主は我らに将来と希望を与えて下さる

主は我らに将来と希望を与えて下さる　エレミヤ29：10－14　　　　主の2005.9.25礼拝

ダンテ（1265－1321）の「神曲：地獄篇第三歌」に、地獄の門に「一切の望みは捨てよ　汝ら　われをくぐる者」という銘文が掲げられています。ダンテは、一切の望みを絶たれてしまう所、それが地獄であると鋭く表現しています。日本では残念な事に年間３万人以上、１５分位の間に一人が自殺をします。その大きな原因は生きる希望を失ってしまったという事です。ところで、私にとって九月はイエス様を信じ、洗礼を受ける決意をした記念すべき月です。決意したのは高校２年生の時でしたが、洗礼によって自分の一生はイエス様によって導かれて行くという希望に満ちていました。それは聖霊が与えて下さったものですので、心にある希望はずっと存続しています。私の得た希望とは、「どんな事が起きても、『イエスは安きもて、こころ足らわせ、物事すべてを良きになしたもう　Jesus doeth all things well』とさんびにあるように、何があってもイエス様に縋り、イエス様に頼って行けば大丈夫」という単純なものです。聖書朗読の中に、「希望は失望に終わることがない」（ロマ5：5）と言われていたように、ここに至るまでイエス様に支えられ、導かれていることを感謝します。

本日はエレミヤ29：10－14です。１１節に、主は私たちに、「平安と共に将来を与え、希望を与える」と約束されています。サタンは主に逆らう者として、私たちに「一切の望みを捨てよ」と言います。主イエス様は私たちに「全てのことに希望を持ちなさい」と言われます。クリスチャンは希望の民です。イエス様を見上げて行きましょう。イエス様から希望を与えられ、祈って聖霊の力に満たされ、今週も希望に溢れる日々を前進して参りましょう。

内　容

1、主は我らに語りかけて下さる。29：10、11、１４（２回）

2、主は我らに将来と希望とを与えて下さる。29：11

3、主は我らの祈りを求めている、主に祈ろう。29：12－14

資料問題

エレミヤ書は四つの部分から成り立つ。第一は祖国ユダに関する預言（１－２５章）、第二はエレミヤの伝記（２６－４５章）、第三は異邦に関する審判預言（４６－５１章）、第四は歴史的事件の補遺（５２章）。エレミヤは紀元前７世紀の預言者。彼は、国家は各個人から構成されており、その各個人の決心と行動が国家の将来に影響を及ぼすので、ユダの民が悔改めて主に帰るようにと訴えている。しかし、人々は彼に聴かず、偽預言者の言説に惑わされている。その状況を見ながら、祖国滅亡の預言をし、それが的中したことを最も悲しんだのはエレミヤである。国は破れ、民はバビロン捕囚となった。人々が絶望の淵に沈んでいた時に、エレミヤは捕囚の民に祖国帰還の希望を告げている。本日の箇所で、捕囚の時は永遠に続かず、７０年後に祖国復帰が叶うので、それまでバビロンの地にあって生活して行くようにと、手紙を通して知らせている。エレミヤは、祖国が不信仰の故に滅亡することを預言するという苦しい使命を与えられ、悲しみをもって預言を伝えたので「泣き預言者」と呼ばれた。彼は２０歳頃に預言者の召命を受け、４０年に渡って預言者活動をした（BC６２６頃召命、587年頃頃死去）。

1、主は我らに語りかけて下さる。29：10,11,14

主はこう言われる（仰せられる）に（１０節）、主は言われる（御告げ）（１１節）、主は言われる（御告げ）（１４節）。

エレミヤは紀元前７―６世紀にかけて活動した預言者で、彼の４０年間の活動を記したエレミヤ書は５２章という長い書です。彼の時代、ユダの国は神を忘れ、不信仰な状態にあり、遂に紀元前５８６年、バビロンによって国は滅ぼされ、多くの人々はバビロンに捕虜として連れて行かれます。エレミヤは捕囚となった人々に手紙を送り、１０節、７０年という月日が満ちた時に、再び故郷に帰る日がやってくる。それまではバビロンの地で生活して行くようにと勧めています。後に彼の預言は成就し、ユダの人々は故郷に帰るようになります。そうした歴史的背景のもとにある箇所ですが、私たちに直接教えられることを、主のメッセージとして聴いて行きます。

