わたしの平安をあなた方に与える

わたしの平安をあなたがたに与える。ヨハネ14：1,27　　　　　　　　　　　　　主の2005.11.20礼拝

毎週金曜日午後から東京へ出かけ、夜６時半から８時まで神学校で授業を受け持っています（今は説教学を教えています）。終わって帰って来ると１０時半ぐらいになります。行き帰り列車を利用するのですが、江戸の昔は、熊谷から歩いて東京（江戸）へ出るのに２日はかかったことを思い、便利になったことを感謝しながら、毎週金曜日の神学校奉仕をしています。ところで、現代の特徴の一つは旅人の増加です。世界中に航空網が張り巡らされ、自動車が普及し、また容易に旅の情報を得ることができますので、世界中どこにでも行けます。私たち夫婦は夏にイギリス・ノルウエーに出かけました。旅行をしながら考えたことは、旅行には二つの大事な要素がある。一つは行く先と何の目的で旅をするかということです。私たちは、行く先はイギリス・ノルウエーである。目的はロンドンとオスロの教会でメッセージをする事。現地に住む日本人の方々に個人伝道をするという事でした。もう一つはなるべく荷物を少なくして身軽であるということです。その二つのことは私たちの人生にも当てはめることができます。ペテロは、「あなた方は、この世の旅人であり、寄留者である」と言っています（Ⅰペテロ2：11）。クリスチャンは人生の旅路を、天国に向って進んでいるのですが、まとわりつくこの世のものを棄て去って、身軽になって進んで行くことが旅の秘訣です。

本日はヨハネ14：1,27の御言葉です。人生の旅路において、しばしば心配事や怖れや不安に直面しますが、救主、主であるイエス・キリストは私たちひとり一人に対し、14：1「心を騒がせるな」と励まして下さり、心配の代わりに、14：27「わたしの平安をあなた方に与える」と約束されています。聖書朗読の詩篇６８篇の中で、ダビデは「日々にわれらの荷を負われる主はほむべきかな。神はわれらの救いである。われらの神は救いの神である、死から逃れ得るのは主なる神による」という信仰の告白を歌っていました（68：19）。私たちの人生にはたくさんの重荷があると思いますが、全ての人にとって共通な三つの重荷があります。「苦労（心労）」、「不安」、「罪」です。キリストが言われた「心を騒がせるな」と言う御言葉からメッセージを聴き、重荷を棄て去って、祈って、新しい一週間を共に出発して参りましょう。

内　容

1、キリストを信じて、人生の重荷である苦労（心労）を棄て去ろう。

2、キリストを信じて、人生の重荷である不安を棄て去ろう。

3、キリストを信じて、人生の重荷であり、人を滅びに追いやる罪を棄て去ろう。

資料問題

ヨハネ１４－１６章は、キリストが十字架にかかる前の晩に弟子達と食事（主の晩餐、過越の食事）をされた時に、世を去るに際して弟子達に語られた訣別遺訓である。１節「信じる」、２回語られている。弟子達はキリストの受難、十字架に際して、神を信じ、キリストを信じ、心を乱さないで、師との暫しの別離に耐えるようにしなければならない。２７節「わたしの平安」、キリストはサタンに打ち勝って得た平安を下さるのである（12：31、16：33参照）。

１４―１６章において、特筆すべきは、キリストによって聖霊の教えが詳細に語られていることである。

1、キリストを信じて、人生の重荷である苦労（心労）を棄て去ろう。

「あなた方は心を騒がせないがよい」（14：1）、「あなた方は心を騒がせるな、また怖じけるな」（14：,27）

「心を騒がせる」とは心配事で心がいっぱいになり、落ち着かない、イライラしている不安定な状態のことです。人生には様々な形で苦労があります。

①自然災害によって、例えば地震で家を無くすというような苦労があります。

②病気という苦労があります。

③病気が進めば死という苦労があります。私たちは普段は死を考えていませんが、肉親や親しい人が病気や事故で亡くなると、死を怖れ、愛する者を失た深い悲しみや痛みを心に感じます。

