誇る者は主を誇れ　コリント第一1：26

誇る者は主を誇れ　コリント第一1：26－31　　　　　　　　　　　　　　　　　　主の2005.5.15礼拝

本日はペンテコステ（聖霊降臨祭）です。キリストは十字架、復活の後に、エルサレム・オリーブ山から天に帰って行きました。残された１２０名の弟子達が二階座敷で祈っていると、天から聖霊が降り、力を受けたペテロが、キリストの十字架と復活を伝えた結果、３０００人がキリストを信じて洗礼を受け、教会が始まりました（使徒２章）。ペンテコステ（50の意）は、過越の祭から５０日後が収穫感謝祭です。キリストが過越の祭の時に十字架にかかり、復活して天に帰り、聖霊が降り、多くの人が救われるという魂の収穫があって教会が始まり、以後教会は世界各地に増え広がっています。聖霊が来て教会時代が始まり、私たちは教会の一員であることを感謝し、メッセージを聴いて行きましょう

日本では江戸時代３００年の間、士農工商という身分制度がありました。能力、向き不向きに関係なく、武士の家に生まれれば、その人は武士になる、農業の家の子は一生百姓をするという事が決められていました。明治になると士農工商の代わりに、皇族、華族、士族、平民という区別になりました。１９４５年日本は太平洋戦争に負けて民主主義になり、一応平等な社会制度になりました。しかし、皇族は残り、学歴、家柄、出身地等で種々な差別があるということが言われています。

では教会はどうなのか。聖書は、「キリストを受け入れる人は誰でも、神の子供としていただくことができる。キリストを信じる人は誰でも救ってもらえる。それは先祖や親の身分や地位によるのではなく、人間の願望や意志によるのでもなく、ただ神の御心によるのである」と告げています（ヨハネ1：12－13）。キリストにあって全ての人が神の子であるというのが、教会の集まりの素晴らしい点です。ところが、コリント教会には、キリストから離れて人間中心の派閥があり、ある人々は「自分たちには特別な知恵が与えられている」と称して高ぶり、また「自分には霊の賜物がある」と主張する人々がいて、教会が混乱し、分裂という危機の中にありました。

そこで本日の聖書コリント第一1：26－31を通して、使徒パウロは、「自分が救われた時のことを思い出しなさい。あなた方が救われたのは、キリストの十字架の恵みによるのである。だから人間的なものを誇ってはならない。私たちが誇ってよい唯一のものはキリストである。『誇る者は主を誇れ』」と教えています。キリストの十字架を見上げて謙ることが恵みをもたらします。ソロモンは、「主はあざける者をあざけり、謙る者に恵みを与えられる」（箴言3：34）と述べています。私たちひとり一人が、救いの原点に立ち、キリスト中心の信仰に徹して謙りを与えられ、人を自分よりも優れた者として、他の人の事を思い遣る事が教会一致の秘訣です（ピリピ2：3－4）。今朝、キリストの十字架による一致に感謝し、聖霊によって祈り、新しい一週間を出発して参りましょう。

内　容

1、主を信じる者は、選ばれ、救われたことを感謝する。1：26－29

2、主を信じる者は、キリストの恵みに感謝し、主を誇る。1：30－31

資料問題

26節「召された時のこと（召しのことー新改訳）」は、原語では「召された事」を意味している。26節「人間的には」とは「肉によれば」であり、人間の自然性を意味する。「人間的に知恵のある者」とはこの世の知者、学者、博士等の事。28節「無きにひとしい者」とは「無なる者」で「有る者」の反対。30節「あなた方がキリスト・イエスにあるのは神によるのである」とはクリスチャンは「神のお陰で」救われ、キリストとの霊の交わりを与えられている事を示している。30節、「キリストは・・神の御旨を知らしめるための知恵、罪人に代わって神の前に立ち給う義となり、自ら全く清くなり得ない者が戴く聖となり、滅亡よりの完全なあがないとなって下さった」との意である。31節「誇る者は主を誇れ」、７０人訳ギリシャ語聖書エレミヤ9：23－24の要約。最も根源的な罪は自己主張、または人に認められたいという思いで自己を誇ることである。我々は何事もなしえず、ただ神のみが全てのことを為したもう。自分の弱さ、無知、無能、無力を知り、主に頼る者が、結局は強くて賢い人間である。だから主を心から誇りとするのである。

