使徒パウロの挨拶と感謝　コリント第一1：1－9　　　　　　　　　　主の2005

使徒パウロの挨拶と感謝　コリント第一1：1－9　　　主の2005.4.17礼拝

２１世紀を迎えて５年目に入っています。日本の例を引けば、便利さ、スピードという点で携帯電話、パソコンなどが急速に普及しています。またお金さえあれば物質的なものは何でも手に入るような世の中になっています。しかし１５分に一人の自殺者がいるということは、物や便利さだけでは満たされない、心の淋しさを訴える人々が多いことの表れであると思われます。心の淋しさを満たすために、癒しという言葉がよく使われています。心を癒す音楽、心を癒す偉人達の言葉というものが巷には溢れています。私たちクリスチャンは、真の癒しはイエス・キリストにあることを知っています。クリスチャンは、キリストは「重荷を担って下さる（マタイ11：28）、罪を赦す（ヨハネ8：11）、私たちを決して見捨てない（ヨハネ14：18）、愛のお方である（ヨハネ13：34）、いつも共にいて下さる、活きている救主である（マタイ28：20）」ことを信じています。キリストこそあらゆる答えがある事を、クリスチャンは信じ、感謝すると同時に、キリストの恵みを周りの方々に確信をもって伝える使命があります。私たちの教会の目標は「キリストを喜び、キリスト伝える教会」になる事です。聖霊に導かれ、キリスト中心の教会となり、キリストを伝える教会として、思いを新たにして進むように、祈って行きましょう。

本日からコリント第一の手紙から主のメッセージを聴いて行きます。この手紙は、第一に、コリント教会にあった様々な問題を解決し、真の教会を建て上げるための霊的、実際的な教えが詳しく述べられています。第二に、キリスト中心の内容です。キリストという御名前が出てこなくても、例えば１３章（愛の章）を読めば、キリストのことが鮮明に心に伝わってきます。第三に、聖霊について詳しく語られ（１２，１４章）、愛の讃歌（１３章）、希望に満ちた復活の章（１５章）があります。

本日は1：1－9から主のメッセージを聴き、祈って新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

1，パウロの挨拶。1：1－3

2，パウロの感謝。1：4－9

資料問題

著者：使徒パウロ。第三回伝道旅行中、２年以上エペソ滞在中に手紙をコリントに送った（Ⅰコリ5：9の「前の手紙」はこれを指す。失われて現存しない）。その返書として種々の質問がパウロに寄せられた。その質問に答え、また「クロエの家の者」（1：11）から教会の紛争その他について聞き、それを戒めるために、この手紙は記されたものである。時期は紀元５７年、パウロが53，4歳の頃である。

コリントはパウロの時代、人口6，70万人のギリシャの大都市。商業の中心地であり、学問も盛んであった。しかし偶像礼拝が盛んで、神殿娼婦が多数いて、「コリント人の生活」は放蕩生活の代名詞であった。パウロは第二回伝道旅行の時（使徒18：1－8）、紀元５１年９月より５３年２月までコリントに滞在し、教会が設立された。パウロが去った後アポロが伝道に来た。その後ユダヤ派の一部が入り込んで来て、教会内に種々分派紛争が起き、さらに教会が世俗化し、種々の問題を引き起こした。パウロはそれらの問題に心痛めつつ、聖霊に導かれて、牧会者として適切なる教えと指示とを教会に与えている。コリント教会の様子は、今日の教会状況に当てはまることが多く、教会形成に有力な指針を与える重要な手紙である。「愛の讃歌」（１３章）、「復活論」（１５章）は有名である。

1，パウロの挨拶。1：1－4

コリントにある神の教会、すなわち、私たちの主イエス・キリストの御名を至る所で呼び求めている全ての人々と共に、キリスト・イエスにあってきよめられ、聖徒として召された方々へ。このキリストは私たちの主であり、また彼らの主であられる。（２節）

