クリスマスの恵みー自分を捨てて、私たちを救われたキリスト　ピリピ2：4

クリスマスの恵みー自分を捨てて、私たちを救われたキリスト　ピリピ2：6－11　主の2005.12.25クリスマス礼拝

神学校2年生の時に、一級上の人が同じクラスに入ってきました。この方は健康の具合で休んでいたのですが、復帰して私たちと同じクラスで学ぶことになったのです。しかし、どうしても健康が回復せず、腎臓の病気でしたが、召されて行きました。最後の頃に、医師が「腎臓移植をすれば助かるかも知れない」と言いました。その頃の医学常識では、血縁関係の人の腎臓が良いということでしたが、彼には血縁の人が誰もいないということで、その治療が出来ないという事でした。その時に彼の母教会の女性牧師が「私の腎臓を提供してもよいので調べて下さい」と申し出ました。それは万に一つの確率で、自分の腎臓が適合すれば使って下さいという願いを込めての申し出であったと思います。しかし、彼は病状が急変して天に召されて行きました。

本日はピリピ2：6－11です。この箇所で、キリストは神のかたちを捨て、人間となり、僕すなわち奴隷のようになり、最後には命を捧げて十字架の死に至ったお方である。キリストが死んだのは、私たち人間を罪から救うためであったのですが、キリストは死んで終りではなく、死から甦り、栄光を受けた勝利のお方であると告げられています。女性牧師は、腎臓移植を申し出るほどに病気の神学生を案じていました。キリストは罪に悩み、人生の苦難を受けている私たちのことを心配し、人間の罪の身代りになって、実際に命を差し出して十字架の上で死んで下さいました。本日はクリスマスの日です。23日に教会の外に出て、行田商工センターホールを会場にしてクリスマス祝会を開き、多くの新しい方々と共にクリスマス礼拝、祝会を行い、イエス様の恵みに満たされました。本日はクリスマス礼拝であり、洗礼式があります。聖霊の導きの中に、ご一緒にクリスマスの中心であるキリストのメッセージを聴き、共に祈って、２００５年末最後の一週間を出発し、２００６年に向けて備えて参りましょう。

内　容

1、キリストは、私たちのためにご自分を捨てて下さった。2；6－8

2、キリストが、私たちのために甦って活きていることを感謝して行こう。2：9－11

資料問題

ピリピ書はパウロの四獄中書簡の一つである。２：6－１１節は初代教会の讃美をパウロが引用し、彼自身に啓示されたキリストの十字架、復活をハッキリと加えている箇所である。８節「十字架の死に至るまで」、十字架はパウロに示されたキリストの救いの最も大事な点であり、９節「彼（キリスト）を高く引き上げ」、キリストの復活も同じく最も大事な点である⇒Ⅰコリント15：1－11を見よ。8節「十字架の死に至るまで」、イザヤ53：12に歌われている「死に至るまで自分の魂を注ぎ出した」ヤーウェの「苦難の僕」を思い出させる。１１節「イエス・キリストは主である」、初代教会の基本的な信仰宣言である（使徒2：26、ローマ十：９,Ⅰコリント１２：３参照）。

1、キリストは、私たちのためにご自分を捨てて下さった。2：6－8

キリストは神のかたちであられたが、神と等しくあることを固守すべき事とは思わず（神のあり方を捨てられないとは考えず）、かえって、おのれをむなしゅうして僕のかたちをとり、人間の姿になられた。その有様は人と異ならず、おのれを低くして、死に至るまで、しかも十字架の死に至るまで従順であられた。（2：6－8）

クリスマスになると、強く意識することはキリストが馬小屋の中に生まれたという事です。クリスマスは、神と等しいお方であるキリストが、栄光の姿をかなぐり捨てて、この世に人間として誕生して下さった日、しかも最も低い、賎しい、貧しい姿をもって馬小屋の中に生まれて下さった日です。皆さんもクリスマスというと、馬小屋、羊飼い、夜空にこだまする天使の大合唱、輝く大きな星、東の博士たちと黄金、没薬、乳香などの贈り物のことを連想すると思います。

６－８節を読んでみます。キリストは神と等しくあること、神のあり方としてのプライドにこだわらずに、おのれを空（むな）しうして、人間となられたお方であること。キリストは僕すなわち奴隷のような姿をとり、私たち人間のために十字架の死を受けたお方であることが分かります。

