人知を越えたキリストの平安　ピリピ4：4－7　　　　　　　　　主の2005

人知を越えたキリストの平安　ピリピ4：4－7　　　　　　　　　主の2005.8.28礼拝

こんな話を聞いたことがあります。京都のあるおばあさんが、天気になると泣く。雨が降っても泣く。「おばあちゃん、何でそんなに泣くのですか」。「二人の娘が嫁いで行きました。一人は下駄屋、一人は傘屋です。天気になると、傘が売れないだろうと思って、傘屋に嫁いだ娘が不憫です。雨が降れば、下駄が売れないだろうと思って、下駄屋に嫁いだ娘が不憫です」。ある人が「違いますよ。天気になれば下駄が売れるから、下駄屋に嫁いだ娘さんは幸せです。雨が降れば、傘が売れるから、傘屋に嫁いだ娘さんは幸せですよ」と言った。それを聞いたおばあさんは、それから毎日ニコニコして暮らすようになったとの事です。

本日はピリピ4：4－7です。６節に「何事も思い煩ってはならない」とあります。私たちの人生には多くの心配事や苦労が付きまといます。京都のおばあちゃんのように、考え方を変えることによって、心配事から解放される場合もあります。しかし、物事を積極的に、楽天的に考えても、それだけでは解消しない心配事に悩まされる時もあります。それに対し、４節「主にあっていつも喜びなさい」、６節には「感謝をもって祈りと願いとをささげなさい」との勧めがあります。

今朝、皆さんは平安でしょうか・・・。クリスチャンであるから基本的には平安でしょう。しかし、皆さんの中には、心配事や重荷がある方もいる。信仰の反対を受けている方もいる。健康の不安がある方もいる。家族に病気の者がいる等々、心配事を抱えている方々がいるでしょう。或いは恵まれ、平安に満ちている方々も多くいると思います。心配事のある人も、そうでない人も、全ての人が、聖書を通して、人知をはるかに越えたキリスの平安に満たされ、信仰の道を進んで行くように、と祈って下さい。聖書朗読の詩篇２３篇で、ダビデは「たとい死の陰の谷を歩むとも災いを恐れません。あなたがわたしと共におられるからです」（４節）と歌っています。主は私たちと共にいて下さいます。死を打ち滅ぼして甦ったイエス様は、私たちと共にいて下さるインマヌエルの主（マタイ１：23、28：20））であることを信じ、活きている主に縋って行きましょう。祈って、共に新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

1、キリストに結びついて行けば、人生は明るく導かれる。4：4－5

2、キリストに結びつき、神様の平安に満ちて生きて行こう。4：6－7

資料問題

４節、「主にあって」は別訳「主に結びついている者として」。「喜び」はピリピの手紙の特徴である。1：2,18,25、2：17,18,29、3：1、4：1,4,10に出ている。５節、「寛容」は他人の自分に対する悪い態度、他人より受ける損害等に対して、これを忍耐して柔和なる態度をもって接する事。「主は近い」は当時のクリスチャンの合言葉。Ⅰコリント１６：２２マラナ・タ（われらの主よ、来たりませ）はそのアラム語。７節、「神の平安」は、神の下さる平安（ヨハネ12：27）である。これは神による心の平安であり、信頼をもって祈ったことによって与えられたものであり、また喜びをもたらすものである。「キリスト・イエスにあって」は別訳「キリスト・イエスに結びついている者として」。

1、キリストに結びついて行けば、人生は明るく導かれる。4：4－5

あなた方は、主にあっていつも喜びなさい。繰り返して言うが、喜びなさい。あなた方の寛容を、みんなの人に示しなさい。主は近い。（４－５節）

一喜一憂と言う言葉がありますが、私たちは自分自身のこと、自分自身の身辺に起きる出来事によって、喜んだり、心配したりします。例えば、美味しいものを食べて喜ぶ、良い仕事を得て喜ぶ、給料が上がって喜ぶということがあります。

本題から外れて個人的な事ですが、孫の愛が３月に両耳の滲出性中耳炎と診断され、長期の治療になるということでしたが、先週、愛より「耳の水がなくなったよ。もう病院に行かなくていいんだって」という喜びの電話があり、イエス様の恵みと癒しに感謝し、また皆さんのお祈りに感謝します。

