我らはキリストに従い、キリストを讃え、キリストに祈る

我らはキリストに従い、キリストを讃え、キリストに祈る。ヘブル13：7－18　主の2005.10.9　礼拝

私たちの神学校の恩師、弓山先生は、日本の年号で言えば、明治に生まれ、大正、昭和、平成という年代を信仰一筋に生き抜かれ、３年前に天国に召されて行きました。現代で言えば高校生の時にキリストを信じ、その信仰を８６年間保ち続けて、召された時は１０２歳でした。明治時代、あるクリスチャンが、「日本は異教国であるので、キリストを信じる信仰を守るのに大いなる戦いがある。何があろうとも、全生涯をかけて信仰を守って行くことは実に大切な、尊いことである」と言っています。今日の日本は、総人口の１％がクリスチャンです。99％の人々は他の神々、無宗教ですので、異教国という状況はあまり変わっていないのですが、その中にあって共に祈り合い、支え合い、クリスチャンとしてキリストを表す日々を貫いて行くことを祈り願っています。

本日の聖書はヘブル人への手紙13：7－18です。ヘブル人とはユダヤ人のことです。ユダヤ人は神の戒めを守って良い行いをすることによって、罪から救われるというユダヤ教を信じる者ですが、罪の力が強くて神の戒めを完全に守れる者は一人もいませんでした。そこで、きよい、罪のないイエス・キリストが、十字架で人間の罪の身代りになって死んで、罪の赦しの道を開いて下さいました。キリストの十字架を信じれば、誰でも罪が赦され、教会に加えられ、クリスチャンになれるという福音を聴いて、ユダヤ人の中からユダヤ教を棄ててクリスチャンになる人々が起こされ、ユダヤ人以外の異邦人もクリスチャンになり、救いが全人類に与えられ、今は恵みの時、救いの日と言われています（Ⅱコリ6：2）。弓山先生は、日本古来の神々は偶像であって、人を救うことはできない。しかし、キリストの十字架を信じれば救われることを体験し、その信仰を８６年保ち続け、天に帰って行かれました。７節に「神の言を語った指導者を思い起し、その生涯に倣いなさい」と言われています。多くの信仰の先輩がキリストに従い、キリストを讃え、キリストに祈り、信仰の生涯を全うしました。私たちも、きのうも、きょうも、いつまでも変わることのないキリストによって信仰の道を進んで行くように、新しい決断をもって祈り、一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

1、キリストは永遠に変わらない、ひたすらキリストに従って行こう。13：7－14

2、キリストは永遠に変わらない、さんびと祈りもってキリストに縋って行こう。13；15－18

資料問題

１３章は愛と善行の生活についての教えで、区分すれば、1－３節、愛の実践、４－６節、倫理的義務、７－１７節、クリスチャンの務め、１８－２１節、祈り合おう、22－25、挨拶と祝祷である。今回は７－１８節という区分でメッセージを聴いて行く。　７節「神の言」、ルカ5：21参照。神がキリストを通して語る言葉で、福音の言葉である。「最後」は結果、結実の意もある。８節、キリストについての教えではなく、キリストを信じることが信仰であり、キリストが永遠に我らを導く。「食物」は旧約聖書の祭壇に捧げられた動物の肉を示し、旧約儀式を暗示している。１０節「わたしたちには一つの祭壇がある」、神の子キリストが犠牲になった祭壇（十字架）を持っている（信じている）。１６節「施しをすること」はコイノニヤ（交わり）であり、精神的、物質的に一つの体として分かち合うことを意味している。ロマ15：26では援助、Ⅱコリ9：13では施しと訳されている。

1、キリストは永遠に変わらない、ひたすらにキリストに従って行こう。13：7－14

イエス・キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも変わることがない。（13：8）

現代の日本は平均寿命が８０歳代になっています。８０年を生きるために健康が重視されています。歯医者に行けば、８０歳まで自分の歯を２０本残しましょうというポスターがあります。丈夫で健康な一生をおくるために、学校でも、職場でも、地域社会でも健康診断があります。健康を維持すると同時に、特に年配者には、ただ元気でいるだけではなく、生き甲斐をもって日々を過ごしましょうということで、趣味のサークルなどで心の充実を図ることなどが行われています。飛躍しますが、どういう一生であったかは『棺の蓋を覆うまでは分からない』と言われていますが、クリスチャンの一生は素晴らしいという証を立てて世を去って行くことを願っています。そのために、体の健康も大事ですが、クリスチャンは心が先です。心の内におられるキリストによって心を恵まれ、天国への希望をもって日々を生きる。そして健康の祝福を与えられ、感謝のうちに地上の生涯を閉じ、天国に帰って行くことを祈りましょう。

