我が助けは、天地を創りたまえる主よりきたる

我が助けは、天地を創りたまえる主よりきたる。　詩篇121篇　　　　主の2005.10.16礼拝

もう５０年の昔ですが、東京・西武線富士見台駅を降りると田んぼが広がり、千川という川が流れている（今は千川は暗渠になっている）長閑（のどか）な農村地帯の真ん中に、私の通っていたカトリック・ミッションの中学校がありました。その学校では、遠足、修学旅行の時に、旅行を守る聖人のハガキ大の絵が生徒全員に配られました。サレジオという名前の年若い聖人でした。カトリック教会では、信仰が優れ、教会のために寄与した人々が召されると、聖人という位を与えます。聖人は恵みがいっぱいあるので、その恵みを人々の求めに応じて分け与えることができる事になっています。また、それぞれの聖人には役割があり、サレジオは旅行の守護聖人という役割を担っていました。その学校にいて、私は神様の存在を信じました。しかし、いくら優れた信仰の持ち主であっても、人間はあくまでも人間である。日本で、偉いと思われる人が死ぬと、神様に祭り上げて○○神社として、みんなが拝む。カトリックの聖人と神社に祭られる人と一緒ではないかと思い、聖人という教えはおかしいと思いました。

本日の聖書は詩篇121篇です。この詩篇は、イスラエルの地方の人々が、エルサレム神殿で礼拝を捧げるために、この詩篇を歌い交わしつつ旅をしたので、「都詣での歌」という題がついています（都詣での詩篇は全部で１５篇ある）。或いは故郷を離れ、外国にいるイスラエルの人々が、エルサレムのシオンの山を思い起しながら歌った詩篇とも言われています。５節に「主はあなたを守る者」と歌われ、２節には、「私たちの助けは主から来る。守護聖人ではなく、万物を創造された主から来る」と歌われています。主に頼って行くならば、聖書朗読にあったように「四方から患難を受けても窮しない。途方にくれても行き詰まらない」（Ⅱコリ48）人生を前進できます。主は、私たちを守り導く愛のお方である主のメッセージに耳を傾け、祈って、一週間の旅路を共に出発して参りましょう。

内　容

1、我らは、主によって救いが与えられることを、我らは信じる。121：1－2

2、我らは、主によって日々に守られることを信じる。121：3－7

3、我らは、主によって人生の全てが導かれることを信じる。121：8

資料問題

詩篇１２０篇以下の１５篇は「都詣での歌」とあり、イスラエル人が毎年祭日を守るためにエルサレムに上った時の歌を集めたものである。作者はダビデ、ソロモン、或いはバビロン捕囚より帰還した時の歌と言われているが、詳しいことは不明である。１２１篇は古来より多くの人々によって愛誦されている。１節「山」はダビデが祭壇を築いた（サム下6：12－18）エルサレム南東部の丘。のちにエルサレム全体がシオンと呼ばれるようになった。２節「わが助けは天と地を造られた主からくる」、助けは天地の創造主である神よりきたる（エレミヤ3：23）。３節「足の動かされるのをゆるされない」、主は聖徒の足を守られる（サム上2・9）。４節「まどろむことなく、眠らない」、バアルのように眠りて醒さるべき神ではない（列上18：27）。５節「右の手をおおう陰」、右に守る者が立って守ってくれる。おおう陰は詩篇91：1。８節「出ると入るとを守られる」、主は我らの起居動作いっさいの生活状態において守って下さるのである。

1、我らは、主によって救いが与えられることを信じる。121：1－2

わが助けは、天と地を造られた主から来る。（121：2）

「天の原、振りさけみれば、春日なる三笠の山にいでし月かも」という阿倍仲麻呂（奈良時代）の歌があります。彼は中国に渡り、帰国しようとするのですが何回も嵐に阻まれて遂に帰国できなかった時に、その脳裏に浮かんだのは故郷の三笠山であり、そこにある奈良の都のことでした。