何故キリストが、おのれを空（むな）しうして、人間となり、十字架の死に至るまで歩んで下さったのかという意味を知っておきましょう。

第一に、罪ある人間は神を見出すことができないので、キリストがこの世界に来られたのです。

先週の図を思い出して下さい。またスクリーンに写してもらいます（添付してあり）。人間が神に近づく事はできないので、神様の方から私たち人間に近づいてこられたのです。何とありがたいことでしょうか。最初は預言者が遣わされました。そして終りの時代にキリストが遣わされました。キリストは３３年半の間、人間として地上を歩まれ、最後に人の罪のために十字架かにかかり、救いの道を開かれました。しかし死んで終りではなく、三日後に復活され、キリストを信じる者には永遠の命が与えられることを確実にされ、天に昇り、今は天上で私たちのために祈っておられます。日本人は年末から新年にかけて三つの宗教の信徒になります。本日２５日まではクリスマスの真似事をするキリスト教、明日から大晦日の煩悩を振り払う除夜の鐘を聞くまで仏教、正月三が日はとにかく初詣ということで神道です。それが終われば、あとは宗教には無関心です。何と愚かなことでしょうか。そこでキリストがご自分を現して、私たちに本当の救いを明らかにするめに人となって来て下さったのがクリスマスです。

第二に、罪ある人間を救うために、キリストはこの世界に来られたのです。

罪とはまことの神を信じないことです。愛と赦しときよい神様から離れている事、信じない事が罪です。罪ある人間は傲慢であり、自分だけはいつも正しいと思い、他人を見下げます。キリストは謙り、相手の立場に立って、自分に罪がないのに人間の罪の身代りになろうと決意された。それで神と等しくあることを固守すべき事とは思わなかった。神としてのあり方を捨てられないとは考えなかった。人間を救うためであるなら、わたしの全てを捧げよう。わたしが人間の苦しみを引き受けよう。わたしが人間の罪を背負って十字架上で神の罰を受け、死んで行こうということを実際に行うために、キリストはクリスマスの日に人として生まれたのです。キリストは３３年半の生涯を通して人間の苦しみを体験され、最後に十字架にかかって罪の身代りとなり、罪の赦しの道を開かれたのです。話がそれますが、昨日上野公園ホームレス伝道に行きました。３００名が野外で先ず礼拝をささげ、その後給食の時をもちました。金曜日クリスマス祝会があり、遅くなったにも関わらず、皆さんが愛のおにぎり５６７個を献げて下さり感謝します。ホームレスの方々に心を込めて手渡しました。昨日は寒く、メッセージを語る時、最初は口がこわばっていました、オルガンを弾いていたニツ寺さんの手が霜焼けになりました。毎月ホームレス伝道に行っていますが、こういう寒さの中で路上生活をしている人々の窮状の一端を改めて体験させられました。キリストは人としてあらゆる試練を受けたお方です。貧しさ、ホームレス、人からの裏切りなど、私たちの苦しみをご自分の身をもって実際に体験されています。そして罪がないのに、罪ある私たちの罪を背負って十字架にかかった愛の救主です。

第三に、キリストを信じること、信じ続けることが信仰です。

キリストは天の栄光を捨てる決断をして、人間となりました。キリストは、ゲッセマネの園で徹夜で祈り、人間の罪の赦しのために十字架にかかって身代りになるという決断をされ、十字架に向いました。このキリストを信じ続けることが信仰です。ですからキリストを信じるということは、キリストのように決断の生活をすることです

決断ということですが、キリストは天から地上に下って人間となり、十字架にかかると言う決断をされた、まことの決断の模範のお方です。私たちもキリストに倣って、信仰生活は決断の連続であることを心に留めて、祈って行くことが大事です。

決断には三つの要素があります。

第一に、決断とは意志によってなされる決心であり、頭ではなく心の全体でなすことです。

キリストに自分の身を任せること。キリストに信頼し、キリストに縋り、すべての道でキリストを認め、キリストに祈って行くことです。

第二に、取り消すのことのできない、また取り消す気持のない決心です。

何があっても、キリストが常に一番、私の人生のトップは常にキリストであるという生活を貫くようにすることが大切です。年末年始は異教行事の多いときです。初詣、おみくじ、占いが盛んな時です。例えば初詣に家族で行っていたが、クリスチャンになったので行かなくなると、そこで「なぜ行かないのか」ともめることになります。そういうことがあったとしても従って行くことを取り消したりはしません、という決心です。

第三に、危険を伴う決心です。

危険とは、実例ですが、キリストを信じて、洗礼を受けるという決断をしたことによって、夫から家を出るように言われた方がいます。それでも洗礼の決心は揺るがす、夫の心が軟化し、遂に洗礼を受けました。そして、反対していた夫がキリストを信じるに至ったのです。

この後、洗礼式があります。洗礼を受ける福本圭子さんは、水の中に沈んで、古い自分をお葬式します。水から上がることによって、キリストを心に宿し、キリストに結びつき、キリストの教会に繫がって信仰生活をして行きます。この大きな決断を神と会衆の前に公にするのが洗礼式です。福本圭子さんは、キリストを信じ、洗礼を受けるという全身全霊をかけた決心をし、何があっても取り消さないという決心し、家族の反対という危険を承知で洗礼を受け、やがて家族が救われるということを信じて、きょうの洗礼式に臨んでいますので、お祈りして下さい。クリスチャンの方々は自分の信仰の原点である洗礼式を通して、信仰の恵みを再確認し感謝を捧げましょう。これから洗礼を受ける方々は、一日も早く洗礼の恵みを受け、教会のメンバーとなって信仰生活を進めて行くように祈って下さい。