７節に、神の言葉を伝えた人々が、信仰を全うして天国に帰って行ったように、その生き方に倣って、あなた方も信仰を貫いて一生を閉じるようにという勧めがあります。８節に、永遠に変わることのないキリストが私たちの信仰を守り、導いて下さることが示されています。９節に食物、幕屋という言葉がありますが、これはユダヤ教を指しています。ユダヤ教では様々な儀式があり、戒めがあり、それらを完全に守ることによって救われると言います。しかし、人間には罪があり、罪に妨げられて、儀式、戒めを完全に守った人はいませんでした。しかも罪をもったままでいれば、人間は滅びるだけです。そこで神の御子キリストが、罪のない、きよい身を十字架にささげ、私たちの罪の身代りになって下さったのです。ユダヤ教では動物を罪のために捧げて、それを町の外に持ち出して焼いていました。キリストは私たちの罪の身代りにご自分をささげ、その体はエルサレムの門の外にあるゴルゴタの丘で十字架に架けられ、殺されたのです。１３節に「わたしたちも、彼の辱めを身に負い、営所（宿営）の外に出て、御許に行こうではないか」と言われています。これは、ユダヤ教を棄てるという事、日本で言えば様々な偶像礼拝を棄てて、キリストだけを信じて生きて行こうという勧めです。その時に迫害を受けるかも知れないが、キリストを信じ続けて行こうという決断を促す御言葉です。

キリストは永遠に変わることのない救主です。キリストについてヘブル書から三つの事を見ます。

第一に、キリストは、私たちに信仰を与え、信仰を完成して下さるお方です（12：2）。キリストは「わたしがあなた方を選んだ」と言われました（ヨハネ15：16）。選んで下さったキリストが、責任をもって私たちを導いて下さいます。キリストに縋り続けて行きましょう。

第二に、キリストは常に共にいて、私たちを離れず、捨てないと約束されています（13：１３後半―６節）。

第三に、キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも変わらないお方です（13：8）。人の気持は変わり、きのう約束した事を、日が変われば反故にしてしまうという事はよくあります。しかし、キリストは不変です

「二荊自叙伝」というクリスチャン斉藤宗次郎（1877－1968）の自伝が出版されました。二荊とは、荊の冠をつけて十字架にかけられたキリストにつづいて、自らも荊の冠をかぶり、苦難を受けるという意味です。彼は宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」のモデルと言われています。斉藤宗次郎は岩手県花巻市の住職の家に生まれ、師範学校卒業後、花巻の小学校教員になりました。２１歳の時に内村鑑三に導かれクリスチャンになり、それからは、彼は生徒に教育勅語の代わりに聖書を教え、戦争に反対します。寺の住職の子がクリスチャンになったということで親に勘当される、聖書を教えたという事で教員をやめさせられ、自宅に石を投げられ、消防車で放水され、町を歩けば石をぶつけられる。警察へ訴えても、まともに取り上げてくれない。９歳の長女・愛子が、学校でいじめられ、腹部を強打され腹膜炎を起こします。愛子は、最後に讃美歌を歌ってくれと願い、「神は愛なり」と書き残して平安のうちに息を引き取って行きます。彼は生活のために新聞雑誌取次ぎ業を始め、２０年間続けます。明治の頃ですから、朝早く汽車で新聞が駅に着く。それを取りに行き、雨の日も雪の日も祈りながら配達し、道を掃除し、病人があれば見舞いました。最初は、子どもたちから「ヤソ　ハゲアタマ　ヤソ　ハリツケ」と言われますが、「名物買うなら花巻おこし　新聞取るなら斉藤先生」と言われるようになります（宮沢賢治と斉藤は交友があり、賢治は斉藤の姿をモデルにして「雨ニモ負ケズ」を書いたと言われる）。長女・愛子の死から３年後に２９歳で妻スエが召されます。彼は４９歳の時に花巻を離れ、東京で内村鑑三の伝道の働きに加わります。彼が花巻を去る時には町長、教員、生徒、神主、僧侶、子ども、乞食の人までが見送りに来た。斉藤宗次郎はキリストを信じたために迫害を受け、勘当され、教師を辞めさせられ、娘、妻を失いますが、キリストを信じ続け、迫害された町でキリストを証するために用いられ、多くの人に感化を与え、大勢の人が見送りに来たので、駅長は列車の出発時間を遅らせた程でした。彼は９１歳で召されるまで、ひたすらキリストに従い続けます。召される前日、「私は神様の御許へ行くから、あとからみんなぞろぞろついて来い」と言い残しています。私たちも、永遠に変わることのないキリストを信じ続けて、祈り合い、励まし合い、助け合い、ひたすらにキリストに従って参りましょう。