今日の箇所の中に３回「主は言われる（主の御告げ）」という言葉があります。ほかの箇所にも何回も出ています。「主は言われる」という言葉こそが、私たちの信仰の原点です。神様は常に自分から言葉を発し、行動を起こされます。天地創造の時に、神様が「光あれ」（創世記1：3）と言われると、光が現れています。人間を創造する時「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を創ろう」（創世記1：26）と言われ、男と女とを創造されています。私たちの救いについては、「わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して下さって、わたしたちの罪のために贖いの供え物（宥めの供え物）として、御子をお遣わしになった。ここに愛がある」（Ⅰヨハネ4：10）と告げられています。これは、神様のほうから、罪に落ちている人間を救うために、独り子であるイエス・キリストを十字架につけて人間の罪の身代りとし、救いの道を開いて私たちを神の子にして下さったという恵みを言い表しています。「主は言われる」ということを三つの点から申し上げます。

第一に、「主は言われる」とは、「信仰は聞くことによるのであり、聞くことはキリストの言葉から来る」（ロマ10：17）ことを意味しています。

パウロは、最初は、クリスチャンを激しく迫害する者でした。彼はユダヤ教が絶対であると思っていたのに、ユダヤ教の中からキリストを信じるクリスチャンが多くなり苛立っていました。彼はクリスチャンを迫害し、キリストを信じることをやめさせようと必死でした。その彼にキリストが現れ、彼の名前を二度も呼び、ご自分が救主であることを彼の心に語りかけます。彼はキリストが言われることを聴いて、罪を悔改めて洗礼を受け、世界伝道のために献身して行きました（使徒２６章）。心を静めて、主の語りかけを聴くことが信仰の始まりです。

第二に、「主は言われる」とは、主の言葉を聴くことが最優先の事柄であることを意味しています。聖書が一冊の本に纏まる前は、主は直接に人に語りかけたことがあります。あるいはキリストと

共に暮した使徒達の教えが、主の教えとして重んじられていました。幸いなことに、現代は聖書６６巻に神の言葉が余すところなく記録されています。私たちは聖書を読むことによって、主の語りかけを聴くことができるのです。聖書が与えられたことによって、現代は全ての人々が聖書を通して主の語りかけを聴くことができる恵みを与えられています。そのために、聖書は１５００以上の言葉に翻訳されていて、私たちも日本語で自由に聖書を読んで、それぞれの心に主の語りかけを聴くことができます。一年３６５日、毎日聖書を読んで主の語りかけを聴くことが、恵まれる秘訣です。聖書を読んで難しいところがあり、意味が分からなくても構いません。日本には「読書百遍、意おのずから通ず」という言葉がありますが、分からないところは、そのままにして、とにかく読むことです。聖書を読み続けることによって、前に読んだ時は意味が分からなかった箇所が、今回はよく分かったという体験をすることができます。

第三に、「主は言われる」とは、教会全体で主の言葉のメッセージを聴くことが大切であることを意味しています。

集会出席は聖書のメッセージを通して、信仰が養われる大切な時です。

＊イエス様の一生は「主が言われる」ことを大切にする日々でした。イエス様は朝早く起きて、一年３６５日早天祈祷をし、父なる神様の言葉を聴くことを最優先し、祈っていました（マルコ1：35）。小さい時から安息日ごとに会堂に入り、会衆と共に主の言葉を聴き続けていました（ルカ4：16）。私たちもイエス様に倣って、聖書に親しみ、教会の集会を大切にして出席し、信仰生活に励んで行くように新しい気持をもって祈りましょう。

2、主は我らに将来と希望を与えて下さる。（１１節）

主は言われる、わたしがあなた方に対して抱いている計画はわたしが知っている。それは災いを与えようというのではなく、平安を与えようとするものであり、あなた方に将来を与え、希望を与えようとするものである。（１１節）

