わたしに倣（なら）う者となりなさい

わたしに倣（なら）う者となりなさい。 コリント第一4：14－21　　　　　　　　　　　　　主の2005.7.24礼拝

日本の手紙の形式では、結びの言葉として「敬具」、「草々」と書いて、名前、年月日を記します。しかし、英語流に、最後に「愛しています」、そして名前を記す方もいます。クリスチャンであれば「主に在りて」、「祈っています」、「主の恵みを祈ります」などと書いて名前を記します。ある方の手紙の末尾に、「輝くクリスチャンになることを祈り願っている○○○（名前）」と記してありました。それを読んだ時に、「私もイエス様の愛を受けて、喜び、感謝して生きていることが、誰の目にも分かるような者でありたい」と思いました。イエス様の恵みに溢れて、日々輝いて生きることは、全てのクリスチャンにとって共通の願いであると思います。中国伝道に携わっている井上師夫人によれば、大勢の人々が行き交う街頭で中国人クリスチャンと待ち合わせをしたのですが、写真もなく、何か目印になるものを持っているという打ち合わせもなく、まったく初めて会う相手でしたが、一目見た瞬間にクリスチャンであると分かる程に彼らは輝きに溢れていたとのことです（２００４年８月井上師夫人の中国伝道実体験証し）。

本日はコリント第一4：14－21です。使徒パウロは「わたしに倣（なら）う者になりなさい」（１６節）、また「キリスト・イエスにおけるわたしの生活の仕方（生き方）を教える」（１７節）と言っています。これは、「クリスチャンとして、どのように生きて行くのかを、わたしを通して知り、それに見習いなさい」ということです。彼がこう言い切ることが出来たのは、イエス様を見上げて、「わたしのため十字架の上に命を捧げて下さったのはイエス様である。わたしはイエス様のために生きる」という決断をささげ、「キリストきちがい」になって、祈りと喜びと感謝に溢れて生きていたからです。今朝、主の御言葉に耳を傾け、パウロを生かしたイエス・キリストを見上げながら、私たちも祈りと喜びと感謝に満ち溢れ、イエス様を表す恵みの日々を前進するように、祈って、新しい一週間を出発して参りましょう。

内　容

1、キリストを信じる者としての生き方を学びなさい。4：14－17

2、キリストを信じる者としての生き方を実践しなさい。4：18－21

資料問題

1５節「養育掛パイダゴーゴス」、奴隷の中で学校へ連れて行く役目を与えられた者で、学校の行き帰り、行儀作法の躾まで受け持った（ガラ3：24参照）。養育掛は父に代わるものではない。パウロはコリント教会の養育掛以上の者、父親である。１６節「わたしに倣う者となりなさい」、「わたしの生活の仕方をまねること」（１７節後半）。生活とは「キリスト・イエスにおける」とあるようにクリスチャン生活のこと。それは「至るところの教会で教えている」公的な福音宣教と教育という務めのための生き方。私的な趣味などを真似ることではない。「わたしに倣え」とは11：1「わたしがキリストに倣う者であるように、あなた方もわたしに倣いなさい」ということで、パウロに倣うことは、キリストに倣うことである。２０節「神の国は言葉ではなく、力である」、神の支配に服して生きる者は、言葉だけではなく、実際の生活を通してイエス様を信じる信仰を表して生きるのである。

1、キリストを信じる者としての生き方を学びなさい。4：14－17

そこで、あなた方に勧める。わたしに倣う者となりなさい。（１6節）

パウロは、１４節で、コリント教会の人々を「わたしの愛児」と呼んでいます。１５節に「養育掛（がかり）」という言葉があります。養育掛は、奴隷の仕事で、子供を学校へ送り迎えし、行儀作法を教え、子供の家庭教師の役割をしていました、パウロは１５節で「自分は単なる信仰の養育掛以上の者で、あなた方の信仰の父である」と言っています。養育掛は、奴隷ですから主人に命令されて子供の世話をします。父親は、自発的に、進んで、愛をもって子供を育てます。パウロが、「自分はコリント教会の父である」と言うのには理由があります。パウロはアジア（今日のトルコ周辺）を中心にして伝道していましたが、聖霊に導かれて、海を越えてヨーロッパに渡り、ギリシャの国に入り、コリントの町にやって来ました。コリントには偶像の神殿があり、市場では偶像に捧げられた肉が売られ、町全体が偶像礼拝に染まっており、商業が盛んで物質的なものに頼る傾向が強くありました。哲学も盛んで人間の知恵が重んじられていました。偶像の神殿には、神殿売春婦が３０００人もいて、風紀が乱れている不倫の町として悪名が轟いていました。それに加えてイエス・キリストを伝える伝道の働きに反対する人々が大勢いて、伝道のやりにくい所でしたが、パウロの伝道を通して、多くの人が洗礼を受けていました。さらに、パウロはある夜、幻のうちにイエス様から「怖れるな、黙っているな、語り続けよ」との励ましを受け、１年６か月の間コリントに滞在して伝道に打ち込み、コリント教会の基礎を据えました。この事から、パウロこそがコリント教会の人々を救いに導いた者として、彼らの信仰の父と呼ばれるにふさわしい人であったのです。（使徒１６－１８章）