１節、この手紙を記したのは使徒パウロです。しかしソステネという名前が並べられています。ソステネがどういう人であるかは不明ですが、兄弟とあるので信徒のようです。伝道者パウロと信徒であるソステネとあるのは、現代で言えば牧師と信徒ということです。すなわち教会のことです。そして受取人はコリント教会ですから、教会から教会へと書かれた手紙と言うことになります。これは信仰生活の中心が教会であることを示しています。１２章に、私たちはキリストの体と言われる教会の一員であることが教えられています。ある方は、「キリストを信じて神を父とし、教会を母として信仰生活をするのがクリスチャンである」と言っています。ですから教会中心の生活をすることが即ち信仰生活であることを忘れずに、しっかり教会に繋がって行くことが恵みの秘訣です

1：1－9の中にイエス・キリストの御名前が１１回出てきます。パウロは、コリント教会から寄せられた質問に答え、教会内に起きている問題を正すために、この手紙を書き始めています。彼はひたすらキリストのことを思い、キリストの中に解決があることを信じて、キリスト中心に筆を進めようとしていることが分かります。私事になりますが、教会に100人の方々がいて、それぞれにその抱えている問題、祈りのリクエストなどがあります。人間的には担いきれない事ですが、その時に、「すべて重荷を負うて苦労している者はわたしの許に来なさい」（マタイ11：28）、「キリストのうちには知恵と知識との宝がいっさい隠されている」（コロサイ2：3）との御言葉を思い出し、主イエス・キリストの御名によって祈ります。するとキリストによって常に解決が備えられて来たことを感謝します。

1：1－3の箇所から、三つの恵みを知ることが出来ます。

第一に、教会とは、神が主権をもって、キリストを信じる者を召し集めて下さった集会であるということです。パウロがコリントで伝道を始めた時、主は夜の幻の中で、「恐れるな。語り続けよ、黙っているな。あなたには私がついている。誰もあなたを襲って、危害を受けるようなことはない。この町には、私の民が大勢いる」との励ましを与えて下さいました。それによって、パウロは１年6か月の間、コリントに腰を据えて伝道し、主によって救われる者が起こされ、コリント教会が誕生したのです（使徒18章）。このように、神が主権をもって始めて下さったので、教会は「神の教会」なのです。

第二に、教会に集められている者はキリストにあってきよめられています。きよめられたというのは、キリストの十字架を信じた時に、キリストが私たちの心と生活の中に入って来て罪を赦し、きよめて下さったという意味です。そして、今も私たちはきよめられ続けていることを示しています。それでクリスチャンは「聖徒」と呼ばれています。聖という漢字を見ますと、クリスチャンは聖人であり、完成されているるかのように思いますが、聖と訳されている言葉のもともとの意味は分離ということです。人が神を信じ、神に属する者になって、聖なる神を礼拝し、神に仕え奉仕するために分離された者であるという意味を込めて、クリスチャンを聖徒と呼んでいます。私たちクリスチャンは聖徒として、他の人と分離されています。例えば、日曜日には先ず神様を礼拝します。ノンクリスチャンは日曜日に仕事がある、レジャーがあるなどしていますが、クリスチャンはキリストの甦りを記念して、仕事を休み、レジャーを後回しにして、神に礼拝を捧げています。神を中心とする生活を積み重ねて行って、私たちは霊的に成長し、文字通り、聖徒という名前にふさわしい者と変えられて行くようになります。

第三に、教会はキリスト中心です。クリスチャンは、キリストの御名を呼び求め、キリストにあってきよめられ、キリストを主と仰いで信仰第一に生きて行く者です。クリスチャンの集まりが教会ですから、教会がキリスト中心になって行くのは当然です。１２節に「私はパウロにつく」「私はアポロに」「私はケパに」「私はキリストに」と争っている様子が出ています。しかし、教会は「神の教会」であり、教会員は「キリスト・イエスにあって」聖別された聖徒です。全ての人がキリスト中心に生きるようになっています。熊谷福音キリスト教会は「神の教会」であり、「キリスト中心の教会」であると言われるならば、それは素晴らしい恵みであり、主の祝福です。