１１節は、直接にはユダの民に対する預言です。預言ということですが、預言の真の意味は、現代に対し、また将来に対する神様の教えです。同じ発音で予言があります。これはテレビの占い番組、超能力番組、星占い番組などの類、また手相、人相などによって未来を占うもので、偶像礼拝から出ています。偶像礼拝ということは、占いはサタンから出ているということです。ここでハッキリ知っておきたいことは、占いは罪であり、占い（まじない、魔術）を行う者は天国に入れないと明言されていることです（黙示録22：15）。クリスチャンは占いに捕らわれている人々が、占いから解放され、イエス様の救いの中に入って行くように祈って行くべき責任があります。

聖書には預言が記されています。旧約時代に、これから起るべきことを預言によって知らせることがありました（バビロンからユダの民の帰還、特に救主イエス・キリストの到来など）。新約聖書で、これから起るべき最大の預言はキリストの再臨です。聖書の預言は特定の個人に対するものではなく、教会全体に、与えられています。キリスト再臨の預言は、世界が終りに向って進んで行き、キリストが全てを支配する時が必ずやってくる。だから迫害が起きても、キリストの勝利を信じて、教会全体で励まし合い、支え合い、祈り合って信仰を守り通して行こうという、主からの励ましとして与えられています。１１節から三つのことを教えていただきましょう。

第一に、主は私たちに平安を与えると言われました。

個人的な事ですが、若いと思っていても、鏡を見れば私は間違いなく老人になっています。だが幸いなことに、昨日は、雨でしたが上野公園ホームレス伝道に行って来ました。疲れが残らずに、今朝この講壇に立てたことを感謝します。私の父は７2歳でガンになり、母は８２歳でガンになりました。そのDNAを受け継いで、自分もやがてガンになるに違いない・・・・もしそんな事ばかりを毎日考えているとしたら、不安になり、将来は暗く、憂鬱な希望のない人生になってしまいます。しかし、神は愛です。独り子であるイエス・キリストを犠牲にしてまで私たちを救って下さった神様は、御子キリストのみならず万物を賜らないことがあろうかという信仰によって、健康、経済など全てのことが守られるという平安が与えられます（ロマ8：31－39）。

第二に、主がご計画をもって私たちを導くと言われました。

主はどんなお方でしょうか・・・主は善にして善をなされるお方です（詩篇119：68）・・・主は善をなされる恵みの主です。「ざわわ、ざわわ」と繰り返す「サトウキビ畑の歌」があります。沖縄で戦死した父を偲ぶ歌で、沖縄出身で盲目のクリスチャン歌手新垣勉さんが歌っています。この方は生後間もなくの時に、助産婦の過ちで間違った目薬を注され失明します。彼の父はアメリカ兵士でしたが、母親と彼を置いたままアメリカへ帰ってしまいます。彼は父をずっと恨んでいましたが、音楽の先生に「君の声は日本人離れしていて素晴らしい。これは君の父親からのギフトだ」と言われ、初めて父親に感謝する心を与えられ、音楽大学に入って歌の素質を伸ばし、明るい信仰をもって、現在は福音歌手として、また一般社会でも声楽家として高い評価を受けています。新垣さんは長い忍耐の後に、主の計画を分からせてもらい、父に感謝し、助産婦に対する恨みが取り去られ、善にして善をなされる主によって、今や心の歌手として大きく用いられています。

