「我に従いきたれ」－キリストの弟子の覚悟

「我に従いきたれ」－キリストの弟子の覚悟　ルカ9：57－62　　　　　　　　　　主の2005.11.6礼拝

先週日曜日の礼拝後、「召天者記念会（墓前礼拝）」を「やすらぎの里・教会墓地」で行いました。静寂な墓地で天国の讃美をささげ、イエス・キリストの「我は復活（よみがえり）なり、生命（いのち）なり、我を信する者は死ぬとも生きん」（ヨハネ11：25）という御言葉に基づいてメッセージを聴き、祈りを捧げ、「我らの国籍は天に在り」（ピリピ3：20）という思いを新たにする恵みが与えられ、幸いでした。墓前礼拝の帰りに、４人の恩師のことが私の心に浮かんで来ました。

弓山喜代馬先生は明治から平成まで、８６年間信仰を貫かれ、中央聖書神学校創立者として、５００人以上の伝道者を育て世に送り出しました。個人的な事ですが私たちの結婚式の司式をして下さり、９０歳位まで、ひとりで東京から列車に乗って熊谷に来られ、礼拝メッセージをして下さいました。吉野勝栄先生は、ただひたすらに祈るということを教えて下さいました。力丸博先生は家内の母教会の牧師ですが、「伝道を楽しもう」と教えて下さいました。道であり、真理であり、生命（いのち）であるキリストの十字架の救いを伝道して行けば、人は救われて行く。救われた人を見ると喜びが湧いてくる。だから伝道を楽しもうと教えてくれました。豊留真澄先生は日系二世でアメリカに住んでいましたが、日本に来ると必ず熊谷に泊まり、「キリストきちがいになって個人伝道をしよう」ということを、身をもって教えて下さいました。これらの先生方は、「信仰の戦いを立派に戦い抜き、走るべき行程を走りつくし、信仰を守り通して」（Ⅱテモテ4：7）地上を去って行かれました。

本日はルカ9：57－６２です。キリストは、「わたしに従って（ついて）来なさい」（５９節）、「手を鋤（すき）にかけてから、後ろを見る者は神の国にふさわしくない者である」（６２節）と言われ、私たちに弟子としての覚悟を求めています。最初に申し上げた４名の恩師の共通点は、後ろを振り返ることなく、「信仰の導き手（創始者）であり、完成者である」（ヘブル12：2）キリストだけを見つめて、信仰の道を歩み、自分の使命である伝道の働きを全うされたことです。私たちも後ろを振り返らずに、キリストだけを見上げ、それぞれに与えられた持ち場立場に立って自分の分を果し、恵み深い聖霊に導かれて、天国への旅路を力強く前進して参りましょう。

内　容

1、キリストの弟子であるクリスチャンは、キリストに従う者である。9：59

2、キリストの弟子であるクリスチャンは、キリストに従う事を最優先する者である。9：60

3、キリストの弟子であるクリスチャンは、キリストに従う決断をする者である。9：62

資料問題

ルカ9：57―62はキリストに従う者への勧めである。57－38節、59－60節はマタイ8：19－22と共通している。６１－６２節はルカ特有の内容。キリストはエルサレムへ十字架の死の旅路に向っている。キリストは従う者に対して、自分を棄て、十字架を担って行く覚悟をするように求めている。５８節「人の子には枕する所がない」、キリストは国も家族も家も持っていない。ナザレからは追い出され、サマリヤ人に拒絶され、そしてカペナウムを離れた。キリストに従う者も同じ道を歩むのである。６０節「霊的に見て死んでいる者即ちこの世のことを思い煩う者に、その死人即ち肉体の生命を失った者を葬らせなさい」との意。６２節、農夫は鋤（すき）を使う時、後ろなどを見ない。キリストに従う者は過去に訣別し、時には家族、家、財産などを喜んで棄てなければならないのである。

1、キリストの弟子であるクリスチャンは、キリストに従う者である。9：59

イエスは「わたしに従ってきなさい」と言われた。9：59

５７節の人は律法学者です（マタイ８：１９参照）。５９節の人は父が死んでから従うようにしようと考えていました。６１節の人はいろいろなものを整理してから従って行こう思っていたようです。キリストに従って行こうとする時に、様々な事情がありますが、キリストは単純率直に、「わたしに従ってきなさい。Follow me」（５９節）と命じています。キリストに従う事は、キリストを信じる事から始まります。