パウロは言います、「わたしは、あなた方の信仰の父である。そこで言うが、『わたしに倣（なら）う者となりなさい』。わたしはテモテを送るが、彼から『クリスチャンとして生きているわたしの生活の仕方』を学びなさい」と。「わたしに倣え」というのは、パウロだから言えた事かも知れませんが、彼の言わんとするところは11：1、「わたしがキリストに倣う者であるように、あなたがたもわたしに倣いなさい」という事です。この御言葉から、パウロに倣うことは、実はキリストに倣うことであることが分かります。私たちはどんなふうにして、パウロのように、キリストに倣う信仰生活をして行くのでしょうか。

第一に、信仰生活の中心は教会にあるということです。

＊教会では必ず聖書が開かれます。ある方が「我らはイエス・キリストを信じて、万物を創造された神を父とする。そして教会を母として信仰生活をする」と言っています。教会を母とするという意味は、母親が子供に乳を含ませ、次に食べ物を与えて養い育てるように、教会では霊が恵まれ成長するように、神の御言葉である聖書が礼拝メッセージで説かれ、祈り会、早天祈祷会でも説かれ、ファミリーでは御言葉の恵みを分かち合っています。

＊教会は祈りの家です（マルコ11：17）。イエス様は「何事でもわたしの名によって願うならば、わたしはそれをかなえてあげよう」（ヨハネ14：14）と約束して下さいました。昨日上野ホームレス伝道に行ってきました。ホームレス伝道によって、『ホームレスの中から救いを受けて、社会復帰し、教会につながり、上野の働きを奉仕で支え、献金で支える事ができるように』ということが祈りでした。「それは現実的に難しい」という人がいましたが、６年間の働きを通して、そのような方々が起されてホームレス伝道を支えています。主は祈りに応えて下さっています。皆さんの問題は何でしょうか・・・。どんなことでも祈りましょう。メッセージの後に祈りがあります。共に祈って新しい一週間を出発して行きましょう。

＊教会には交わりがあります。「私は神を信じている。教会に行かなくても一人で聖書を読んで、一人で礼拝して行く」と主張する人がいます。しかし残念ながら、そういう人は信仰から外れ、信仰の恵みを失っています。イエス様は「わたしにつながっていなさい」（ヨハネ15：5）と言われました。ヘブル書は、「集まりをやめるな。主の再臨は近い」（ヘブル10：25）と告げています。教会の交わりはイエス様を中心にして「互いに重荷を負い合い、祈り合って行く」交わりです（ガラ6：2、エペソ6：18）。「重荷を負い合う」ということですが。例えば病気などで集会に来られない人のために、教会では週報、メッセージが送られ、交わりが持続するようになっています。

第二に、信仰生活は「今が恵みの時、救いの日である」（Ⅱコリ6：2）ことを信じて、主に従って行く生活です。牧師だから、奉仕役員だから大丈夫、何十年も信仰しているから大丈夫ということはありません。それぞれが「今」という時にイエス様に従って行くことが最も大事なことです。「イエス様にどこまでも従って行こう」という決断の祈りをささげて、一週間の旅路を出発して行きましょう。そして毎日「今日もイエス様に従います」という決断の祈りをもって進んで行きましょう。