2、キリストが、私たちのために甦って活きていることを感謝して行こう。2：9－11

また、あらゆる舌が、「イエス・キリストは主である」と告白して、栄光を父なる神に帰するためである。（2：11）

キリストは、一度は私たち人間の罪のために十字架で死にましたが。死の三日後に甦って永遠に活きている主です。礼拝のはじめに「使徒信条」を告白します。その中でキリストについて、「・・・十字架につけられ、死にて葬られ、陰府に降り、三日目に死人のうちより甦り、天に昇り、全能の父なる神の右に座したまえり・・・」という告白を捧げました。使徒信条の告白のごとくに、キリストは死を打ち破って甦った、今も、そして永遠に活きている主です。

１０節、キリストの御前に「あらゆるものがひざを屈める」とありますが、これはキリストを神として礼拝することを意味しています。１１節「イエス・キリストは主である」とは最も短い信仰告白であり、キリストを神として信じ、崇める信仰の基本を言い表しています。

クリスマスの日に貧しい馬小屋に生まれたキリストは、十字架と復活を通して、全世界の救主であることが明らかになりました。クリスマスの良き日に、私たちも「イエス・キリストは主である」と告白し、キリストの愛をいただいて、聖霊によってキリストを伝道して行くように祈りましょう。

きょうはクリスマスです。最後に「イエス・キリストは主である」ということを信じ、キリストの愛を身をもって表して生きた宗教改革者マルティン・ルッターのことを伝えます。１６世紀、自由に聖書を読めなかった時代にルターは聖書を読んで、キリストを信じれば誰でも救われることができるという福音の真理を再発見し、カトリック教会の司祭をやめ、宗教改革の偉大な働きを推し進め、私たちの属しているプロテスタント教会の土台を据えた神の器です。ルターには６人の子どもがいて、その他に貧しい学生などの居候を常に１０人以上世話していたそうです・。ルターが天に召され、奥さんのカタリーナも天に召されて行きました。彼らの子どもたちが言ったそうです。「うちの父さんは聖書のドイツ語翻訳と言う大きな仕事をした。ところが何百万部も売れたお金は一文も自分のものにしないで、全部教会のために献げた。お母さんはいつも手にひび割れをつくって苦労していた。クリスマスに買ったプレゼントをもらったことはない。だけどお父さんとお母さんは、自分で作った歌を自分たちで歌ってプレゼントしてくれた。ぼくらの暗い人生に、二人は信仰の歌と、キリストを信じる明るい信仰の光を贈ってくれた。ぼくらはそういう両親を誇りにしている」と。こういう子どもたちこそ親の誇りです。さらに、当時、一家の主（あるじ）が死んだあと未亡人の奥さんには遺産が渡されなかった。それが法律だという国王にルターは「法律を変えて下さい。法律は人のためにあるはず」と迫って、ドイツ史上初めて奥さんに相続財産が渡るようにした。ルターは全人類に、子どもと奥さんに、大きな愛のプレゼントを贈ったのでした。

まとめ

1、2：6－8、キリストは、私たちのために天の栄光を捨て、人となり、十字架にかかり、救いの道を開いて下さいました。キリストが誕生されたクリスマスの日に、改めてキリストの救いに感謝をしましょう。今朝、キリストを信じる決断を与えられ、洗礼を受ける福本圭子姉の上に主の祝福が注がれ、キリストに従い続けて行く恵みの人生を前進するように祈って下さい。

2、2：11、キリストが、私たちのために死から甦り、活きている主であることを感謝します。「イエス・キリストは主である」ことを日々に告白し、キリストの愛を受けて、人のために祈り、素晴らしいイエス様の救いを伝えて行きましょう。

祈　り

天地の主である神様、尊い独り子であるイエス・キリストを救主として、この世界に遣わして下さったことを感謝します。クリスマスの日に、十字架にかかって救いの道を開くために来て下さったキリストの恵みをほめ讃えます。キリストを信じる恵みを与えられ、まことのクリスマスをお祝いできることを感謝します。ひとり一人が心の中にイエス様を迎え、主の救いに感謝し、甦りの命の力に溢れて、周りの方々に主の救いを伝えるように祈り、イエス様を紹介するように用いて下さい。洗礼を受ける福本圭子さんが、古い自分を水の中に葬り去って、キリストと共に生きる喜びの人生を前進して行くように、聖霊の力を与え、導いて下さい。

クリスマスの日に、私たちを救うために天の栄光を捨てて人となって下さった愛の救主イエス・キリストの尊い御名によってお祈りをいたします、アーメン。

参考文献ピリピ注解―フランシスコ会、黒崎、佐竹、口語略解、LAB、共同訳注解。「信徒の友１２月・日キ教団」