詩篇１２１篇冒頭で、「わたしは山に向って目を上げる」と歌われています。ダビデが祭壇を築いたエルサレムの南東部の小高い丘のような小さい山の所をシオンと呼んでいましたが、その後エルサレム全体をシオンと呼ぶようになりました。イスラエルの人々は、「わたしは山に向って目をあげる」と言いつつ、山という言葉の中に、神の都エルサレムへの気持を表しています。また、外国にいるイスラエルの人々は、遠いはるかな故郷の聖なる都の方を向いて、「わたしは山に向って目をあげる」という言葉をもって祈ったことと思われます。ダニエルはイスラエルから１５００キロ離れたバビロンの地で、エルサレムの方角に向って窓を開き、日に三度ひざをかがめて祈っていました（ダニエル6：10）。

しかし、聖書は「わたしは山に向って目をあげる」だけで終わっていません。２節に「わが助けは天と地を造られた主から来る」とあります。これこそが、自然を崇拝する偶像礼拝と、天地万物を創造されたまことの神様を礼拝する者とを分ける決定的な言葉です。永六輔というかたが、「日本は自然が神々です」と言っていました（読売新聞）。私たちクリスチャンの神様は天地万物を創造された創造主です。残念なことに、人間は神に逆らって罪に堕ち、罪の支払う報酬は死であるので、私たちも滅びる者でした。しかし、神は愛です。罪のために死んで滅んで行く私たちを神様は憐れみ、独り子であるキリストをこの世に遣わし、キリストは私たちの罪の身代りになって十字架にかかって死んで下さり、救いの道を開いて下さいました。日本には八百万（やおよろず）の偶像があり、インドには３億の偶像があります。しかし、どんなに数が多くても、偶像は死んだ命のないものですから、人の罪を赦し、永遠の命を与えることは絶対にできません。それができるのは、「父よ、彼らを赦したまえ」（ルカ23：34）と祈りながら、十字架の上で両手両足に釘を打ち込まれ、脇腹に槍を刺され、私たちの身代りに死んで下さった、きよい神の独り子キリストだけです。キリストは死んで終りではなく、罪の罰である死を打ち滅ぼして甦り、信じる者に永遠の命を保証して下さいました。神の独り子であるイエスキリストを信じることによって、私たちは天と地を創造された神の子になり、神の助けが与えられます。先ほどの永六輔さんは「自然が神々である。死んだ私の妻は草葉の陰にいる。だから振り返れば、そこにいるような気がする」と言いながら、「しかし、そこにいないのでたまらなく淋しい」という意味の事を言っています。クリスチャンも地上において、愛する者と一度は別れなければなりません。クリスチャンは地上を去った者が草葉の陰にいるとか、星になったなどは思いません。万物を創造された父なる神の御許で永遠の憩いを得ていることを信じ、やがて私たちは天国で再会出来るという希望をもっています。夏にノルウエーのアンデルセンさんの所に行きました。昨年夏、日本人の奥さんが突然天に召されるという試練を体験された方です。奥さんの墓地に案内してくれましたが、その墓石に「We shall meet again」と記されているのを見て、クリスチャンには天国における再会の希望があることを改めて実感いたしました。

「わが助けは、天と地を造られた主から来る」ことは確かです。同志社大学の創始者新島譲（1843－90）は２１歳の時に、函館より貨物船に潜り込んでアメリカに密航し、その船の中で中国語聖書を読み、開巻第一ページにある「初めに神が天と地とを創造された」（創世記1：1）という神の言葉に大ショックを受けます。ショックを受けると同時に、彼は世界を創造され、世界を支配されるまことの神を信じます。アメリカに渡ってから、「わたしの助けは天と地を造られた主から来る」ことを信じ、大学、新学校で学び、その中で彼はクリスチャンとして、日本の将来を担う若者たちを教育するという志を与えられます。教育の場所として、日本仏教の中心地である京都にキリスト教精神に基づく大学を始めます。キリスト教を排撃しようとする仏教界からの反対に遭いながらも、その初志を貫き、現在でも同志社大学はその働きを継承しています。彼は、日本古来の死んだ神々ではなく、聖書の教える、活きているまことの神がおられ、「わが助けは天と地を造られた主から来る」ことを信じ通して、その一生を閉じ、天の御国に帰って行きました。