喜びの反対のほうですが、健康を損ねたり、給料が下がったりすると、気持が沈み、落ち込んでしまいます。そんな時は素直に喜べないと思います。しかし、自分にとっては喜べない状況であったとしても、４節で「いつも喜びなさい」と言われています。ですから、この喜びは、周りのことや、自分の気持などに左右されない、自分の内から湧き上がってくるまことの喜びを指しています。この手紙を記したパウロは信仰の迫害を受け、ローマの獄中に捕らわれていましたが、その中でこの手紙を書き、繰り返し「喜ぼう」ということを言っています（ピリピの手紙に何回あるか数えて下さい）。

自分の中から湧き上がってくる喜びという事ですが、パウロは主にあって喜びを得ることが出来ると言っています。主とはキリストです。キリストは３３年半の生涯を通して、人生のあらゆる苦しみを体験されたお方です。キリストは、人が神に背く罪のために苦しみ、最後には死んで滅んで行くことを知っておられました。そこで、罪のない清い命を十字架の上にささげ、私たちの罪の身代りになって死んで下さいました。けれども三日後に死を打ち破って甦り、いま活きている救主です。私たちはキリストを信じて罪を赦され、永遠の命を与えられました。この活きているキリストを心に迎えて、「私は神の子になっている。イエス様によって愛されている」という喜びが与えられています。

ふつう私たちの喜びは、自分の願いが叶った時の喜びが多いようです。しかし自分中心に考えると落とし穴があります。貧しい者がお金を得ることは喜びです。しかし、金を愛するようになって人への愛を失うという問題が起るかもしれません。病気がよくなることは喜びです。しかし、やがて私たちは肉体の死を迎えます。自分中心の喜びは果敢ないものです。何故なら人間の気持は変わり、周りの状況は変わって行くので、喜びが続かないのです。しかし、聖書は、イエス・キリストはきのうも、きょうも、永遠までも変わらない、活きている愛の主であることを告げています（ヘブル１３：８参照）。キリストを心に迎えるならば、キリストが変わることのない愛をもって、私たちの中から、内から助けてくれますので、私たちは変わり行く人の気持や周りのことに左右されなくなります。今は悪い状況であっても、善にして善をなされるキリストが、私たちを導いて下さることを信じ、「主にあっていつも喜びなさい」という御言葉どおりに、何があってもへこたれず、心の内にいるキリストによって喜びある日々を前進して行くことができます。

５節、「寛容を示しなさい」とは、広い心、柔和な心を持てという事です。「主は近い」とは、当時のクリスチャンの合い言葉で（Ⅰコリ１６２１参照）、キリストが間もなく再臨され、全てを審かれる時が近づいている。このキリストの前に出ることを思い、寛容な思いをもって生活せよという勧めです。

最近、隣家に向って大音量で一日中音楽を流し、フライパンを叩き、大声で悪口を言って隣人を苦しめるという事件がありました。私の学んだカリフォルニア神学大学院日本校は牛込キリスト教会の中に教室があります。教会は新宿区の住宅街にあります。１０年程前に教会の斜め前にN氏が越して来て、教会に嫌がらせをするようになった。教会に来る人を怒鳴りつけたり、車を見ると、違反していないのに１１０番で警察を呼ぶ。夏季キャンプのため教会を留守にすると「火事になったらどうするのか」と叫ぶ。教会だけではなく、近所の工事現場に出かけて文句をつけたりしていた。自分の屋根の上に角材やベニヤ板を大量に置き、夜にそれが風で滑り落ちて教会の壁を傷つけた。昼間であれば教会に出入りする人が怪我をするかも知れないので、警察に通報し、警察が来たが居留守を使って出て来ない。教会側では全てを神の御手に委ねていたが、牧師夫人がN氏の家の前を通り過ぎようとした時に、N氏がわざと角材を落とした。それが繰り返されたので、警察の生活安全課に相談をしたら、警部補がミッションスクール出身で、よい対応をしてくれて、少しおとなしくなった。１年前にN氏の娘さんのオートバイが放火され、隣の家と教会の消火器で消し止めたが、ポンプ車が１０台も来る大騒ぎになった。「教会から火が出たらどうする」と言っていた本人の家で、放火とはいえ、火を出し、しかも教会の消火器で消してもらったので、牧師を見るとビクビクするようになった。それからも小規模な嫌がらせがあったが、半年前にクモ膜下出血で救急車で運ばれ、一命を取り留めたが、それを境にピッタリ嫌がらせはなくなった。キリストに贖われた者として、寛容をもって対処した時に、活きておられるキリストが解決を与えて下さったのです。