最近、「聖神中央教会」の主管牧師パウロ永田保こと金保容疑者（６１歳）が少女への性的暴行の疑いで逮捕され、大きなニュースになりました。何故そんな事になってしまったのかは取り調べ中です。伝えられるところによると、金牧師は自分を神だとは言わなかったが、「神のような立場」「神の代理人」という言葉を使い、自分の言葉に権威を持たせていた。金牧師が道を歩くと、教会員は両側に分かれて道をつくり、うやうやしい態度を見せていたということです（リバイバル新聞４月１７日、４０３号）。いつのまにか、教会が「神の教会」であることを忘れて、自分が教会の主人公であると思い始め、権力をふるったのです。信仰を与え、信仰を導くお方はイエス・キリストです。教会の本当の主はイエス・キリストです。これを忘れぬようにして行けば、例えば教会が大きくなった時に、自分の力でなったのではない。これは主の恵みであるとして、謙って全ての栄光をキリストに捧げることができます。当教会では「ネームレス」ということを意識しています。パウロは、ガラテヤ書の中で「生きているのは、もはや、わたしではない。キリストがわたしのうちに生きておられるのである」（ガラ2：20）と言っています。古い自分は死んで、今、キリストが私の心と生活の中に入って来て下さって、私を生かしている。この身によって、ただキリストが崇められるように、ただキリストの御名が讃えられるようにということが、私の人生の目標であるということを「ネームレス」という言葉で告白しているのです。

2．パウロの感謝。1：4－9

神は真実である。あなた方は神によって召され、御子、わたしたちの主イエス・キリストとの交わりに、入らせていただいたのである。（９節）

４節で、パウロは神に感謝の気持を述べています。彼は「いつも神に感謝している」と言っています。これは彼の真実の気持です。しかし、実際のことを言えば、コリント教会には様々な問題があり、特にコリントで最初に伝道し、教会を形成し、霊的に指導してくれたパウロのことをないがしろにする人々がいました（Ⅱコリ10：10）。そうした事を知りながら、パウロは先ず神に感謝の気持を表し、コリント教会に与えられている恵みを数えています。その感謝の内容はキリストによって与えられた恵みで、一言でいえば救いの恵みです。コリントの教会は様々な問題を抱えている、内部にいろいろかき回して、分裂させようとする人々がいる。そうした問題を孕（はら）みながらも、キリストの救いを受けている人々によって教会は支えられている。そのことを「キリスト・イエスにあって与えられた神の恵み」といい、それを思って神に感謝しているという事です。５節「キリストにあって」、６節「キリストのためのあかし」とありますように、パウロはコリント教会の人々が、全てのことをキリスト中心にして信仰生活に励んで行くようにということを願っています。７節「主イエス・キリストの現れるのを待ち望んでいる」、８節「私たちの主イエス・キリストの日」とありますが、これはキリストが再び来られる世の終わりの再臨の日を指しています。パウロは、再臨の日に至るまで、神がひとり一人の信仰を堅く支えて下さることを祈っています。

この箇所から、パウロは愚痴よりも神の恵みを数える感謝の人であるということが分かります。汗水ながして、命の危険にさらされながらコリントで伝道し、教会を形成したのに、彼の伝えた福音に背く不道徳な生活をしている教会員がいる。教会の中で自分たちこそが立派なクリスチャンであると威張り、パウロなんか知らないという不遜な者達がいる。そうしたマイナスを数えるのではなく、パウロは、コリントの教会はキリストを信じて生まれ変わった者の群れであることを感謝しています。パウロの気持は常に前向きであり、積極的です。それはイエス様から来ている恵みです。イエス様は３０歳から３年半、裸足で地上を歩まれ、安心して枕する所のない流浪の生活をおくりながら、伝道し、十字架に向かって進んで行かれました。最後には衣服をはがされ、裸で十字架に上って行かれました。それはイヤイヤではなく「目の前に置かれている喜びのゆえに、恥をも厭わないで十字架を忍ぶ」というものでした（ヘブル12：2後半）。イエス様はどんな中にあっても、神の最善がなることを信じて、全てを神に委ねていたので、前に向かって進んで行く力を持っていたのです。パウロはキリストに倣い、いつも恵みを数えながら、信仰の道を感謝をもって進んでいます。