④経済的な苦労があります。

⑤人間関係の破れがあります。その原因は人の愛が冷えることにあります。キリストは「終りの時代には不法がはびこり、多くの人の愛が冷える」（マタイ24：12）と預言されました。現代ほど愛の冷えた時代はないでしょう。最近のニュースで、娘が母親に毒薬を飲ませるという悲惨な事件があり、親が子どもを虐待するという事件が後を断ちません。

様々な苦労の中で、多くの方々は、「なぜ私がこんな目に遭うのだろうか」「私だけが貧乏くじを引いている」と思ってしまいます。しかし、聖書は「あなた方が遭った試練で世の常でないものはない」と言い、さらに続けて、「あなた方を耐えられないような試練に遭わせることはないし、必ず逃れの道が備えられている」と告げています（Ⅰコリント10：13）。ここに１００人の方々が礼拝を捧げていますが、苦労のない人は一人もいません。かたちや中身は違いますが１００通りの苦労があると思います。苦労があるという点では牧師も同じです。先週１５日―１７日まで東京の本部で教団総会がありました。日本全国にアッセンブリー教団に属する教会・伝道所が214あり、その代表が集り、一年間を振り返り、２００６年度に向って行くために討議をし、祈りました。多くの牧師達に会いましたが、ある牧師は、教会の中に派閥争いがあり（コリント教会のように）、その処置に追われ、心身ともに疲れ果て、牧師夫人は体調を壊してしまったということを打ち明けてくれました。その話を聴きながら、私は皆さんに祈られている、支えてもらっていることを改めて感謝致しました。信徒も牧師も様々な苦労を背負っているという点では変わりがありませんが、牧師達のために祈って下さい。

人生の苦労という現実の中にあって、心からイエス様を信じ続けて行くことが信仰です。何故ならキリストは私たちを愛して下さる、活きている唯一の救主だからです。キリストは、「誰でも重荷を負って苦労している者はわたしの許に来なさい。あなた方を休ませてあげよう。わたしがあなたと一緒に重荷を背負ってあげる。わたしは決してあなたを離れず、あなたを捨てない」（マタイ11：28－30、ヘブル13：5）と言われます。キリストは、私たちだけに苦労をさせない、一緒に苦労を背負い苦楽を分かち合い、私たちを力づけ、慰め、励まし、生きる喜びの力を魂に満たして下さいます。

Aさんの夫は職人として腕はいいが、酒乱のため禄に働かない。そのためにAさんは身を粉にして働き、二人の子どもを養い、家計を支えた。「どうして私だけが苦労をするのか」と思い、世を呪い、人を呪い、生家の寺を呪い、夫を殺したいと思うほどに憎み、苦労と絶望の日々をおくっていた。ある時、自分の苦しみを心からの愛をもって聴いてくれた人がいた。その人はクリスチャンであると言った。その人の信じているものを知りたいと思い、教会へ足を運んでみた。「重荷を負って苦労している者はわたしの許に来なさい」というキリストの御言葉がAさんの心に響いてきた。やがてAさんは世を呪い、人を呪い、夫を憎んでいた罪、命と愛と喜びの源であるまことの神を信じていなかった罪を悔改め、キリストを自分の救主として信じ、心の苦しみから解放された。キリストを信じてから、憎み嫌っていたご主人に「私はあなたを憎んでいました、赦して下さい」と手をついて謝ったところ、ご主人は「いや俺が悪かった」と答え、やがてキリストを信じるようになったのです。

キリストを信じる時に人生は恵みに変わります。もちろん信じたからと言って、すぐに、自動的に全ての苦労が無くなるわけではありません。しかし、キリストが全てを最善に導いて下さるという信仰に立って、心を騒がせることなく、希望をもって生きる力が与えられます。苦労を棄て去ってキリストに縋って行くようにお祈り致しましょう。

2、キリストを信じて、人生の重荷である不安を棄て去ろう。

「わたしの平安をあなたがたに与える。わたしが与えるのは、世が与えるようなものとは異なる」（14：27）

キリストは、「わたしが与える平安は、世が与えるようなものとは異なる」と言われました。世が与える平安とはどんなものでしょうか。世が与える平安によって、私たちは本当に平安になれるのでしょうか・・・。キリストは「世が与えるもので、人は平安になれない」とハッキリ言っています。

