苦しみを越えてーキリストを通して守られ、恵まれる

苦しみを越えてーキリストを通して守られ、恵まれる　ペテロ第一5：6－11　　　主の2005.9.4礼拝

杞憂という言葉があります。昔、中国・杞の国の人々が、天が落ちてくるのではないかと心配したそうです。その事から、まだ起りもしないことをあれこれ心配することを杞憂というようになったと言われています。単なる心配事で終わればいいのですが、日本では、関西から関東にかけて周期的に大地震があるという学者の研究がニュースで報じられています。そのために、「非常用食料品」の売り上げが伸びています。また、少子高齢化が進み、このままでは日本という国を維持することが困難になると言われています。個人では病気、家族のこと、老後の先行き不安などで悩んでいる方々もいます。

　本日の聖書箇所はペテロ第一5：6－11です。この手紙を記したペテロは、「クリスチャンであっ

ても、心配なことはたくさんあるだろう。心配に取り付かれて、それが思い煩いにならないようにしよう。思い煩わないで神様に信頼して行こう（７節）。思い煩うとサタンに狙われる。信仰に固く立って行けば（8－9節）、神様があなた方を癒し、強め、力づけ、守って下さる（10節）」という確信に満ちた言葉を告げています。自然災害などの頻発や、また個人的に様々な心配事を背負っているなど、不安をもたらすものは沢山あります。聖書朗読の箇所、詩篇４６篇で「神はわれらの避け所、また力である。悩めるときのいと近き助けである」という、神様への信頼がうたわれていました。私たちを愛して下さっている神様の御言葉に耳を傾けましょう。神様の愛を表す救主として、十字架の上に命を捧げて、私たちを罪から救い出し、3日後に目に甦って、今も活きておられるキリストへの信仰を強めましょう。キリストを通して、あふるる恵みを下さる神様に信頼し、祈って、新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

1、思い煩いを、いっさい神様にゆだねよう。5：6－9

2、キリストを通して、神様が守り、導いて下さる。5：10－11

資料問題

6節「神の力強い御手」、旧約聖書によく出てくる表現であるが、特にエジプトより導き出したもう神を指す場合に多く用いられる。7節「ゆだねよ」、投げかけよという語。迫害やその他いっさいの思い煩いを神様にゆだねよ（神様になげかけよ）。8節「身を慎み」、情欲、感情、心配、苦痛のために盲目とならず常に心の安定を保つ事。「食いつくす」、壊滅的な破滅に陥れる事。10節「いやし」、完備して欠点のない事にも用いる。「強め」、動揺しないこと。「力づけ」、エネルギーがいっぱいなこと。「不動のものとして下さる」、地固めをする事。

＊この箇所を通して、神様は力の神（6節）である事、また、恵みの神として私たちをキリストによって召し、永遠の栄光を与えて下さる神様‹10節）である事が示されている。この神様に信頼して行くことが信仰の中心である。

1、思い煩いを、いっさい神様にゆだねよう。5：6－9

神はあなた方をかえりみていて下さるのであるから、自分の思い煩いを、いっさい神にゆだねるがよい（7節）

人間には考える力が与えられています。その考える力をプラスに用いて、物事を明るく楽天的に考えて行くならば問題はありません。しかし、物事を否定的に、暗く、マイナス面ばかりを考えると、それが思い煩いになります。前にも引き合いに出しましたが、あるご婦人が４０年の間、自分はガンで死ぬのではないかと心配していたそうです。彼女が実際に死んだのは７３歳で、死因は肺炎でした。彼女は４０年間というもの、起りもしないことのために心労し続け、親しい友人や家族の者たちに、喜びではなく、陰気な思いを与えてきました。これは人生の悲劇そのものです。思い煩わないために、７節「自分の思い煩いを、いっさい神にゆだねるがよい」と言われています。６節には「神の力強い御手のもとに、低い者、謙遜な者になりなさい」とあります。思い煩いという言葉は、心が分割されることを意味しています。神様を全面的に信じればよいのに、神様に頼り、人にも頼るという中途半端な心の状態を表しています。思い煩わないために、三つの点を申し上げます。