９節に、パウロが感謝の気持を述べることが出来た二つの理由を知ることができます。

第一に、パウロは「神は真実なかたである」ことを心から信じていました。「神は真実な方である」というのは、「真実なのは、実に神である」ということが出来ます。或いは「神は信頼するに値するかたである」と言ってもいいのです。この御言葉は、神に頼って、身を委ねて行けば万事は大丈夫だということを言っているのです。宗教改革者カルビンは「神の中には、いったん始められたことは、最後まで推し通す、変わらぬ事と続いて行くことがある」と言っています。パウロはキリストを迫害する者から、「あなたは、わたしの名を伝える器として、わたしが選んだ者である」（使徒9：15）というキリストの選びによって、一転してキリストの救いを宣べ伝える伝道者になりました。そして、「神の恵みによって、わたしは今日あるを得ているのである。そして、わたしに賜った神の恵みは無駄にならず、わたしは彼らの中の誰よりも多く働いてきた。しかし、それは、わたし自身ではなく、わたしと共にあった神の恵みである」（15：10）と言っています。パウロが伝道の働きを死に至るまで全うできたのは、神が真実なお方として、一度始めたことを推し通して行く力を彼に与えたからです（Ⅱテモ4：6－8）。

第二に、私たちは神の召しによって、主イエス・キリストとの交わりに入るという恵みを与えられています。信仰生活の最大の要点はキリストとの交わりです。キリストに愛されていることを知り、キリストを愛するのです。信仰生活の最大の要素は活きておられるキリストとの交わりです。教会は交わりの場と言われます。その交わりの原点はキリストとの交わりです。キリストとの交わりがあって、兄弟姉妹との交わりが恵まれるのです。

自分の事になりますが、私が高校生の時に、礼拝後に皆が集まり、お茶を飲みました。小さい教会でしたから、高校生もおじさん、おばさんも一緒でした。そこに長い間、教会を離れていたＳというおじさんが出席していました。お茶の後に、自然に讃美をし、祈りを捧げました。その時に、そのおじさんが泣いていたのです。おじさんは、長い間教会を離れていて、キリストとの交わりが失せてしまい、そのために兄弟姉妹との交わりも失せてしまって、心が空っぽな日々をおくっていました。主の憐れみによって、再び教会の交わりに出席して、活きておられるキリストの恵みに満たされ、キリストの許を離れていたことを悔い改める涙であったのです。その姿を見ながら、キリストから離れたら全ては空しいということを知らされました。それまで部活で日曜日を休んだことがありましたが、日曜日を休まぬようにし、木曜日の祈祷会にも出席するようになり、キリストとの交わりが深められたことを思い出します。冒頭で、教会中心の信仰生活ということを言いましたが、この９節ではキリストとの交わりが強調されています。信仰生活はキリスト中心であり、キリストの教会にしっかり繋がって行くことであるということを心に留めて、祈って下さい。

まとめ

1，２節、キリストを信じて神の教会の一員であることを感謝しましょう。キリストの十字架によって罪を赦され、きよめられていることを感謝し、キリストに従う日々を祈って進んで行きましょう。

2，９節、感謝の気持を深めましょう。感謝の原点はキリストの救いです。愚痴を棄てて、恵みをたくさん数えて祝福の道を歩みましょう。恵みの与え主であるキリストとの交わりを第一にしましょう。キリストの愛に感謝し、キリストに愛をもって仕えて行くように祈りましょう。

祈　り

天地の主である神様、世の中には罪が蔓延（はびこ）っています。私たちは罪を赦され、神の教会の一員にされていることを感謝します。恵み深い御霊によって十字架の救いを讃美し、感謝の祈りを捧げ、今週も喜びの日々を歩ませて下さい。病気の方々を癒し、問題ある方々に勝利を与えて下さい。キリストの福音を伝える教会として、熊谷福音キリスト教会を用いて下さい。私たちの家族を救い、祝福して下さい。活きておられるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献コリント注解―黒崎、榊原、文語略注、バークレー、フランシスコ会、竹森、佐藤順。

平明訳コリント書。