世が与える平安とは、運命論、宿命論に基づくものです。私たちの一生は、既に決まっているので、それを受け入れるしかないという考えです。どんな運命、宿命の下にあるのかを知りたいという求めに応じて、それを解き明かすのが占いであると主張し、占いによって、運命、宿命から逃れるようにさせると言います。テレビにタレントを出演させ、その人の過去の失敗の原因を言い、これからの運命を占い、予告する番組があります。

私たちの運命は決まっているのでしょうか・・・。そんなことはありません。聖書を通して神様は言います、「神は、神を愛する者たち、すなわち、ご計画に従って召された者たちと共に働いて、万事を益となるようにして下さることを、私たちは知っている」（ローマ8：28）。神は私たちの人生を明るいものに変えて下さいます。運命、宿命によって、人間を縛るようなことはしません。

クリスチャンの家に、顔見知りのラーメン屋の主人が突然訪ねてきた。「実は店を建て替えることになった。占いに見てもらったら、建て替えている間、この方角に住んでいなさい。それを外れると店は繁盛しません」と言われた。「その方角がここです、建て替えの間、間借りをさせて下さい」という事でしたが断り、クリスチャンは「占いに縛られてはいけない」と言って、キリストの恵みを伝えました。占いにハマると自由がなくなります。占いに反すると罰があたるように思って、それに従ってしまうからです。身近な事では、来年度の暦が配られる季節ですが、暦によっては大吉、仏滅などと記してあって、きょうは良い日、悪い日ということが決められています。例えば結婚式には大吉の日を選びます。しかし、それには何の根拠もありません。クリスチャンにとっては、全ての日が恵みの日です。運命、宿命に縛られると、生きる自由を失うことになります。

世が与える平安は因果応報論です。「あなたが前世に悪いことをしたから、それが祟っています」と言います。「その祟りを無くす為にこれこれのことをしなさい」と言います。これこれの事とはお金の要求です。ある女性が胸が痛くなった、病院に行き、占いにも行った。占いの人が、「あなたの三代前のお祖父さんが、寺に植木を寄進（寄付）したいと思ったが、果せなかった。それが心残りで迷っている。その霊があなたに取り付いて、胸が痛いのです。供養するので、これこれの金額を納めて下さい」と言われた。この方は、何かおかしいと思って、牧師に相談し、キリストを信じて救われ幸いでした。このように、世が与える平安とは人間の恐怖心につけこみ、お祓いをしてあげるからお金を払いなさいという類のものです。

キリストが下さる平安は、心に喜びと希望とをもたらすものです。Kさんという女性がいます。彼女は恵まれた家庭環境で育ちましたが、心の虚しさ、一人になった時に襲ってくるさびしさ、自己嫌悪の気持に苛まれ、その不安を隠すために小学６年の時からタバコを吸い、盗みをするという状態でした。何度も死にたいと思い、自分は消えてなくなりたいと考えていました。１８歳の時、幼なじみに誘われ、教会に行き、明るく、暖かいものを心に感じた。牧師から、イエス様が「私の罪のために十字架にかかって、罪の身代りになって死んで下さった」ことを教えられ、罪を悔改め、祈りを捧げた。その時に心が喜びでいっぱいになった。洗礼を受け、充実した日々が続き、付き合っていた彼が救われ、結婚し、子どもも二人与えられた。何の心配もなかったのですが、長女が突然に引き付けを起こした。脳波に異常があり、特発性てんかんと診断された。ショックであったが、「主は与え、主は取られる。主の御名はほむべきかな」（ヨブ1：20）との御言葉が与えられ、「病気であっても主の栄光のために生きて行ける、この子が同じ病気をもっている子どもたちのために用いられるだろう」と思った。しかし、牧師は「主のご計画がある。先ず癒されるように祈ろう」と祈って下さった。主の平安が私の心に与えられ、それ以来、発作はなく、子どもは守られています。

あなたの不安は何でしょうか・・。心の問題、病気、家族の事、経済の事でしょうか。どんな事でも祈るならば、キリストはKさんに応えて下さったように、あなたの祈りにも必ず応えて下さいます。