第一に、６節、へりくだり、神の御手に縋ることです。昔、モーセに導かれ、イスラエル２００万の民が先祖達が住んでいた国に（今のイスラエル）帰るためにエジプトを脱出しました。人々が紅海の岸辺に着いた時、エジプトの軍隊が戦車に乗って追いかけて来たのです。前に進めば海、後ろにはエジプトの戦車隊が迫っている。モーセは神様に一晩中祈り続け、危機一髪の時に、神様は紅海（葦の海）を二つに裂いて、左右に高い水の壁をつくり、人々は水のない海の底を歩いて、向こう岸へと逃げる事ができました。後から追いかけて来たエジプトの戦車隊も、イスラエルの人々のように乾いた海の底を伝わって追いかけて来ましたが、イスラエルの人々が向こう岸に着いた途端に、水の壁が崩れて、もとの海になり、エジプトの戦車隊は溺れ死んでしまいます。神の力強い御手とは紅海の水を二つに裂いた神様の力を指しています（出エジプト１４章）。

第二に、７節、自分の思い煩いを、いっさい神にゆだねる時に、平静な心になります。イエス様は、「あすのことを思い煩うな」と言われました（マタイ6：25－34）。この箇所では、「神様があなた方を顧みていて下さる（心配りをしている）」と言われています。使徒パウロは、「神様独り子であるイエス・キリストが十字架に罪の身代りとなって命をささげ、人間を救う道を開かれた。神様は、独り子であるキリストを惜しまずに与えて下さった恵み深いお方でであり、御子のみならず、すべてのものを与えて下さる愛の神様である。キリストは死んだが、甦り、今は天にいて私たちのために祈っておられる」と述べています（ローマ8：31－34）。私たちのために祈っておられるキリストに縋りましょう。

第三に、８－９節、不信仰をもたらすサタンと戦うことです。サタンは偽り者であり、サタンの本質は偽りの父です（ヨハネ8：44）。サタンは「あなたの心配はなくならない」と言います。それは嘘です。キリストは「わたしの平安をあなた方に与える」と約束されました（ヨハネ14：1,27）。サタンは「お前は愛されていない。お前のことなど誰も見向きもしない」と言います。それは嘘です。「主キリストは私たちのために命を捨てて下さった。それによって私たちは愛ということを知った」（Ⅰヨハネ3：16）。これがキリストの愛のメッセージです。キリストは、私たちを愛するためにこの世に来られた救主です。キリストは、「君は愛されるため生まれた。その徴として、わたしは君のために十字架にかかったのだ。君の罪を赦し、君を惑わすサタンの力を十字架によって打ち砕き、君に自由を与えた。わたしは死を打ち破って甦った。わたしは君に永遠の命を与え、君を天国に連れて行く。わたしは君を永遠に愛している」と言われます。サタンは私たちの思いをキリストから逸らして、絶望に導こうとしています。まことの神様を知らず、キリストの救いを知らないまま、日本では年間に３万人以上の人が自殺をしています。私たちクリスチャンは声を大にして「重荷を負って下さるキリストがおられる」（マタイ11：28）ということを伝えて行く責任があります。

思い煩いを、いっさい神にゆだねることが、平安をもたらします。ひとりの女性が、４年半も精神科医にかかっていた。彼女は、自分はクリスチャンであると言っている。ハガイ牧師が彼女に聞くと「自分は若い時に罪を犯した」と言う。「それを主に告白しましたか」、「しました」、牧師は告げた、「ヨハネ第一の手紙1：9に『もし、私たちが自分の罪を告白するならば、神は真実で正しい方であるから、その罪を赦し、すべての不義から私たちをきよめて下さる』と約束されています。あなたが、心に不安を感じるのは、あなたがイエス様により頼んでいないからです。イエス様はあなたを赦して下さいましたが、あなたは、それを受け入れていません。あなたの悔改めとは不幸を嘆き悲しみ、自分を見つめて反省することだと思っています。あなたの考えも、悩みも、すべてをイエス様に渡して下さい。イエス様はあなたを受け入れて下さっています。もし心配事や悩みや思い煩いが心にあるならば、祈って、いっさいをイエス様に打ち明け、ゆだねて、任せてしまいましょう。私たちも７節の御言葉を心に刻んで、イエス様の御名によって、神様に祈って平安を得て行きましょう。

2、キリストを通して、神様が守り、支えて下さる。5：10－11

あなた方をキリストにある永遠の栄光に招き入れて下さったあふるる恵みの神は、しばらくの苦しみの後、あなた方をいやし、強め、力づけ、不動の者として下さるであろう。どうか、力が世々限りなく、神にあるように、アーメン。（１０－１１節）

