純粋で真実な神の教会　コリント第一5：1

純粋で真実な神の教会　コリント第一5：1－8　　　　　　　　　　　　　　　　　主の2005.7.31礼拝

熊谷市内を荒川が流れていますが、その両岸には堤防（土手）が築かれています。堤防は、台風などによる大水に備えて、高さ、強さなどを考えて築かれていますので、河のそばでも安心して住まうことができます。ところで、「千里の堤防も蟻の一穴から」という諺ｌがあります。一匹の小さな蟻が「堤防さん、私の巣をつくる為に場所を貸して下さい。ごく小さな穴ですから、堤防さんには何のご迷惑もかけません」。堤防は小さな蟻の巣だから大丈夫と思って「はい、分かったよ」と返事しました。平穏無事な良い天気が続いていましたが、ある晩台風が襲来し、みるみる河の水嵩が増えてきました。堤防は「俺様が水を防ぐ」と言って、ゴーゴーと流れる水の圧力に耐えていました。ところが、丈夫なはずの堤防の一箇所がグラグラし始めました。「あれ、どうしたのかな」と思っているうちに、突然堤防が崩れ、そこから水がどっと入り込み、大洪水になってしまいました。その原因は、小さな蟻の穴に水がしみ込み、それがどんどん広がって堤防が切れてしまったからです。

本日はコリント第一5：1－8です。６節に「少しのパン種が粉のかたまり全体をふくらませることを知らないのか」とあります。ここでは、パン種とは罪、罪人、悪いことなどを意味しています。パンを作る時にパン種（ふくらし粉、イースト菌）を入れると粉全体がふくらんで、ふんわりしたパンができます。教会の中に、罪が入り込み、あるいは罪を犯している人を放置しておくならば、少しのパン種が粉全体をふくらませる様に、教会全体が罪に染まり、堕落してしまいます。そこで、７－８節「古いパン種である罪を除き去りなさい。教会全体がキリストを信じる純粋な、真実な群れとなりなさい」と言う願いが、この手紙の記者パウロの祈りであり、神の御心です。純粋で真実な教会として成長して行くように、メッセージを聴き、祈って新しい一週間を出発して参りましょう。

内　容

1、キリストの十字架の救いを、罪によって無にしてはならない。5；1－5

2、キリストの十字架の救いを、しっかり信じて生きて行こう。5：6－8

資料問題

５－６章では、⑴近親相姦の問題（5：1－13）、⑵クリスチャン同士の裁判沙汰（6：1－11）、⑶性に関する罪（6：12－20）について取り上げられている。５章１節、ユダヤ人にとり、義母との結婚は律法で禁じられていた（レビ18：8）。ローマ法でも同じである。２節「除く」、教会より除名すること。４―５節、罪を犯している男は処置されなければならない。サタンに引き渡すとは、この世はサタンの国に属していると考えられていた（ヨハネ12：31,16：1、使徒26：18、コロサイ1：13）。この男をサタンの世界へ送り返せということで教会からの破門である（戒規処分）。その処置は、最後には彼の霊が救われるように、いまその男を辱め、彼の肉欲を抑えさせ、根絶せしめようとする意図のもとに行われた処罰であった。破門された者が、最終的に悔改めて救いの恵みに帰ることを意図している。７－８節、「古いパン種」とは罪、罪人、悪いことなどを意味している。過越のパンはパン種が入っていない（出12、：１５以下、13：7）。キリストは過越の子羊のように、私たちのために十字架にかかり、全ての古いパン種である罪を赦し、きよめて下さった。だから古いパン種という罪をを除かれた、純粋で真実な心で礼拝を捧げるのである。過越の祭りの前日にロウソクを灯し、威儀を正して家中のパン種を捜し求め、どんなに僅かにでも残っているものがあったら、全てを投げ捨てる（ゼパ二ア1：１２参照。パン種を捜す日は４月１４日で春の大掃除の起源になっている）。これは教会の中より全ての悪を除き去らなければならないことを告げている。