1、主を信じる者は、選ばれ、救われたｋとを感謝する。1：26－29

兄弟たちよ。あなた方が召された時のことを考えてみるがよい。人間的には、知恵のある者が多くはなく、権力のある者も多くはなく、身分の高い者も多くはいない。（26節）

パウロは、２６節「召された時のことを考えてみるがよい」と呼びかけ、私たちが救われた当時のことを思い起させています。「召された時のことを考えよ」とは、「キリストを信じて救いに入れてもらった、あの時の事を思い起してご覧なさい」ということです。パウロは、コリントの人々に「あなた方は知恵がある、権力がある、身分があるから救われたのではない。むしろ逆であった。この世的には愚かな者、弱い者、身分の低い者、無きに等しい者であったのに、あなた方はキリストの救いに入れてもらったのである」ということを指摘しています。私たちがクリスチャンになれたのは、人間の知恵、力、この世の身分によったのではなく、神の側で私たちを選んで下さったからです。神の選びについて三つの大切なことがあります。

第一に、キリストは小さき者の友であり、小さき私たちを用いて下さいます。

キリストは全ての人の救主ですが、特に弱い者に対してキリストは愛を傾けて下さいます（ルカ１５;１、ヨハネ９:３等）。コリント教会には、会堂司クリスポ（使徒18：8）、市の会計係りのエラスト（ロマ16：23）など、この世の有力者、身分の高い者もいました。しかし大部分は貧しい奴隷であったようです。

２６－２８節でパウロは、「教会には愚かな者や弱い者や身分の低い者や軽んじられている者が多いが、それはこの世の知恵ある者や、強い者や、権力ある者を打ち負かすためである」と言っているのです。日本でも、小説家三浦綾子さん（召天された、ご主人光世氏活躍中）、元日銀総裁速水氏、口で絵を描く星野富弘氏、クロネコ大和宅急便会長小倉氏、医師の日野原重明氏など社会的によく知られたクリスチャンの人々がいます。こういう一般に名の知れた人々が、もっと多く教会に加われば、伝道は伸びると考えている人もいます。そうした事も伝道の助けになるでしょう。しかし、パウロは弱い、無力な、無きに等しい私たちが、十字架によって救いを現して下さったキリストに本気で縋り、キリストの素晴らしさを伝えて行こう。キリストはそれを喜んで下さって、この世の力に勝たせて下さるということを訴えています。この教会も、特別な助けはなく、全くのセロから家を借りて伝道が始まり、主によって救われた小さい私たちひとり一人が、祈りを合わせ、キリストを伝道するという目的と決断の一致をもって、聖霊によってここまで導かれ、そしてなお前進中である事を感謝します。

第二に、キリストを信じる者は、高ぶり、審（さば）く心から自由になります。

何かに自信をもって進むというのは大切なことです。しかし、自分はできるという事で、もし他の人を見下したり、批判したり、口を出したりするとしたら、それは誤りです。私たちは、そんなに偉くないのです。最初はヨチヨチ歩きの子どものようで、皆に祈られ、助けられて信仰を導かれて、ここまで来ました。それを忘れて、他の人の信仰やその生活を批判したり、審いたりしたら、それが高ぶりのはじまりです。２９節には「神のみまえに謙り、高ぶるな」と言われています。コリントの教会の混乱は高ぶりから始まったのです。この例に直接当てはまるかどうか分かりませんが、私は「あなたが牧師になるとはねー」と驚き半分に言われた事があります。よく母に聞かされたのは、一日に一回は「お宅の次男坊がイタズラをした」と言って近所の人が怒鳴り込んできたという事です。そういえば、近所の大人に追いかけられて、逃げたことが何回もあったことを思い出す事があります。中学・高校と続いている学校へ、技術を身につけるという事で入学した学校がキリスト教系で、そこで毎朝聖書の話を連続して聴きました。高校は公立の普通高校に入り、クリスチャンに出会い、高校２年洗礼を受け、私の人生は変わりました。そうした自分の体験に重ね合わせて、例えば教会で子どもが暴れても、ダダをこねても驚かない、何故なら教会に来てイエス様の話を聴いているので、イエス様が導いて下さるから、大丈夫と信じられるからです。今は離れている子供たちも、イエス様の御言葉が心に植えられているし、親の祈り、教会の祈りがありますから、必ず信仰に戻ってくると信じています。子どもに限らず、大人も同じです。みな成長して、人々が驚くような善き変化を与えられます。その事を信じて、批判せず、審かず、互いに祈り合って行きましょう。