3、キリストを信じて、人生の重荷であり、人を滅びに追いやる罪を棄て去ろう。

「神を信じ、わたしを信じなさい」（14：1）、「わたしは平安をあなた方に残して行く」（14：27）

第一に「キリストを信じて、人生の重荷である苦労を棄て去ろう」、第ニに「キリストを信じて、人生の重荷である不安を棄て去ろう」という決意をしました。第三に「キリストを信じて、人生の重荷であり、人を滅びに追いやる罪を棄て去ろう」というメッセージを聴いて行きましょう。人間を苦しめ、人間を滅びに追いやる罪は、キリストが十字架によって取り去って下さいます。

もともと人間は神の霊を吹き入れられて、初めて生きる者になりました（創世記2：7）。人間にだけ霊があるので、言葉を話し、物事を考える力があり、そして神を礼拝する心があります。サルがどんなに進化したとしても、言葉を話し、神を礼拝することは絶対に不可能です。何故ならサルには霊がないからです。人間にだけ神の霊が与えられ、人間だけが神を礼拝するものです。ところが、人間は神に背き、神から離れて罪人になり、死んで地獄に行く者に堕落してしまったのです。愛と喜びと命の源である神から離れている人間は、憎しみと悲しみとを背負い、命を失い滅び行く者になりました。神から離れた人間は、神を愛する代わりに自分だけを愛する者になり、お金を愛し、神を謗り、親に逆らい、人の恩を忘れ、人に不親切な無常な思いを持ち、平気で人を裏切り、快楽を愛し、神を汚す者になっています（Ⅱテモテ3：1－９参照）。このままで行けば、その行き着く先は地獄です。しかし、有り難いことに神は愛です。罪のために死んで、滅んで地獄に行く私たちを憐れんで下さって、神の独り子イエス・キリストを地上におくって下さいました。キリストは罪がないのに、人間の罪の身代りになって十字架にかかって死んで下さったのです。十字架にかかったキリストを見上げ、罪を悔改めてキリストを救主、主として心に迎えれば、誰でも罪を赦されて、生まれ変わることができます（新生、再生）。

キリストが言われた「神を信じ、わたしを信じなさい」、「わたしは平安をあなた方に残して行く」という言葉の意味は次のようです。「あなた方は罪人を赦す神の愛を信じ、愛を表すために十字架にかかったわたし（キリスト）を信じなさい。わたし（キリスト）を信じれば、あなたの罪は赦され、平安を得る事ができる。わたし（キリスト）が残す平安とは、十字架による罪の赦しである」ということです。

聖歌総合版１９６番（旧２２９番）の作詞者ジョン・ニュートン（1725－1807）のことを思い出します。彼は神から離れていた時に、奴隷商人でした。彼は船底に大勢の奴隷を動物のように押し込めても平気という無慈悲な男でした。神を怖れないと人間は限りなく悪くなり、愛のないことをします。その彼が救われ、奴隷商人をやめ、導かれて英国国教会の牧師になり、「驚くばかりの恵みなりき、Amazing grace」という讃美歌を作詞しました。その一節を直訳すると「驚くべきみ恵みー何と胸をときめかせる言葉かー私のような無頼漢をさえ救いたもうたとは！私はかつて失われていたのですが、今や神に見出され、かつて目が見えなかったのですが、今や見ることができます」という意味になります（大塚野百合訳「讃美歌・聖歌ものがたり」より）。

もう一度、ヨハネ14：1,27を読みます。

1、キリストを信じて、人生の重荷である苦労を棄て去りましょう。

2、キリストを信じて、人生の重荷である不安を棄て去りましょう。

3、キリストを信じて、人生の重荷であり、人を滅びに追いやる罪を取り去ってもらいましょう。

＊聖歌総合版１９６番（旧２２９番）「驚くばかりの恵みなりき」を讃美し、お祈りを捧げます。

祈　り

天地の主である神様、独り子であるキリストの救いに感謝します。キリストを信じて、人生の苦労を棄て去り、不安を棄て去り、罪を棄て去り、恵みの日々を前進できることを感謝します。それぞれの方々の祈りに応えて下さい。１２月４日のスティーブン・ケイラー師集会に２回出席し恵まれるように導いて下さい。１２月１８日こどもクリスマス、２３日クリスマス祝会、２５日クリスマス礼拝・洗礼式を祝福して下さい。平安を与えて下さるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ヨハネ注解―フランシスコ会、黒崎、口語略解、LAB,　ライル。「わたしを変えた愛・福音出版社」