1、キリストの十字架の救いを、罪によって無にしてはならない。5：1－5

わたしたちの主イエスの権威のもとに集って、彼の肉が滅ぼされても、その霊が主のさばきの日に救われるように、彼をサタンに引き渡してしまったのである。（4－５節）

本題に入る前に、２８日読売新聞３４面に「高校生以下の性行為は不適切」という記事が出ていました。『現在の学校では、性教育がなされているが、文部科学省では児童生徒の性行為の是非については明言しておらず「避妊すれば、性行為をしてもいいのか」という子どもの問いには、現場の先生が答えてきたのが実態だ。中央教育審議会では、高校生以下では社会的責任、性感染症を防ぐ観点から、「性行為は適切でない」という立場で、指導内容を検討することとした』という事が報じられていました。こうなりますと、では大学生はいいのか、大人は自由なのかという議論になり、ますます混乱して行くと思われます。性に関して、唯一明確な基準を示しているのは聖書です。聖書は結婚以外の性の交わりをハッキリと禁じています。（これについては先に行って学ぶことになります。なお、ビデオテープ『Sex,その嘘と真実』によって、聖書的な正しい知識が得られますので、是非見て下さい）。

本題に入ります。本日の箇所には、性の乱れが記されています。近親相姦と呼ばれる罪で、ある男が自分の継母と不義の関係を持って一緒に暮らしている。それはレビ記18：8で神によって禁じられており、ローマ法においても禁じられていた事です。その男の人はコリント教会員ですが、彼の罪を知りながら、コリント教会の人々は見てみぬ振りをしていました。（パウロは女の人については言っていないので、彼女は異教徒であったと思われます）。パウロは、コリント教会の人々が、「自分たちが一番であると高ぶって、分裂分派をつくって争っていて、目の前にある大きな罪を放置している」ことを憤り、「罪を犯している者が教会から除き去られることを思って悲しむべきではないか」と言っています。

ここで知っておきたい大切なことは、信仰は議論ではなく、実践であるということです。信仰を論じている間は、ただ頭だけの知識で終わってしまいます。私たちはキリスト教を信じたのではなく、イエス・キリストを個人的に自分の救主として信じました。イエス様を信じている者は、理屈ぬきに、聖書の御言葉の一つ一つを実践して行きます。私事ですが、信仰は実践であるという事を試されるのが、毎月の上野公園ホームレス伝道です。ホームレスの人々の前に立つ時、「わたしが空腹の時に食べさせてくれたか、渇いていた時に飲ませてくれたか・・・わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者の一人にしたのは、すなわち、わたしにしたのである。あなたはどうか・・」（マタイ25：31－46）というイエス様の御声が心に響きます。イエス様は、路上生活の人々も分け隔てせず、彼らのために十字架の上で死なれました。それ故に、私も全力でイエス様の愛をメッセージで伝え、おにぎり、お米、生活用品、献金を惜しむことなく届けたいという迫りを与えられ、「イエス様、もっと愛を実践させて下さい」と祈りを新たにさせられます。熊谷の教会が、月に一度、皆さんの祈りと奉仕と捧げ物によって、６年以上も継続してホームレス伝道に用いられていることを感謝します。

パウロは、3－5節において、コリント教会は罪を抱え込んだままでいるが、罪は処置しなければならない、ということを明確に告げます。罪を犯している者を「サタンに引き渡してしまった」（５節）と言っています。この世はサタンに属しているので、サタンに引き渡したとは、この世へ送り返したということです。具体的には「教会から追放する、破門する」という事です。これは「悔改めるように」促しているのに、それを拒んで罪の生活をしている者への処置です（戒規といいます）。破門は具体的には、⑴教会の集会に出られない、⑵兄弟姉妹との交わりを絶たれるという重い処分です。しかし、この箇所を注意深く読んで見ますと、この処置は単なる断罪ではないということが分かります。破門によって、自分の罪の重さを自覚し、最終的には悔改めて、主の救いに与るように、という意味が込められているからです。

アメリカ・ホーソンの「緋文字The Scarlet letter」（1850年）という小説があります。１７世紀半ば、ボストンで一人の女性が、夫が長年外国に行っている間に、他人の子どもを産んだが、相手の名前をどうしても言わない。彼女は、胸に英語の姦淫（adultery）という言葉の頭文字Ａを緋色で刺繍した洋服を着せられます。彼女が出歩くと、皆がその緋文字を見ては、「あのふしだらな女が通る」と言って白い目で見ます。彼女は後ろ指を指されながらも、悔改めて、毅然として子どもと共に生きます。７年の歳月が流れ、人々は彼女のつけているＡは姦淫を意味する言葉ではなく、天使(Angel)を意味する言葉の頭文字であると思うようになります。遂に彼女の相手である若い牧師が、罪を公衆の面前で告白し、その場で召されて行きます。彼女は、罪を通して得た幸福に照らされつつ生涯を送ります。５節に「その霊が主のさばきの日に救われるように」とあります。「緋文字」は小説ですが、清教徒時代のアメリカ社会の実相を映し出しています。罪を犯した女性が破門されましたが、彼女が立ち直って恵みの生涯を送りました。この事実は、罪によって破門という厳しい処置を受けたにも関わらず、その罪を悲しみ、罪からの解放を願って悔改める者に、キリストが赦しとやり直しの人生を与えて下さることを物語っています。