第三に、キリストを信じる者は、主によって守られ、心に喜びを与えられます。

世にはコンサート、映画、芝居などがあり、お金を出して、そこに行き、心の楽しみを得ます。キリストは私たちの心の中にいて、内から、中から喜びを与えて下さいます。楽しみは外からやってくる、その楽しみをお金を出して得ます。喜びは、心の内にいるキリストによって恵みとして与えられ、恵みですからお金はいりません。ある娘さんは救われてから、風呂敷包み一杯に映画スターのブロマイドを教会に持ってきて「もう私にはイエス様がいますから、これを全部処分して下さい」と言いました。以前北海道で、年配のご婦人を訪問しました。「私は陶器が好きで集めるのが楽しみでした。特に急須をたくさん集めていましたが、やめました。イエス様を信じてから、壊れて行く物によって心を満たすのではなく、いつも私と共にいて下さるイエス様から心の喜びをいただいています」と話してくれました。心の内にいて下さるキリストに感謝しましょう。心の内から喜びを与えて下さるキリストに感謝しましょう。

主は、弱く、小さく、権力なく、愚かな私たちを救って下さった恵みの主です。主に感謝を捧げましょう。

2、主を信じる者は、キリストの恵みに感謝し、ひたすら主を誇る。1：30－31

あなた方がキリスト・イエスにあるのは、神によるのである。キリストは、私たちの知恵となり、義と聖と贖いとになられたのである。それは「誇る者は主を誇れ」と書いてあるとおりである。（３０－３１節）

私たちはキリストによって救われました。３０節前半に、「あなた方がキリスト・イエスにあるのは、神によるのである」と言われています。「神による」とは「神のお陰で」という意味です。神が私たちに、聖霊をおくって、「イエス・キリストは私の罪のために十字架にかかって身代りになって下さった救主である。私は罪を悔い改めて、イエス様を信じます」という信仰告白を与えて下さいました。何故なら「神は全ての人が救われて、真理を悟るに至ることを望んでおられる」からです」（Ⅰテモテ2：4）。「キリスト・イエスにある（のうちにある）」とありますが、「私たちはキリストを信じて、キリストを心に宿して生きている、キリストから離れない決意をもって縋っている、キリストはブドウの木、私たちはその枝としてブドウの木であるキリストに結びついている（ヨハネ１５章）」という意味を表しています。繰り返し言い続けていることですが、また改めて祈って下さい。その祈りは、とても単純な祈りですが、しかし、信仰生活を支える大切な祈りです。「キリストに固く結びつくこと、キリストの体である教会から離れないで、いつも教会生活を優先して行くという事」、これを祈って下さい。

キリストはどんなお方でしょうか。それが３０節後半に記されています。宗教改革者カルヴァンは３０節を愛誦聖句にしていたと伝えられていますが、この一句は大切な聖句です。３０節後半を読みます。この聖句によってキリストがどんなお方であるのかが明らかにされています。

キリストは、私たちに神を信じる知恵を与えて下さいました。私たちはキリストを知ることによって神を知ることが出来るのです。「神を見た者はまだひとりもいない。ただ父の懐（ふところ）にいる独り子なる神だけが、神をあらわしたのである」（ヨハネ1：18）。キリストは病気を癒し（マタイ8：1－17）、嵐を静め（マルコ4：35－41）、五つのパンと二匹の魚で５０００人の人を養い（マルコ6：35－44）、悪霊を追い出し（マルコ1：23－28）、死人を甦らせ（ヨハネ１１章）、神としての力を示しています。罪がないのに、十字架にかかって私たちの身代りになり、罪の赦しの道を開かれました（Ⅱコリント5：21）。死んで三日後に甦り、永遠に活きている主です。

キリストは神を具体的に知らせる知恵を与え、私たちを救いに導かれます。キリストは十字架によって、私たちを正しい義なる者にして下さり、罪に汚れていた私たちを聖なる者とし、そして私たちの全ての罪を清め、天国へ行けるようにあがない（罪の赦し）を与え、永遠の天国に入って行く恵みを与えて下さる救主です。

そこでパウロは「私たちが自慢し、誇る者はイエス様だけだ。イエス様の十字架の救いに感謝する。死を打ち破って、永遠の命を下さったイエス様に感謝する。インマヌエルの主として共にいて下さるイエス様に感謝する。私の救主であるイエス様をほめ讃える。私の人生を導く主であるイエス様を讃美する。私の誇りとするものはイエス様だけだ」という信仰の思いを表しているのです。