第三に、信仰生活に卒業はありません。何年か信仰生活をして、「自分はもう分かった」、「人に躓いた」などと理屈を並べて教会から離れれば信仰の滅びを招きます。何故ならば教会はキリストの体ですから、教会を離れることはキリストから離れることを意味します。イエス様は「わたしから離れては、あなた方は何一つ出来ない」（ヨハネ15：5）と言われました。天国に行くまで、教会生活をして行くのがクリスチャンです。様々な事情で教会を離れている霊的孤児がたくさんいます。そうした方々が教会に復帰するように祈りましょう。

2、キリストを信じる者としての生き方を実践しなさい。4：18－21

神の国は言葉ではなく、力である。（２０節）

コリント教会の中に、先生であるパウロを排斥し、自分たちは霊的に優れていると高ぶっている人々がいました。彼らは、パウロは遠く離れた所にいて、コリントに戻って来ないと思って、好き勝手にして威張りくさっていたようです。そこで、パウロは「すぐにでもあなた方の所に行く」と伝えると同時に、「口先だけの言葉ではなく、あなた方が言う信仰生活の実際の力を見せなさい」と言っています。そして「神の国は言葉ではなく、力である」と宣言しています。

神の国とは神が支配される国です。神は愛ですから、神の国は愛が支配する国です。愛の内容は、「寛容、情け深い、妬まない、高ぶらない（自慢しない）、誇らない、礼儀に反しない、自分の利益を求めない、いらだたない（怒らない）、恨みをいだかない（人のした悪を思わず）、不義を喜ばず真理を喜び、全てを忍び（我慢し）、全てを信じ、全てを望み（期待し）、全てを耐え忍ぶ（13：5－7）」ということです。パウロは、「あなた方の中で高ぶっている者がいる、その者達は口先だけではなく、実際生活の中で愛をもって生きていることを示しなさい」と迫っています。さらに、「私はコリントに行く。ムチをもって行こうか。愛と柔和な心をもって行こうか。もちろん愛をもって、あなた方の所に行こう。愛を受けるために、高ぶりを棄てて、悔改めて、キリストの愛を受けてほしい」という思いを訴えています。

「神の国は言葉ではなく、力である」とあります。力とは、生活の中で表される実践を表しています。例えば「人を赦せ」と言われることを、実際に行うことです。でも、「まだ神の国は来ていない」。だから神の国のことを表すことはできない」という人がいます。

それに対し、キリストは「神の国は見られるかたちで来るものではない。また『見よ、ここにある』、また『あそこにある』などとも言えない。神の国は、実にあなた方のただ中にあるのだ」と言われました（ルカ17：20－21）。神の国は、キリストを信じる者の心の中に、そして信じる者の集まりである教会の中に、すでに始まっています。そこは愛が支配する所です。高ぶっている者は、人を受け入れ、赦し、励ますという愛に欠けています。しかし、キリストを真心から信じる者は愛をもって支え合って行きます。愛こそが神の国の実際的な力の表れであると言うことができます。

ところで愛を表す生き方とは何でしょうか。

愛の表れは祈りです。

人のために執り成しの祈りを捧げることこそがクリスチャンの愛の奉仕です。病気の方のために、家族の救いを願う方のために、人間関係で苦しむ人のためになど様々な祈りの要請があります。友のために祈って下さい。教会の伝道が進んで行くように祈って下さい。この礼拝のことを取り上げても、実に多くの奉仕の組み合わせによって、礼拝の一つ一つのプログラムが進んでいます。今日は車イスの方がお見えになっています。当教会はバリヤフリーではないので、２４日礼拝に出席するということを聞いてから、会堂にスムースに入れるように祈りが捧げられ、車イスで入るために手を貸して下さった方々がいました。感謝します。祈りは行動を生み出します。共に祈り合って、助け合って行くことこそが、愛の表れであり、愛の実践です。

少し違った角度から愛について考えてみます。愛の表れは聴くということです。

人の話を積極的に聴いて下さい。ここで聴き方についての心得を言います。「相手の話を途中で遮らない、相手の話を批判したり反論したりしない」ことです。話を聴きながら、「すぐに助言したり、忠告したり、教えたり、自分の経験を語ったりすることもしてはならない」ことです。

イエス様は私たちが祈る時に、どんなことを言っても受け入れ、聴いて下さっています。私も時々、イエス様に文句を言います。文句を言いながら、イエス様が聴いて下さっているということを感じ、心が静まってきます。祈りが終わるとスッキリします。そして静まっていると、イエス様の答が心に響いてきます。あとから「イエス様、スミマセンでした」とお詫びしますが、聴いてもらうことによって心が軽くなります。全てをイエス様が聴いて下さり、解決を与えられているので、自分が人の話を聴く時には余裕をもって、徹底的に聴くことが出来て、聴いた事柄の解決をイエス様にお祈りすることができます。