キリストを信じるということは二つのことを含んでいます。

第一に、キリストを、自分の罪を赦す救主として信じることです。私たちはまことの神を知らずに偶像を拝み、自分の欲望のままに生きていた罪人でした。罪をもったままでいれば、僅か７０年か８０年の人生を生きて、そして死んで、永遠の滅びの中に入るという悲惨なものです。そういう罪人の私たちを哀れんで、罪のない神の御子であるキリストが、私たちの受けるべき罪の罰の身代りになって十字架の上で死んで下さったのです。誰でも罪を悔改めて、キリストを信じれば罪が赦されます。さらにキリストは十字架の死後３日目に復活され、罪の結果である死を滅ぼされた勝利の救主です。キリストを信じると、罪が赦されます。と同時に、いつまでも死なない永遠の命が与えられます。皆さんひとり一人がキリストを自分の救主として信じておられることを感謝します。

第二に、キリストを自分の人生を導く主として信じることです。「親分はイエス様」という映画がありました。ヤクザであった人達がキリストを信じて救われました。彼らはヤクザの時には、自分の親分のためなら命を差し出すという忠誠心を持っていました。救われてからは人間の親分ではなく、魂を救い、永遠の命を与えて下さったキリストを親分として、全身全霊を捧げて仕えて行くことになり、彼らをモデルにして「親分はイエス様」という映画が作られたのです。

今、キリストが救主であり、主であるという二つのことを言いましたが、クリスチャンの方々は、そんな初歩的なことはとっくに知っていると思っているかも知れません。だが信仰は知っているという知識の満足では足りません。心が恵まれていることが大切です。心が恵まれていることを知るために、皆さんにお尋ねします。キリストを信じて常に喜んでいますか・・。絶えず祈っていますか・・。全ての事について感謝していますか・・。（Ⅰテサ5：16－18）。私事になりますが、私は毎朝祈る度ごとに「イエス様を救主、主として信じることができた」という恵みを思うと、うれしくなります。何故うれしいのでしょうか・・・救われて、キリストに従ってきたことによって、全てが最善に導かれているからです。ここに高校生の方々がいますが、自分の高校生の時を思い出します。私は救われるまでは、不真面目極まりない高校生で、よく授業を抜け出しては好きな本を読み耽り、試験はその都度うまく切り抜けて単位をとり、無目的な高校生活を送っていました。しかし高校２年の１１月に洗礼を受け、イエス様を救主、主とするようになってから、心と生活が軌道修正され、やがて神学校で学び、熊谷に派遣され、妻と子どもが与えられ、良い信徒である皆様に支えられて今日に至っています。もしイエス様に出会わなかったら、私の人生は偶像礼拝のために心が暗くなり、曲がった罪の人生を歩んで破滅していたと思います。

「わたしに従ってきなさい」・・・信仰とは、この呼びかけに応じてキリストについて行くことです。キリストについて行くならば、人生は恵まれて行きます。今朝、「イエス様、あなたはわが救主であり、主です。恵み深い聖霊によって私の永遠の御国（天国）に導いて下さい」という決断の祈りを捧げて下さるように、改めてお勧めします。そこから恵みの人生が開けてきます。

アメリカで麻薬組織の女ボスがいました。彼女は自分の仕事上、神を信じないし、神を憎み、何とかして神を否定する理論を見つけようとしていた。ところが極度の不眠、不安に悩まされ、一晩にふつうの３倍以上の睡眠薬を使うようになっていた。ある晩クリスチャンの集会に出た。そこで彼女の信仰反対論は打ち破られ、なんとその場で悔改めてイエス・キリストを自分の救主として信じてしまったのです。彼女は「わたしに従ってきなさい」と言われるキリストに縋って、睡眠薬を絶ち、手下に悔改めてキリストを信じたことを告げ、組織を解散した。彼女は現在キリストの僕として、社会福祉の働きに献身しています。キリストを救主、主として信じた時に、彼女の人生は、麻薬で人を殺す仕事から、人を生かし、支える社会福祉の仕事へと変えられたのです。

2、キリストの弟子であるクリスチャンは、キリストに従う事を最優先する者である。9：60

彼に言われた、「その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい。あなたは出て行って神の国を告げひろめなさい」（６０節）

この箇所に３人の人が出ていますが、いずれも主に従って行くという思いを表しています。３人の人に対するキリストの答がでていますが、この３人に共通なことがあります。それは条件付で従うということです。

最初の人に対して、キリストは「あなたは律法学者であり、生活を保障されている。だが、わたしに従う者は生活の困難があり、眠る所もない流浪の旅である」ことを告げています。