メル・ギブソン製作・監督の「パッション」というキリストの十字架を伝える映画が大きな話題を呼びました。この映画でイエス様役を演じたのはジム・カヴィーゼルという俳優です。カトリックの家に育ち、信仰を持っている人です。イエス様役を引き受けた次の日、監督のメル・ギブソンから電話があった。「この映画に対して世間から大きなプレッシャーがかかることになる。今回イエス様役を引き受けないほうがよいかもしれない」。カヴィーゼルは答えた、「人はみなそれぞれの十字架を背負って主に従うように言われています。私のイニシャルはJ.C（Jim Caviezel―Jesus　Christと同じイニシャル）で、年齢も３３歳です（イエス様の十字架にかかった年齢と同じ）」。彼はアラム語へブル語ラテン語を覚えるのは大変かなと思っていたが、実際に撮影が始まると、肉体的に大変であった。特殊メイクは朝２時に始まり、午前１０時まで続く。それから撮影現場に行き、腰巻１枚で何時間も寒い中、十字架の上に立つ。そうすると低体温症になる。撮影終了後、２時間熱い風呂に入りメイクを落とす。この時発疹が出来るほど体をこする。そして３－４時間の睡眠をとり、再び同じことを繰り返す。ある撮影の時、強い風で十字架の上に冷たい風が吹きつけた。周りを見ると、スタッフは全員防寒着、手袋をしている。彼は思わず天を仰ぎ「我が神、我が神、どうして私をお見捨てになたのですか」と言ったそうです。そういう苦労を重ねながら、映画は作られて行きました。監督のメル・ギブソンは、「もしパッションがスタジオで撮影されたら、肉体的苦痛を味わうことなく終わったでしょう。しかし、外で出演者が苦痛を体験しながら撮影されたので、キリストの十字架を体験する映画になった」と言っています。主演のジム・カヴィーゼルは証しています、「私はキリストの十字架の苦しみがどんなものであったのか、よく分かりませんでしたが、この映画制作を通して理解できるようになりました。キリストに従うとは、キリストと苦難を共にすることを知りました。そして祈りは頭で考えてするのではなく、心からするのだということを知りました。家族、友などあらゆることを心から感謝します。もっと主を愛したい。主に祈りたい」。

私たちは、彼のように肉体的に十字架を体験することは出来ません。しかし、私は自分の罪を思うと、イエス様の十字架の有り難味がヒシヒシと心に感じられます。そしてキリストが十字架によって、神の知恵、義、聖、あがないとなって下さったことを感謝するのみです。ある無教会派の伝道者ですが、死を目前にして、自分の罪は果たして赦されているのだろうかと真剣に悩みます。そして「イエス様の十字架にすべての解決と赦しがある」ことを確信して平安を得ます。自分はイエス様の年の倍ほど生きているが、ますますイエス様の事が慕わしく思える」と述べています。

まとめ

1、２６節、とるに足りない、弱い、愚かな者を救って下さったイエス様に感謝します。高ぶって、人を批判し、審くような愚かなことをすることがないように祈って下さい。高ぶり、審く心は分裂のはじまりです。他の人のことを思い遣り、その人の祝福を祈りましょう。

2、３０－３１節、キリストが私たちの知恵であり、義、聖、あがないとなって下さった救主です。キリストの恵みを讃えましょう。感謝しましょう。キリストが私たちの誇りです。

祈　り

天地の主である神様、独り子であるイエス・キリストの十字架によって、私たちを神の子にしていただき感謝します。救われた恵みに感謝し、愛をもって他の人に接し、祝福を祈る者として私たちを用いて下さい。この教会に加わる２名の方々に感謝し、祝福を祈ります。またこの地上に生を受けた幼子のために祝福を祈る時が与えられている事を感謝します。私たち夫婦は２０日より６月2日までイギリス・ノルウエー伝道旅行に行きます。聖霊に助け、導かれて伝道の働きを祝福し。また奉仕役員会を中心にして留守の教会が守られ、メッセージを伝える荻野神学生を用いて下さいい。　聖霊の導きに感謝し、主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献コリント注解―竹森、榊原、バークレー、フランシスコ会、佐藤、西川、文語略注、黒崎、LAB。　「聖書事典・日キ教団」「御翼１８４号・佐藤順」