2、キリストは永遠に変わらない、さんびと祈りをもってキリストに縋って行こう。13：15－18

わたしたちはイエスによって、さんびのいけにえ、すなわち、彼の御名を讃えるくちびるの実を、絶えず神にささげようではないか。・・・わたしたちのために祈ってほしい。（13：15、18）

１５節以下に、キリストに従い続ける者の姿が出ています。

第一に、１５節にさんびがあります。

クリスチャンの特徴は主を讃える讃美を歌うことです。聖書朗読しました詩篇３３篇でダビデは、「さんびは直き者にふさわしい」と歌っています。直き者とは、キリストを信じて罪を赦され、神に正しい者であると認められ、クリスチャンになっている者です。ダビデは、琴を奏でることができました（サム上16：23）。そこで、彼は琴を奏で、主をさんびしています。また彼は、主の契約の箱を運ぶ時に、さんびに加えて、力をきわめて踊っています（サム下6：14）。

私たちの讃美の内容は何でしょうか・「彼（イエス）の御名をたたえるくちびるの実」とあります。これはキリストが私たちにして下さった救いのわざを讃えようという意味で、さんびの主題はキリストです。キリストを讃えるさんびをたくさん捧げて下さい。今朝、皆さんは主に向って、心から、力をきわめてさんびを捧げたことと思います。さんびを捧げると心が恵まれます。それは、私たちがさんびを捧げる時に、その中心に主がおられるからです（詩篇22：3）。主は、さんびに応えて、私たちの心に聖霊を注ぎ、愛を満たして下さいます。ですから、さんびを歌うと、心が喜びに溢れ、また主の救いと導きに感謝が溢れ、涙がこぼれる時もあります。

さんびを、絶えず捧げよう、と言われています。ユダヤ教の儀式は一定の時期に、律法の決まりに従って捧げられました。キリストを讃えるさんびは、いつでも捧げることができます。心から歌えば、それが主の御許に届いて行きます。聖歌によって、ゴスペルによって、楽器によって、手拍子によって、踊ることによって、手話によって、あらゆることを通して、主を讃美し続けて行きましょう。ついでに申し上げますが、葬式の時に歌う聖歌を決めておくのも大切です。豊留先生は、熊谷の聖歌隊と私たち夫婦の讃美を録音して、「私の愛する教会の方々のさんびに包まれて、葬儀をするように計画しました」と言っておられ、その通りになさいました。

第二に、１６節、善を行うことと施しをすることとあります。

施し（持ち物を人に分ける）という言葉は交わりという意味です。交わりという言葉を施しと訳したのは、キリストにある兄弟姉妹として、精神的に、物質的に、分け合うという意味からです。分かち合うこと、持ち物を人に分けることを、神が喜ばれるとあります。神様は、最も大切な独り子であるキリストを十字架に架けて下さった、与える神様です。神様が与えて下さったキリストにより、またキリストが私たちに命を与えて下さったので、幸いにも私たちは救われ、神の子になることができました。それですから、神様の愛に倣って、施し（人に分け与える）ということを積極的にしなさいという勧めを実践して参りましょう。先週、あるクリスチャンの方から、ホームレスのためにとお米を２０キロ送ってきました。この方は時々お米を送ってくれます。冬にはカイロを送ってくれたこともあります。キリストにあって、施しをすると、それによって心が恵まれます。また、不思議なことに自分の必要が満たされます。アメリカの石油王ロックフエラーは５０代前半、不治の病で一年以内に死ぬと宣告されました。「よし、残った一年間で出来るだけ多くの財産を寄付しよう」と決心します。巨万の富を稼いでも使わないで死んでしまっては何もならないと気づいたからです。彼は全米の図書館、孤児院、大学、教会に寄付し、ロックフエラーセンターを建てます。彼は寄付活動で忙しい日を過ごしたのですが、一年が過ぎても死なず、９８歳まで生きます。お金を稼いで、それを持っている時は心配ばかりしていましたが、人に分け与え、施しをし、他の人に仕えることによって心配から解放され、気持が楽になり、長寿を全うしたのです。キリストが言われたように、「受けるよりは与えるほうが、幸いである」（使徒20：35）という事は事実です。

