することを厭われないお方です。パンが用意され、魚を焼くために炭火が燃えています。その他必要なものが整えられていて、すぐに食べられるようになっています。現代はコンビニに行けば、何でも揃っています。イエス様の時代に、これだけのものを揃えるのは大変に手間暇がかかり、お金がかかることです。そうした事を主は黙ってなされ、弟子達を待っておられたのです。昨日の新約はヨハネ２章で、主がカナの結婚式で水をブドウ酒に変える奇蹟の場面でした。先ず100リットルぐらい入る水がめが６個あり、その全部に水を縁まで一杯に入れました（灯油を入れるポリタンクが18Ｌ。水がめ１個にポリタンク6つ分の水）。村には共同井戸が一カ所あり、しもべ達がそこまで水を汲みに行き、それを何十回も繰り返して水がめ全部を一杯にしました。その水が良質のブドウ酒になり、「これは誰が用意したもののか」と世話人は驚いています。主がなさった奇蹟ですが、水を汲んだ僕達の労苦があったから、主のみわざが表されたのです。今朝も多くの方々の祈りと奉仕によって礼拝が捧げられています。そのことを思うと感謝があふれます。

第二に、イエス様は弟子達を寛容な心をもって受け入れて下さるお方です。朝ご飯の場面におけるイエス様の御言葉と様子とを見てみましょう。「今とった魚をすこし持ってきなさい」（１０節）と声をかけています。先生であるイエス様が何もかも用意して下さったので、弟子達は恐縮していたかも知れません。そこで、「私の言ったとおりにして、一生懸命にやってくれて有り難う。その魚を持ってきなさい」と言う愛の気持を込めて伝え、弟子達の緊張をほぐしていますが、ここにイエス様の優しさが滲み出ています。イエス様は弟子達の働きを認めて、その魚を一緒に食べようとわざわざ言っておられるのです。「さあ、朝の食事をしなさい」（１２節）と弟子達を食卓に招いています。そして、自らパンと魚とを弟子達に手渡しています。弟子達は感謝の思いにあふれて、心もお腹も満たされています。イエス様は弟子達を責めず、一方的に受け入れて、彼らに仕えています。「愛は寛容であり、愛は情け深い」（Ⅰコリント13：4）との御言葉を、イエス様は弟子達に対し実践しておられるのです。「パッション」という映画が話題になりました。映画俳優メル・ギブソンが製作費を全額出して、自ら監督として制作したもので、キリストの十字架に焦点を当てた映画です。彼はトップ・スターであったのに、その名声やお金だけでは心を満たすことが出来ず、酒と麻薬とにおぼれ、自殺まで考えていました。そんな時に、キリストを信じ十字架によって救われ、彼の人生は変わりました。メル・ギブソンは、限りない寛容をもって、自分を受け入れて下さったキリストの愛に感謝し、「十字架に救いあり」ということで、この映画を作ったと言われています。パウロは、自分は神を誹る者、迫害する者、不遜な者であった。しかし、キリスト・イエスが、限りない寛容を示して下さったことによって、主の十字架の愛によって救われたということを感謝しています（Ⅰテモテ1：12－17）。私たちもイエス様の憐れみと寛容とによって、十字架によって救われた者であることを憶え、ただ感謝と讃美あるのみです。

第三に、イエス様の愛と赦しとを求めて祈りましょう。そして、私たちも愛と赦しと寛容な心を持って、人を受け入れて行く者となるように変えていただきましょう。イエス様によって愛され、救われていることを感謝し、人のために祈り、愛をもって接して行く者となるように祈りましょう。

Ｋさんという３人の子どものお母さんがいます。長男が大学受験に失敗し、気力が失せて「引きこもり状態」になってしまった。長男が高校に入った時から会話がすれ違い、父親は長男に口を挟みすぎて、二人の関係は疎ましくなっていた。悩んでいる時に、子ども時代に姉や兄に手を引かれて教会に通っていたこと、牧師夫妻が優しかったことを思い出した。中学に入ってから部活で教会から足が遠のいてしまっていたが、長男のことを切っ掛けに教会へ行ってみた。「迷える１匹の小羊」の話を聞き、それを長男と重ね合わせて考えていた。礼拝出席によって、御言葉によって励まされて行ったが、しかし長男は依然として変わらない。ところが「神は愛です」（Ⅰヨハネ4：16）という御言葉にふれた時に、今まで「どうして気持が通じないのか」「私が何とかしなければ」という苦しみから解放されて行くのを感じた。自分が「よい羊飼い」になろうと思っていたが、自分こそが「迷える子羊」なのではないかと気づいたのです。神様の愛をしっかりと受け止め、揺らぐことのない信仰を持ちたい。本当に大切なものは何なのかを自分自身に問いかけ、それを示して下さる神様に信頼して歩むために、２年前に洗礼を受けた。しかし相変わらず長男との緊張した関係は続いた。・・・「一度リセットしてやり直したい」と昨年９月長男に変化の兆しが現れた。３年半こもっていた部屋を片づけて、今は弟とアパート暮らしをし、アルバイトをして時々家に帰り、父親との関係も修復されている。まだ先に何があるか分からないが、彼のありのままの姿をまっすぐに、丸ごと受け止めることが出来たら、今まで見過ごしていた彼の輝きを認めてゆけるように思います。信仰と希望と愛をもって、私もまた新しい一歩を踏み出したいと思います・・・そう証しています。

この証を読みながら、涙がこぼれました。イエス様は愛です。最も苦しいときに、子ども時代のことを思い起こさせ、教会に導き、御言葉によって自分こそが助けを必要とする者であることに気づかせ、自分の力を棄てた時に、物事が動き出したのです。イエス様に縋りましょう。あなたのあらゆる問題に応えて下さる、活きておられるイエス様の尊い御名によって祈りましょう。

まとめ

1，６節、イエス様は、私たちを守り、助けて下さる真の救主です。私たちを見捨てず、必要を備えて下さいます。私たちの側で、神、家庭、仕事という順序を忘れぬようにして、主に縋って行きましょう。

2，１２節、イエス様は、私たちを寛容な心をもって受け入れて下さいました。私たちを受け入れて、人生に祝福を下さる愛の救主です。活きているイエス様に縋って、イエス様の御名によって、聖霊に導かれて祈りましょう。神様から素晴らしい答えが与えられて行きます。

祈　り

天地の主である神様、独り子イエス・キリストの十字架と甦りによって、私たちを神の子にしていただき、感謝を捧げます。何があろうとも、私たちに最善をなし給う、活きているイエス様に縋って行きます。今朝も祈り求めるひとり一人の祈りに応えて下さることを信じます。病気の方を速やかに癒し、戦いの中にある方を支え、勝利を与えて下さい。私たちの家族を主の救いの中に導いて下さい。今週も恵み深い真理の御霊によって、私たちに平らかな道を歩ませて下さい。

今も、そして永遠に活きておられるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献　ヨハネ注解―黒崎、フランシスコ会、バークレー、ＬAB。「荒野に水は湧く・田中芳三著・キリスト新聞社」、「信徒の友・２００５年１月、３月号・日本基督教団出版部」