私たちも、神の独り子であるキリスとの十字架によって、天と地を造られたまことの神の子になっていることを感謝し、信仰の道を真っ直ぐに歩んで行くように、祈って、決断を新たにしましょう。

2、我らは、主によって日々に守られることを信じる.121：3－7

見よ、イスラエルを守る者は、まどろむこともなく、眠ることもない。主はあなたを守る者、主はあなたの右の手をおおう陰である（121：4-5）

３節以下に、活きている主の守りが記されています。先に６節を見ます。太陽、月が出ています。砂漠にほど近い南ユダは、厳しい太陽の炎熱が人に照りつけます。月の光は熱病などの原因になるという迷信があり、人々は夜の月の光を怖れていました。そこで、主は、昼は太陽の炎熱から、夜は熱病を与えるという月の害からひとり一人を守るという恵みが歌われています。４節のイスラエルの所に、ご自分の名前を入れる事によって、主は個人的に私たちを守るお方であるという確信を深める事ができます。

５節に「主はあなたを守る者であり、あなたの右の手をおおう陰である」と言われています。右とは力のある所であり、また右という言葉で体全体を表しています。法廷において、弁護士は被告人を弁護します。私たちは小さく、弱く、足りない者ですが、主は法廷で弁護士が被告人を守るように、私たちの味方になってくれます。主は、私たちの心に助け主である聖霊を送り、祈りを与えてくれます。どんな困難があろうとも、聖霊によって神の愛が私たちに注がれ、「わたしは決してあなたを離れず、あなたを捨てない」（ヘブル１３:5）という主の御声が心に響いてきます。聖霊は、「何事でも、主イエス/キリストの御名によって祈るならば、祈りをかなえてあげよう」（ヨハネ14：14）という信仰を与え、祈る時に、恵みの道が開かれて行きます。

７節には、「主はあなたの命を守られる」と言われています。私たちに聖書を読み、キリストを信じるならば誰でも救われるという恵みを再発見した、宗教改革者マルティン・ルッター（1483－1546）のことを思い起します。１６世紀の頃、カトリック教会は、教会の発行する免罪符を買えば天国に行ける、亡くなった家族も免罪符で天国に行けると宣伝し、免罪符を売り出しまし。これに対し、ルッターは「聖書には、キリストの十字架を信じれば、誰でも救われると約束されている。免罪符はインチキである」として、１５１７年、ローマ法王に９５か条の質問状を出します。彼はカトリックの司祭でしたので、法王に逆らうことは出来ない立場にいたのですが、「キリストを信じれば救われる」という真理を曲げる訳には行かないということで、聖書の神様の側に立ってローマ法王に質問状を出したのです。ローマ法王はルッターを説得しようとして、彼を呼び出します。彼は命の危険を察知しますが、「神は我らの味方である」という信仰に立ち、「主はあなたを守る者、あなたの右の手をおおう陰である」ことを信じ、公開討論会で「キリストを信じれば、誰でも救われる」という主張を貫きます。その帰り、彼は何者かにさらわれますが、実は彼を助ける王様によって、安全な城の中にかくまわれたのです。もし、それがなかったら暗殺されていたも知れなかったのです。その城の中で、彼は聖書をドイツ語に翻訳し、発明された印刷術によって、聖書が一般の人の手に入るようになり、宗教改革が始まったのです。

主は、私たちを守って下さるお方です。あなたの心配事は何でしょうか。病気、人間関係、不安、明日のことが気になる、家族が病気である、仕事のトラブル、人間関係など様々なことがあると思います・・・「主はあなたを守る者、主はあなたの右の手をおおう陰である」ことを信じ、祈りましょう.主があなたの心の中に、生活の中に答を与えて、あなたを守り、導いて下さいます。