詩篇143篇にダビデが歌っていました、「あなたはわが神です。恵み深い御霊（いつくし深い霊）をもって、わたしを平らかな道に導いて下さい」（１０節）。聖歌418を歌い、悔改めて罪を赦され、十字架を見上げて生きる喜びで心を満たしていただきましょう。

2、キリストの十字架の救いを、しっかり信じて生きて行こう。5：6－8

ゆえに、私たちは、古いパン種や、また悪意と邪悪とのパン種を用いずに、パン種の入っていない純粋で真実なパンをもって、祭をしようではないか。（８節）

６－８節で、パウロはコリント教会の人々に訴えます。パンをつくる時に、粉の中にパン種を入れるでしょう。そうすると粉全体がふくれて、パンができあがる。パン種は僅かであるが、しかし粉全体をふくらませる力をもっている。そこで、あなた方に言う、「古いパン種を取り除け」。古いパン種とは罪、罪人、神の教えに背く悪い事、不信仰、神への不従順を表しています。パウロは、「あなた方の心の中の罪、不信仰を取り除きなさい。教会の中に罪が侵入しないようにしなさい」。こんな小さな事がと思う事が、全体を腐敗に至らせるから、罪をキッパリと処分しなさいと教えています。

パン種で思い起すのは過越の出来事です。今から３５００年前、エジプトで奴隷生活をしていたイスラエル人（ユダヤ人）が、エジプトを出て先祖たちの住んでいたカナンの地に帰ることになりました。イスラエル人がカナンの地に帰るのをなかなか許可しなかったパロ王に、神の審きが下ります。エジプトの国に死の使いが送られ、人間の長男、動物の中で最初に生まれたオスは全部殺されます。しかしイスラエルの人々は子羊を殺して、その血を家の玄関の柱と鴨居に塗って、その血の徴を見て死の使いはイスラエル人の家を過ぎ越して行きます。イスラエル人は大急ぎでパンを焼き、エジプト脱出の支度をしますが、時間がないのでパン種を入れないパンをつくります。そして、イスラエル人はモーセに率いられてエジプトを脱出して、カナンの地へと戻って行きます（出エジプト１１－１２章）。キリストが現れた時、バプテスマのヨハネは「見よ、世の罪を取り除く神の子羊」（ヨハネ1：29）という紹介をしています。その紹介の通り、キリストは人の罪の身代りになり、十字架で血を流して死んで下さいました。

イスラエル人の玄関に塗られた子羊の血を見て、死の使いはその家を過ぎ越して行きました。私たちがキリストを信じると聖霊の証印が心に押されます。その証印を見て、神様は私たちを神の子として受け入れて下さいます。キリストを信じた結果、⑴罪が赦され、きよい者になりました（Ⅰヨハネ1：7）。⑵永遠の滅びではなく、永遠の命が与えられました（ヨハネ3：16）。⑶神の子になり、聖霊によって祈りが与えられています（ロマ8：14－16）。「わたしたちの過越の子羊であるキリストは、すでに屠られたのだ」（７節）という言葉のとおり、私たちは十字架のキリストを信じて、間違いなく神の子となり、クリスチャンになっています。クリスチャンになっていることを感謝しながら、「古いパン種である罪を自分の心から取り除き、キリストを信じる者の集まりである教会の中に罪の侵入を許さず、キリストを土台として、純粋で真実な交わりの中に、私たちを成長させて下さい」という決断の祈りを捧げて前進いたしましょう。

「パン種の入っていない純粋で真実なパンをもって」（8節）という言葉があります。私たち自身の心と生活の中から、古いパン種を取り除いて行くように祈って下さい。また教会がキリストのきよい恵みの群れとして成長して行くように祈って下さい。神の前に裏表のない、本音建前の使い分けをしないで、キリスト中心になって生きて行くことが大切です。信仰の先祖であるアブラハムを思い出します。彼は７５歳の時に、主の召しを受けて、故郷を出て、遠い外国へ移住するために旅に出ます。様々な苦労を重ねて２４年目に、再び神の御言葉が彼に臨みます。「あなたはわたしの前に歩み、全き者であれ」（創世記17：1）。２４年間従い続けてきていますが、なお神の前にへりくだって、「全き者であるように」と命じられています。「全き者」とは、いっさいの偶像礼拝を捨て、異なる神々への信頼を捨て去ることを意味します（申命記18：9－14）。油断しないで下さい。教会にも偶像礼拝が忍び込もうとしています。最近読んだキリスト教葬儀の本の中に、焼香をしてもいいようなことが記されていました。しかし、焼香には死者を礼拝する意味があります。そこでクリスチャンは焼香をせず、故人の霊を神に委ね、残された遺族のために祈っています。その大事なところを崩して行けば、神礼拝も偶像礼拝もゴチャマゼになってしまいます。そうした妥協的な時代に生きている者として、純粋で真実な信仰を保ち、神の前に全き者であるように祈って下さい。