第三に、１７節、教会の指導者に従いなさいと言われています。

指導者とは群れを牧会伝道する牧師、伝道師を指しています。私が人間的権威を笠に着て、指導者に従いなさいというのではなく、私は聖書の言葉をそのまま伝えています。牧師はひとり一人のために目を覚まして祈って行く務めがあります。やがて神様の前に立って、「あなたは群れのひとり一人を愛し、御言葉によって養いましたか」と問われます。改めてお願いすることは、私たち夫婦が祈りをもって、主の御心を正しく伝えて行くように、祈って下さい。「嘆かないで」とあります。その人のために、折角祈って、いろいろと導いているのに、それに従わないで、間違った方向に行くとしたら、それは牧師にとって身を切られるような大きな悲しみです。そんな事で牧師を嘆かせないで下さい。牧師をやつれさせないで下さい。もう一度お願いします、私たち夫婦のためにお祈り下さい。

第四に、１８節、祈りがあります。

祈りこそは、クリスチャンに与えられている大いなる祝福です。今週はファミリーの週です。ファミリーは祈りの家族であり、ファミリーの中心はキリストです。キリストは弱い者、小さい者の友です。自分は何でも知っている、この人はこんな事が分からないのかと思わないで、人の話に誠実に耳を傾けて下さい。問題、課題が出てきたら、解決するのはキリストですから、キリストに任せて祈って下さい。

祈りについて大事なことは、祈りの習慣を身につけることです。キリストは朝ごとに祈っていました（マルコ1：35）。それを毎日継続したことによって、十字架の死を目前にしてゲッセマネの園でいつものようにお祈りしています（ルカ22：39－40）。パウロは「絶えず祈れ」（Ⅰテサ5：17）と言っています。彼が新約聖書として残した１３通の手紙は祈りに始まり、祈りで終わっています。彼はシラスとピリピで伝道中に無実の罪で地下牢に閉じ込められた時、神に祈り、さんびを捧げ、その祈りが神様に届き、二人は獄中から救い出されています（使徒１６章）。キリストを讃え、善を行い、施しをし、指導者を敬い、祈れというメッセージを心に留めて下さい。

今朝、ヘブル13：7－18よりメッセージを聴きました。この箇所を通して教えられることは、クリスチャンは永遠に変わることのないキリストによって、積極的な明るい人生を歩む者であるということです。以前スポルジョン（1834－92）の、「わが学生たちへの講義」という本を読んだことがあります（邦題「牧会入門」）。その本の中で、彼は「湿っぽさをやめよう」と言っています。湿っぽい声、態度は葬儀屋の営業だけでよい。「あたたかい心をもとう」と言っています。あたたかい心は挨拶や話し方にも影響を与えます。酢に捕まるよりも、甘い蜜に捕まるハエのほうが多い。だから、しかめっ面よりも、少しでもニコニコ顔のほうがよいと言っています。心におられるキリストに感謝し、キリストを讃えるさんびに溢れ、明るい喜びをもってキリストに表すようにして行きましょう。

まとめ

1、13：8、キリストは永遠に変わらない救主です。キリストに従い続けて行きましょう。

2、13：15,18、キリストを讃美しましょう。全てを与えて下さった主に倣い、善を行うことと施し（人に分け与えること）をし、指導者を敬い、祈り合って行きましょう。

＊聖歌総合474（聖歌461）「流したまいしイエスの血潮に」を讃美し、祈ります。

祈　り　主である神様、独り子キリストの十字架によって救われ、神の子にされていることを感謝します。永遠に変わることのないキリストを信じ、キリストに従い、キリストを讃美し、キリストに祈って信仰の道を進んで行きます。今週も聖霊によって祈りながら、それぞれの仕事、学びを継続して行くように導いて下さい。ファミリーを祝福して下さい。ゴスペルを祝福し、夜の礼拝を恵んで下さい。明日の森林公園親睦会を祝福して下さい。永遠の救主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献へブル注解―名尾、フランシスコ会、バークレー、米田、黒崎、LAB。　「二荊自叙伝・斉藤宗次郎・岩波」、「御翼・佐藤順」