第二番目の人は、まだ父親が亡くなっていないが、その最後を見届け、葬式という務めを果したら「従って行きます」と言っています。キリストは「葬式のことは、この世の人に任せなさい。神様のことを伝道するのは緊急を要することであるから、すぐに従いなさい」と言われています。

第三番目の人は、「まず家の者に別れを告げてから従います」と言っています。キリストは、「従うのは今だ。あなたは新しい生活に入る、古いものは過ぎ去ったのだ。わたしに従う者は前を向いて生きる人生に入ったのだ」と答えています。この三者がキリストに従ったとは記されていません。いずれもキリストに従って行くことをためらい、引き下がってしまったようです。この箇所から学ぶことが三つあります。

第一に、キリストに従うのは「今」です。過去は過ぎ去り、もう二度と帰ってきません。私たちは一秒後のことも分からないのですから、未来のことは皆目わかりません。私たちは様々な計画を立てていますが、「主の許しがあれば、その計画は行われる」という事です。しかし、「今」この瞬間のことは分かります。信仰の面で言えば、今、主に従うことです。今朝、「きょうは主の日だ。礼拝に行こう」という思いを持って支度し、礼拝に出席できたことを感謝します。ところで、きょう礼拝に出席し、来週は休むとします。休むのは１回だけと思いますが、水曜日の祈り会に出席しなければ、教会を離れている期間は２週間になります。日曜日の仕事、交代勤務、試験、健康状態、学校行事、部活、出張などいろいろな事情があります。そのために、この礼拝で「来週も礼拝に出席できるように導いて下さい」という祈りを捧げることが必要です。日曜日は朝の礼拝の他に夜の礼拝もあります。週の半ばには水曜日の祈り会があります。火曜から土曜まで早天祈祷会があります。また、目覚めたら「きょうという一日」を大切に生きるために、聖書を読む、祈ることによって一日を始める習慣を身につけるようにして、主に従って行くことが大切です。

第二に、キリストに従うことは教会生活を通してなされます。心で信じていれば、教会に行かなくてもいいと言う人がいます。そういう人は、最初のうちは規則正しく聖書を読み、祈りますが、だんだん不規則になり、やがていつの間にか聖書から遠ざかり、祈りもしなくなってしまいます。キリストは言われました、「わたしから離れたては、あなた方は何一つできない。人がわたしにつながっていないならば、枝のように外に投げ棄てられて枯れる。人々はそれをかき集め、火に投げ入れて焼いてしまうのである」（ヨハネ１５：５後半―6）。ヘブル書は「ある人たちが、いつもしているように、集会をやめることはしないで互いに励まし、かの日（キリスト再臨の日）が近づいているのを見て、ますます、そうしようではないか」という警告と勧めを告げています（ヘブル10：25）。クリスチャンの徴は共に集って主を礼拝し、共に祈り合うことです。

第三に、キリストに従うのは、ほかの誰でもない、あなた自身です。ペテロのことを思い出します。ペテロはキリストから「わたしに従ってきなさい」と言われ、「はい」と返事をしました。返事をしながら、ふと横を見るとヨハネがいたので、「主よ、彼はどうなりますか」と聞いてみました。キリストは、「わたしはあなたに話している。彼のことはあなたには係わりがない。あなたは、わたしに従ってきなさい」とペテロに答えています（ヨハネ21：18－22）。キリストは、今朝私たちひとり一人に個人的に語りかけておられます。主の語りかけを受けて行きましょう。

3、キリストの弟子であるクリスチャンは、キリストに従う決断をする者である。9：62

イエスは言われた、「手を鋤（すき）にかけてから、うしろを見る者は、神の国にふさわしくない者である。9：62

キリストに従うことは全てにまさ優先事項です。時には人間的に離れがたい者から離れて行くという決意が必要です。家の者に別れるということは悪いことではありません。しかし、キリストはこの人が家族の所に行けば、従ってくる決心が鈍ることを察知したのでしょう。「もう、あなたは従う道に踏み出したのだ。その決心を鈍らせないために、ひたすらに前に向かって進みなさい」と言われたのです。鋤（すき）とは畑を耕す道具です。固い地面を牛が力一杯に鋤を引いて行くのを、農夫が曲がらないようにコントロールしながら進みます。後ろを振り返ったら前に進めません。これは、キリストを信じたら、過去に別れを告げて前進しなさいとの意です。

私たちはキリストを信じることを決断しました。ところで決断とは何でしょうか・・・。

決断とは Commitment