「祭をしようではないか」（８節）とあります。ユダヤ人には祭をする時が決まっていました。クリスチャンはどうでしょうか・・・。クリスチャンは生涯が祭です。何故ならキリストはすでに十字架によって、私たちの罪を赦し、天国の命を与えて下さったからです。キリストの救いを受けた者は、「主にあって喜びなさい、喜びなさい」（ピリピ4：4）という気持で喜び一杯になります。ある伝統的な教会では、牧師が笑わせるような話をしてはならない、信徒は説教中に笑ってはいけない、讃美の時に手をあげ、手拍子などはもってのほかであるというふうになっていて、教会はよく言えば厳粛ですが、実際はお通夜のようです。礼拝はお通夜ではなく、救われたことを喜び、イエス様を讃える霊の祭です。小さい頃、私は祭が好きで、秋になると神輿を担いで廻りました。担ぐのが面白かったのですが、休憩時間に、いろいろな食べ物がでるのが楽しみでした。７人兄弟で、戦後の貧しい時でしたので、食べ物をもらえるということも祭が好きになった理由かも知れません。しかし高校生の時に救われ、神社の祭はやめました。半世紀前の教会では、讃美伴奏はオルガンだけで、それに合わせて聖歌を歌いつつ、教会の人々が手拍子を打って喜びを表し、時には涙を流し、腹の底から声を出して歌っていました。みんなが救われたことを感謝し、霊の祭を捧げていた姿を思い出します。今はオルガン、ピアノ、ドラム、ベースギター、タンバリンなどがあり、音響も備わっています。大いに讃美を捧げましょう。毎週毎週霊の祭である礼拝を喜び、感謝し、キリストに縋り、キリストの御名によって祈り、キリストの恵みを讃美して行きましょう。讃美は力です。アメリカ・キング牧師（1928－63）は黒人として差別を受けますが、キリストの愛に立ち、白人の不当な差別に対して非暴力で戦い、黒人に対する不当な差別をやめさせて行く働きをしました。３９歳の時に、彼は暗殺されますが、その臨終の床で、聖歌５８１「慕いまつる主なるイエスよ」という讃美を口ずさみつつ、天に召されて行きます。キング牧師は人種差別という大きな罪を放置せず、そのために戦い、最後に讃美をもって天に帰って行きました。彼は人種差別者から暴力で脅され、家には爆弾を仕掛けられるという苦難の日をおくりました。しかし、キリストを信じる純粋な心で神と人に仕え、アメリカ社会にキリストの恵みを人種差別撤廃という形で表すために用いられたのです。

まとめ

1、４－５節、高ぶりを捨て、争い合うことをやめよう。信仰は議論ではなく実践であることを憶え、聖書に従う生活を捧げて行こう。キリストの十字架の恵みに感謝し、キリストを見上げて行こう。

2、８節、古いパン種である罪を除き去って行こう。キリストを信じて、罪が赦され、神の子になり、聖霊によって祈りが与えられていることを感謝しよう。純粋で真実な心をもってキリストに縋ろう。霊の祭である礼拝をささげ、讃美の声を高らかに上げて行こう。

祈　り

天地の主である神様、キリストの救いによって神の子にされていることを感謝します。古いパン種である罪を憎み、罪から離れ、きよい信仰の道を歩ませて下さい。聖霊の助けによって、聖書の御言葉を一つ一つ実践して行くように導いて下さい。今週は特に主の救いを喜び、讃美で心を満たして下さい。本日夕から火曜日まで軽井沢バイブルキャンプがあります。参加する者に恵みを与え、留守を守る者に豊かな祝福を与えて下さい。病気の方々を癒し、問題、課題を抱えている方々に万事を益とする恵みを与えて下さい。イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献コリント注解―榊原、バークレー、フランシスコ会、佐藤、西川、竹森、LAB,　文語略解。