第三に、主は私たちに将来を与え、希望を与えると言われました。

私たちは明日という将来のことを心配しがちです。明日も健康であろうか、仕事がうまく行くだろうか、受験生は希望の学校に入れるだろうかなどなど明日に対する不安を挙げればキリがありません。明日についてイエス様はなんとおっしゃっていますか。まことに簡単です、「明日のことを思い煩うな」です（マタイ6：34）。明日のことを幾ら心配しても、それで心配が消えることはありません。イエス様は、ご自分の生活を「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、わたしには安心して枕する所がない」（マタイ8：20）と言われるような不安定な伝道の旅をしていました。その時に、神様は多くの女性を用いて、彼女たちが献金し、旅を共にして、イエス様一行の食事、洗濯などを裏で支えるようにして下さいました（ルカ8；1－4）。３４年前、開拓伝道を始めて３年８か月目から全ての援助を返上し、自給伝道に踏み出しました。最初の数か月は、当時のお金で月２万円ぐらい足りない計算だったのですが、毎月不思議な助けがあって、自給伝道は支えられて行きました。今、考えますと親子四人の生活があったわけですから、自分もなかなか大胆であった、と思います。しかし、それは「あなた方に将来を与え、希望を与える」という主の約束の裏付けがあったからです。主は決して約束を違えない真実の主ですから、私は安心して主に頼り、主に縋ることが出来たのです。皆さんの心配事は何でしょうか・・・将来を与え、希望を与えて下さる神様を信じ、聖霊によって祈りの力を与えられ、イエス・キリストの御名によって祈りましょう。主は必ず助けて下さいます。

3、主は我らの祈りを求めている、主に祈ろう。29：12－14

あなた方はわたしを尋ね求めて、わたしに会う。もしあなた方が一心に（心を尽くして）わたしを尋ね求めるならば、わたしはあなたがたに会うと主は言われる。（１３－１４節）

１２-14節に主は「祈れ」と言っています。主のほうから語りかけ、私たちを救いに導いて下さる。主が平安と共に将来を与え、希望を与えて下さる。では私たちは何をしたら良いのか。主は「祈りなさい」と言われ、祈りを求めています。祈りこそ私たちのあるべき姿です。私たちは信仰において、何かをしなければならないという思いが強くあります。何かをするということは、頑張ろうという思いです。もちろん信仰を支え、恵まれるために、例えば聖書を読み、祈り、集会に出席し、献金をささげ、奉仕をするということは大切なことです。それは信仰を維持し、支えるために必要なことです。しかし主は、それらに先立って、祈るべきことを求めています。それは自分の信仰を、自分の頑張りで達成するのではなく、主の聖霊の力によって達成するのであるということを知るためです。ダビデは歌っています、「あなたはわが神です。恵み深い聖霊をもって、わたしを平らかな道に導いて下さい」（詩篇143：10）。イエス様はどうでしたか、「神はナザレのイエスに聖霊と力とを注がれました。このイエスは神が共におられるので、よい働きをしながら、また悪魔に押さえつけられて人々をことごとく癒しながら、巡回されました」（使徒10：38）。全ての事に先立って祈りましょう。聖霊が祈りを助け、導いて下さいます。私が毎日見ている小さな額があります。そこには「絶えず祈れ。Pray without ceasing」（Ⅰテサ5：17）と記されています。それを見ながら、全てに先立って祈りありということで、祈っています。伝道牧会の現場にいれば、病気、経済問題、入学試験、家族の病気、人間関係のトラブル、縁談、子育て、メンタルのケアー、事故、人を好きになること、人から振られたこと、ダイエットなど森羅万象の問題が持ち込まれます。私にできる最善のことは祈りです。今朝、あなたの問題は何でしょうか。主イエス・キリストの御名によって祈りましょう。主が答を下さいます。

まとめ

1、29：10,11,14、主は語りかけて下さる主です。聖書を通して主の語りかけを聴き続けて行きましょう。

2、29：11、主は平安を下さいます。そして将来と希望を与えて下さいます。主に縋り、あなたの求めを祈りましょう。

3、29：13－14、主に祈りましょう。主は祈りに答えて下さいます。

＊主は我らに将来と希望とを与えて下さいます。聖歌336（347）「いかに恐るべきことありとも」を讃美し、お祈りを捧げます。

祈　り　天地の主である神様、我らに将来を与え、希望を与えて下さることを感謝します。主の言葉に耳を傾け、主の御心を知り、それに従って行ける様に導いて下さい。主が最善をして下さることを信じて、一つ一つ祈りながら、聖霊によって前進させて下さい。様々な事で助けを求めている方々を救い、癒し、守り、導いて下さい。主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献エレミヤ書注解―文語略解、口語略解、フランシスコ会、LAB、三田和芳、デヴィッドソン。

「神曲・ダンテ・寿岳文章訳・集英社」