３、我らは、主によって人生の全てが導かれることを信じる。121：8

主は、今からとこしえに至るまで、あなたの出ると入るとを守られるであろう.121：8

この短い詩篇の中に、日本語聖書では、「主」というお名前が６回、「守る」という言葉が６回繰り返されています。８節を読んでみます。ここには主が、私たちの全生活を守るという祝福が述べられています。ところで、現在、熊谷に関連する開拓伝道所が深谷、松江、諏訪と三つあります。三つの伝道所が、霊的に恵まれ、会員が増え、教会経済が祝福されて行くように祈っています。年に二回、三つの伝道所に、私たち教会に与えられた祝福に感謝しながら、祈りを込めて愛の献金を送っています。振り返ってみますと、熊谷の最初の祈りは、礼拝が１０名になることでした。先週お話したように、小さい家で住まい兼集会場という形で、しばらくの時を過ごしました。「主はあなたを守る者」とあるように、また「出ると入るとを守られる」とあるように、振り返って感謝することは、主は私たちを導き助けて下さり、先ず霊において恵みを下さり、個人伝道という祝福を与えて下さいました。「主の祈り」にあるように、日毎の糧を与えられて、健康も支えられてきました。救われる方々が起され、今日このところまで進んで来ることが出来ました。「出ると入る」とありますが、主はすべてにおいて守ってくれました。これからも守って下さること信じています。深谷も松江も諏訪も、開拓伝道の基礎固めをし、これから飛躍の時であることを信じます。天地を造られたまことの神様が、彼らを支えて下さるように祈り、伝道の豊かな実を結んで行くように祈って下さい.

私たちの開拓伝道の初期に、門司にある家内の母教会の牧師、力丸博先生が何回も伝道のために熊谷に手弁当で来て下さいました。先生はご自分の体験を通して、若い伝道者である私たちを励ましてくれました。先生は、戦争前に牧師になり、戦争という迫害時代を通り抜け、６人の子どもを育てつつ牧会伝道をし、教会形成をされ、多くの献身者を産み出しました。日本が戦争に負けて何もない時代に、６人の子どもを育てるのは大変であったと思います。ある時、こんな話をしてくれました、「渡辺くん、ある時、金もない、お米もないということがあった。すると、教会あてに、自由に使って下さいと新約聖書がたくさん送られてきた。戦後、多くの人々が本が読みたくても本がないという時代であった。そこで、街頭で、聖書を有料で配るようにという知恵が与えられ、多くの人々が聖書を買ってくれた。それが教会の伝道資金になり、また家族の飢えを救うことになった」と話してくれたことがあります。私はそれを聴きながら、神様は、伝道と共に伝道者一家を飢えさせない恵みの主であることを教えられました。聖書を買った人々は自分の命を養うことになり、そのお金は教会の伝道資金になり、伝道者の生活の糧のために用いられ、７節にあるように、「主はあなたを守って、すべての災いを免れさせ、またあなたの命を守れる」という神の言葉は真実であることを知ることが出来ました。主は活きておられます。あなたの必要は何でしょうか・・。「主は今からとこしえに至るまで」とあるように、私たちの全生涯を通じて、全てを満たして下さる主です。

まとめ

1、121：2、天地を造って下さったのはまことの神です。キリストの十字架によって神の子にされていることを感謝しましょう。助けは神様より来ます。

2、121：4－5、主は日々に私たちを守って下さいます。主の守りを信じましょう。

3、121：8、主は、私たちの全生活を導いて下さいます。霊が恵まれ、健康が守られ、経済の必要を満たして下さいます。主に縋り、祈り求めて行きましょう

＊聖歌総合５１６（聖歌498）を歌い、祈りましょう。

祈　り　　

天地を創造された神様、神の独り子イエス・キリストの十字架によって神の家族にされていることを感謝します。我らの助けは常に神様から来ることを信じ、主に縋って行きます。各自の仕事を祝福して下さい。学びを祝福して下さい。今週も聖霊によって祈りながら、主に従う喜びの日々を前進させて下さい。病気の方々を速やかに癒して下さい。様々な困難の中にある方々に力強い勝利を与えて下さい。我らの救主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献詩篇注解―矢内原、浅野、ナイト、口語略解、ＬＡＢ，フランシスコ会。　「口語聖書事典・日キ教団」