2、キリストに結びつき、神様の平安に満ちて生きて行こう。4：6－7

何事も思い煩ってはならない。ただ、事ごとに、感謝をもって祈りと願いとをささげ、あなた方の求めるところを神に申し上げるがよい。そうすれば、人知ではとうてい測り知ることのできない神の平安が、あなた方の心と思いとを、キリスト・イエスにあって守るであろう。（６－７節）

６節の始めに「思い煩うな」との勧めがあります。これは仕事のこと、学びのこと、或いは将来のことを考えなくても良いという意味ではありません。私たちは、この地上で暮らしている限り、生活の事を考えるのは当然です。しかし、生活の事を第一に考えて行くと、心配になり、思い煩うようになります。思い煩いは、神様を忘れて、この世の事をあれこれ考えすぎて、不安で心が一杯になる状態です。皆さんはいかがでしょうか・・・。

思い煩わないためにはどうしたら良いのでしょうか。この６－７節に、パウロは、聖霊に導かれて、思い煩いの対処法について述べています。それを学ぶ前に、イエス様がおっしゃったことを思い出してみましょう。イエス様は、「衣食住のことで心配するな、思い煩うな」と言われました。思い煩わないで生きるために、「まず神の国とその義とを求めなさい」と言われ、天地万物を創造された神への信仰を第一にして行くことを教えてくれました。多くの人は生活が安定したら、いろいろな問題が片付いたら神様を求めようと考えます。生活が安定し、問題が解決することをしているうちに一生は終わってしまいます。聖書は先ず神を信じる事が先決であると教えています。なぜなら神は万事を益として下さるお方だからです。イエス様は「明日のことを思い煩うな」とも言われ、今日という一日を一生懸命に生きて、明日のことは神様に任せて行きなさいと言われました（マタイ6：25－34）。そのためにイエス様は朝ごとに祈り、安息日に皆と一緒に礼拝をささげ、いつも神様を一番にして生活をなさっていました。

本日の聖書に戻ります。パウロの思い煩いに対する対処法は祈りです。祈りを通して平安が与えられます。祈りについて三つのことを申し上げます。

第一に、「事ごとに（あらゆる場合に）、神に祈れ」と言われています。私たちは、「事ごとに」とあるように、神様に対して包み隠さずに何でも祈るということが大切です。また良い時も悪い時も「あらゆる場合に」祈りをささげることが必要です。孫の慧が、言葉が充分にしゃべれないのに、テーブルに頭をぶつければ、「痛くないようにお祈りして」と意思表示をします。蚊に刺されると「痒いからお祈りして」と訴えます。食べる時には、手を組んで、目を閉じて「むにゃむにゃアーメン」と祈ります。小さい子どもが親に何でも訴えて行くように、大きいことであろうと、蚊に刺されたような事柄でも、私たちは事ごとに、そしてあらゆる場合に父なる神に祈って行くことが大切です。

第二に、「祈りと願いと求める事（願い事）」とありますが、私たちの全ての思いを、神様にぶつけて祈ることが祈りです。神様に全ての思いを打ち明けて祈るために、まず私たちは悔改めてから祈るべきです。聖霊は、罪と義とさばきにとについて、世の人の目を開きますが（ヨハネ16：8－11）、私たちの心の中にも働いて下さいます。聖霊は、行動において、言葉において、心の中において、過ちを犯し、罪を犯している私たちを悔改めに導きます。悔改めることが祈りの出発になります。悔改めて、罪という心の曇りを除かれて、心を主に向けて全てをぶつけて祈り、願って行く時に、祈りが聴かれて行くという確信を得ることができます。

第三に、「感謝を持って祈る」ことです。祈りという音楽を奏でるために、感謝という伴奏が必要です。願い事を言う前に、まず感謝をささげて下さい。「あれも頼みます、これもお願いします」と、沢山の願い事があります。それを早く神様に言いたいという思いになりますが、その前に忘れずに感謝をささげることは絶対に必要です。感謝をささげてからお祈りをすると、心が恵まれます。

このようにして祈る時に、祈りが聴かれます。ここで誤解してならないことは、祈りは自分の願望が聴かれるということではないという事です。真の祈りは、私たちの願望よりも、神様の御心が示され、それが私たちにとって最もよい答であると信じ、受け入れることです。ある宗教では、ご本尊様は幸福製造機である、お題目を唱えれば、願いが叶うと言います。その信者が「信心のお陰で、商売は繁盛し、家は建つし、私は愛人を囲うほどになりました」と得意気に言ったということです。商売が繁盛しても、不倫という罪を犯している。罪の結果は滅びです。しかし、自分の願いが叶うことが、信心であるという間違った考えに洗脳されているので、罪に気づかないで、滅びの道へと進んでいるのです。