最初、人間は苦しみ、悩みのない、死ぬことのない者として、エデンの園で生きていたのです。神様と親しく交わり、恵まれ満たされた生活を送っていました。しかし、その平和は人間が神に背くという罪によって破れ、不安、心配、争い、痛み、別れ、涙、死というものが入ってきて、私たちを苦しめています（創世記３章）。苦しみや怖れの中にある私たちに対し、１０節に、神様の愛が表されたことが告げられています。

第一に、神様が私たちを招いて下さったという愛の選びです。

シモン・ペテロは湖で魚を獲っていた時に、イエス様から「わたしに従って来なさい」という招きの声を聴いて、イエス様の弟子になりました（マタイ4：19）。マタイは事務所で税金の勘定をしていた時に、イエス様の招きを受けて、弟子になりました（マタイ9：9－13）。ザアカイはいちじく桑に登っていた時に、「ザアカイよ、急いで降りて来なさい」というイエス様の声に従い、自分の家でイエス様とを食事をしている時に、弟子になる決心をしました（ルカ19：1－10）。皆さんはいつ、どのようにイエス様を信じて神の子になったのでしょうか・・・。私は高校２年生の夏にクリスチャンの友人に誘われて、教会に行ったのが信仰の始まりでした。私の他にも何人もの友達が教会に行ったのですが、私だけが洗礼を受けて、今日まで信仰の道を歩ませてもらっています。家内は実の母の死を通して、小学校２年生の時にイエス様を信じ、今日まで信仰の道を歩み続けて来ました。私はイエス様を信じて神の子になるという恵みを受けて、洗礼を受けたのが１１月ですので、その時が巡ってくると、「私のためにイエス様が十字架にかかって下さり、私を神の子にして下さったことを感謝します」という気持を込めて感謝献金を捧げ、救いの恵みを確認し、忘れぬようにしています。

第二に、キリストにあるという恵みです。

聖書に「神を見た者はまだひとりもいない」と記されています。私たち中で、誰も神様を見た人はいないのです。しかし、「ただ父のふところにいる独り子なる神（イエス・キリスト）だけが、神をあらわしたのである」と言われています（ヨハネ1：18）。見えない神様を表すために、キリストは人間の姿をとって、この世界にやってこられました。私たちと同じように肉体をもち、様々な人生の苦しみを体験されながら、キリストは３３年半の間、人としてこの地上を歩んで下さいました。人として歩むと同時に、また神の愛、力、権威、義を表して下さいました。キリストは社会から爪弾きされ、差別されている人々を呼び集め、或いは足を運んで彼らに親しく神様の愛を伝えています（ルカ15；1,7：36－50、ヨハネ8；1－11、マルコ5：1－20）。嵐を静め（マルコ4：35－41）、中風の人を立ち上がらせ（マルコ2：1－12）、死人を甦らせて（ヨハネ１１章、ルカ7：11－17、8：49－56）神の力、権威を示しています。そして、人を罪から救い、神の前に義とし、正しい者とするために自らのきよい命を、私たちの罪の身代わりとして十字架に捧げて下さいました（ローマ5：8－11）。

私たちの信仰の中心はキリストです。信仰を養い、成長させるために、私たちはキリストの教会の一員になっています。私が百万遍でも繰り返し伝えていることは「教会を離れるな、一生涯キリストの教会につながっていなさい」という事です。どんなに立派なことを言っても、教会につながっていなければ、それはまやかしの信仰です。今朝も、こうして教会の礼拝の場に導かれていることを感謝しましょう。健康の問題、教会から遠く離れている、仕事などで今朝は礼拝の場に来ていませんが、教会につながっている方々の上にイエス様の祝福が与えられて行くように祈って下さい。また電話、メール、手紙などで恵みを伝えて下さい。現在、多くの方々が車で来ていますので、教会に来やすい様に、八月から新幹線下の駐車場を借りています。現在の駐車場５万４千円プラス５万９８５０円で毎月１１万３８５０円を支払って行きます。山屋さんの所は好意で日曜日にお借りしていますので、感謝を込めて使わせていただきましょう。将来の教会発展を祈り願い、会堂のために、駐車場のために、主の具体的な御心が示されるようにお祈り下さい。