愛の表れは赦しです。

赦しこそが愛のもたらす偉大な力です。主の祈りの中で「我らに罪を犯す者を我らが赦すごとく、我らの罪をも赦したまえ」と祈りました。しかし赦せないでいる事柄が結構あるのではないでしょうか。イエス様は十字架の上で「父よ、彼らを赦したまえ」（ルカ23：34）と祈られました。イエス様の祈りは、無理やりに十字架にかけた相手を赦す祈りです。これが赦しの究極の姿です。

次の出来事は、以前、実際に韓国であった話です。北朝鮮が韓国に攻撃を仕掛けて、戦争が行われました。韓国側で一人の老牧師が、二人の息子と共に一生懸命に伝道していましたが、老牧師が出かけている間に、北から入り込んだ兵士たちが町を襲ったのです。戻った老牧師が見たものは教会に横たわる二人の息子の遺体でした。やがて戦争が終結し、その町を襲い、二人の息子を殺した犯人が捕らわれ、裁判が行われ、犯人は全てを認め、判決が下ることになりました。その時に「私に話をさせて下さい」という声がありました。それは二人の息子を殺された老牧師でした。彼は特別に許されて話し始めました、「裁判官様、私は二人のわが子を殺した、この男を赦したいと思います」。老牧師は一言一言を明確に語った。「法律によって、愛する息子二人を殺した者に死刑を宣告したとしても、私の悲しみは癒されません。今さら彼を死刑にする必要があるでしょうか。それよりも彼を私にくださいませんか。彼を引き取ります。彼は失った者達の代わりになると思います。もし彼をくださるなら、全能の神に誓って、彼を本当の息子のようにするつもりです」。沈黙が法廷を支配した。それは、さながら最後の審判の日を思わせた。聞いていた人々は自分の耳を疑った。・・・やがて、二人が手をとり合って法廷を去った時、父親の牧師の心に二つの聞きなれた声が語りかけた。その声は、時間も空間も死も越えた強い愛を込めて語りかけた、「私たちは祈り続け働き続けなければなりません」「みんなには真に赦すことのできるお方がおられるのが信じられないようです。私たちにできるのは、赦しの道をさし示してゆくことだけです」。牧師が失った二人の息子たちは、はるか彼方から父親を祝福していたのであろう。「神の国は言葉ではなく、力である」ということを、愛の赦しの実践によって、この老牧師は誰の目にも明らかになるように示すことができたのです。それは、老牧師がイエス様の愛に満たされていたからです

まとめ

1、１6節、パウロはキリストに倣って生きていました。パウロに倣うことはキリストに倣うことです。キリストを信じて信仰生活に励みましょう。教会生活を大事にし、聖書を読み、祈ること、キリストとの交わり深めましょう。信仰生活は「今」という時に主に従うことです。信仰に卒業はありません。天国の門をくぐる時まで、ひたすらイエス様に縋って、信仰の道を祈り合って進んで行きましょう。

2、２０節、神の国は愛が支配する所です。心に愛が満ちるように、教会に愛が満ちるように祈りましょう。愛の表れは執り成しの祈りです。愛の表れは聴くことです。話を遮らず、批判、反論をせずに徹底的に聴くことです。愛の表れは赦すことです。

祈　り

天地の主である神様、イエス様の十字架によって救われていることを感謝します。教会生活を中心にして、信仰の道を真っ直ぐに歩めるように導き助けて下さい。聖霊によって、執り成しの祈りをささげ、人の話をじっくり聴く愛を与えて下さい。人を赦す者にして下さい。

今週も、神の聖霊によって、主に従う喜びの日々であるように導いて下さい。来週３１日から８月２日までの軽井沢バイブルキャンプを祝福して下さい。

病気の方々を癒し、信仰の戦いの中にある方々を勝利に導いて下さい。午後からの聖歌隊、手話教室、夜の聖日夕拝を守って下さい。我らの救主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献コリント注解―黒崎、西川、フランシスコ会、榊原、ＬＡＢ、竹森、バークレー、モリス、文語略解。

　　　　　　「現代のたとえ話・アウスラー・鳥羽訳・教文館信仰誌」