パウロは、祈りの答は人知をはるかに越えた神の平安が与えられること、私たちの霊がキリストによって守られることであると述べています。具体的に祈り、具体的に答が与えられますが、何よりも祈りによって平安が与えられると言っています。私が高校で洗礼を受けてからの経験ですが、友人が問題に巻き込まれ、祈る事になった。どうなるのか分かりませんでしたが、とにかく祈りました。しばらく祈っていると、ふっと私の心が軽くなり、もう祈らなくても良いというふうに感じ、祈りをやめました。すると友人から「お祈りありがとう。問題は解決した」という連絡が入りました。そんな体験をしましたが、だいぶ後に、このピリピ４：６－７の御言葉を知り、祈っていた時に心が軽くなったのは、神の平安が与えられたからであるいうことを教えられました。

ところで、あなたは平安でしょうか・・・。どんなことでも祈りましょう。イエス様の「何事でもわたしの名によって願うならば、わたしはそれを叶えてあげよう」（ヨハネ14：14）という約束を信じ、祈って下さい。素晴らしい答を神様は下さいます。

パーカーさんという方がロスアンジェル市で雑役係りとして働いていた。病気の妻を故郷に置いて働いていたが、「妻死す」という電報を受け取り、途方にくれてしまった。彼は、大学時代に面度をみてあげたブラウンを思い出した。ブラウンは事業に成功し、銀行頭取になっていた。粗末な衣服に身を包んだパーカーは思い切って、頭取室に行き、ブラウンに融資をお願いした。ブラウンは「１５０ドルというが、あなたは７０歳で、収入は２５ドルです。奥さんの葬式の費用などを考えると返済は無理でしょう。これでは駄目です。ところであなたはクリスチャンでしょう。どうして信じているイエス様に助けてもらわないのですか」と言って席を立ってしまった。パ－カーは寒い公園のベンチで、なぜ悩める時のいと近き助けであるイエス様に祈らなかったのだろうかと思い、「祈る」という気持を与えられ、近くの教会に入り、祈った。「主よ、いま、私は苦しみの中にあります。どうか天の窓を開いて、私に祝福を注いで下さい」。そして過去の出来事、現在の窮状をイエス様に打ち明け、全てを申し上げて祈った。祈り終えて、教会の外に出ると「ちょっとお待ちください」と呼び止める人がいた。その人は手帳を取り出し、何かを書いてから近寄り「あなたはパーカーさんですね。どうかこれを受け取って下さい」。それは小切手で、１万ドルの金額であった。彼は「こんな大金を受け取れない」と言った。男が答えた、「あなたは以前カンザスの刑務所でお話をしたことがあるでしょう」。「はい、何回も行きました」。男は「そこで私はあなたから天国の財産をいただいたのです」と言った。「私はある日、二人の看守に付き添われて、あなたの話を聴きました。あなたは、『わたしの宮に食物のあるように、十分の一全部をわたしの倉に携えてきなさい。これをもってわたしを試み、わたしが天の窓を開いて、溢れる恵みをあなた方に注ぐかどうかを試してみよ』というマラキ3：10の御言葉を語って下さいました。私は手のつけられない凶悪犯でしたが、その時に神様の恵みを受け、やがて釈放されました。私は囚人として刑務所に入りましたが、あなたの聖書の話を通して神の子として出所したのです。そして私は御言葉を実行し、約束の御言葉の通りに祝福を受けました」。そう言って男はパーカーを抱きしめ、「神様が祝福を注ぐと約束したことは必ずそうなるんですね」とつぶやいた。これは人知をはるかに越えた神様の助けです。私たちも主イエス様の御名によって祈り、神様に縋って行きましょう。必ず神様の助けが与えられます。

まとめ

1、４－５節、キリストを信じて、キリストに結びついて行けば、人生は明るくなります。

2、6－７節、キリストに結びついて、神様の下さる平安に満ちて進んで行きましょう。

祈　り

天地の主である神様、救主イエス・キリストの十字架の救いに感謝します。神の子にされていることを感謝し、喜びをもって進んで行きますので、導いて下さい。何があっても、まず感謝し、全てを神様に申し上げ、神様の平安を受けて、希望の日々を前進させて下さい。今週も、聖霊によって祈り、神様に従って行きます。喜びと平安を与えて下さるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ピリピ注解―黒崎、フランシスコ会、バークレー、文語略解、LAB。「涙のち晴れ・マナブックス」、「御翼・佐藤順」