第三に、しばらくの苦しみの後に、私たちを不動のものとして下さるという恵みです。

苦しみはしばらくの間はあるが、その苦しみを通して、いやされる（完全にする）とは回復されるという事です。それに加えて、強められ堅く立たせて下さる、力が与えられる（強くなる）、そして信仰を不動のものとして下さるという恵みが与えられます。

高校生ぐらいの時に「戦場にかける橋」という映画を見た記憶があります。この舞台になったクワイ河収容所で、日本軍の捕虜として過ごしたイギリス人アーネスト・ゴードンの『死の谷をすぎて』という体験記があります。彼は神様を信じていませんでした。ジフテリアに罹った時に、二人のクリスチャンが看護を申し出てくれて、彼の体を洗い、食べ物を分けてくれます。ゴードンは「どうして神は何もしないのだ。どうして沈黙したままなんだ・・」と言います。二人は答えた、「きっと何か、今もきっと何か・・・なさっているんです。でも今なさっておられることの全部が私たちには見えないんです。でもいつかはハッキリ見えてわかるようになるだろうと思います」。神を呪い、文句を言っていた無神論者ゴードンの心は、二人のクリスチャンの献身的な犠牲により変えられて行く。彼は健康を取り戻し、収容所の捕虜たちの聖書研究会に出るようになり、神様を信じるようになる。彼らが別の捕虜収容所に移動する時、傷口が化膿し、うじがわき、血や便が入り混じったままの日本の傷病兵達に出会う。ゴードンらは日本兵に歩み寄り、水を与え、傷口の膿を拭い、包帯をしてあげる。別の部隊のイギリス人将校が「そこにいるのは敵だぞ」と叫ぶ。ゴードンは「私の敵はどこにいるのか。日本人は敵ではなく、神が創られた隣人です」と答えます。18か月前だったら、彼は日本兵を殺していたであろう。でも信仰を得て変わったのです。彼は本の最後に言っています、「よきおとずれとは、人がその苦悩を神に背負ってもらえるということです。神はキリストを通して、重荷を背負っておられる・・・」・・・。神様はあふるる恵みを下さいます。それはキリストを通して与えられます。キリストは既に私たちの全ての重荷を背負って、十字架に上って下さいました。ゴードンは苦しみの中で信仰を得て、やがて敵兵を看護するという不動の信仰にまで成長していたのです。

皆さんの苦しみ、不安は何でしょうか・・・。神は愛をもって、私たちを招いておられます。キリストは私たちの罪を赦し、苦しみを取り去るために十字架にかかって下さった救主です。苦しみは「しばらく」です。苦しみ、不安を見るのではなく、あふるる恵みを下さる神様を見上げましょう。キリストを信じて神の子になっていることを感謝しましょう。「苦しんでいる者は祈れ。喜んでいる者はさんびせよ。病気の人は祈ってもらえ。主がその人を立ち上がらせる」とヤコブは言っています。祈りましょう。特に問題のために、病気のために祈りましょう。祈りを必要とする方々は前に出てきて、恵みの座で祈りましょう。

まとめ

1、７節、神様に信頼し、不信仰をもたらすサタンに誤魔化されずに、思い煩い、気にかかること、不安など、いっさいのことをイエス様に任せましょう。イエス様が全ての重荷を背負って、私たちを助け、導いて下さいます。

2、10－11節、神様が選んで下さったことを感謝し、キリストの体である教会にしっかり結びついて行きましょう。苦しみはしばらくです。神様はあふるる恵みを下さることを信じて、祈りましょう。

祈　り

天地の主である神様、イエス様を信じて神の子にされていることを感謝します。聖霊によって祈りながら、思い煩いではなく、喜びの日々を歩ませて下さい。実際に重荷を背負っている方々を支えて下さい。９月も多くの方々を救いに導いて下さい。病気の方々、家族に病気のある方々を支え、その病を癒して下さい。１２月にケイラー師を迎えての特別集会、そしてクリスマスがやってきます。教会のすべての歩みを祝福して導いて下さい。教会経済は現在まで満たされてきていることを感謝します。教会は八月から新幹線下の駐車場を借りています。そのことも含めて、教会経済が祝福され続けて行くようにお願いします。会堂の件、駐車場の件について、主の具体的な御心を示して下さい。私たちの救主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ペテロ注解―バークレー、黒崎、フランシスコ会、米田、LAB、文語略解。　「隠されたる神・山形謙二・キリスト新聞社」、「中学科説教集・村上伸・日キ教団」、「思い煩いからの解放・ハガイ・ことば社」