神の国を求める者は、神のことばに聴き従う

神の国を求める者は、神のことばに聴き従う　マタイ4：１－１１　　　　　主の2006.1.29礼拝

「注解新約聖書」１０巻の著者である黒崎幸吉（1886－1970、内村鑑三の直弟子）は、「人類にとって最大の幸福は、神のことばが文字をもって記され、聖書として我らに与えられていることである。『天地は過ぎゆかん、されど我がことばは過ぎ往くことなし』。天地よりも悠久なるこの聖書こそ実に人類の至宝である」と述べています。アメリカの伝道者ムーディ（1837－99）は、「私は信仰を求めて祈った。そしていつの日か信仰が稲妻のように落ちてきて、私を打つであろうと考えた。しかし信仰は来そうになかった。ある日私はロマ書１０章の中に次の句を見いだした。『信仰は聴くことによるのであり、聴くことは神のことばから来るのである』。私は聖書を閉じ、信仰を求め祈った。その時から私は聖書を開き、学び始めた。そして信仰は日々成長しつづけている」と言っています。

本日はマタイ4：1－11です。この箇所には、キリストがサタンの攻撃に対し、神の御言葉である聖書によって勝利していることが記されています。サタンは悪の源であり、悪霊どもの頭（かしら）です。サタンの力によって魔術を使うエルマに対し、パウロは聖霊に満たされ、エルマを睨み付け、「あらゆる偽りと邪悪で固まっている悪魔の子よ」と言って、神の力によって彼の目を見えなくしています（使徒13：8－12）。私たちも聖霊に満たされ、「聖霊の剣である聖書の御言葉」〈エペソ6：17〉によってサタンに打ち勝つことができます。２００６年度、「まず神の国と神の義とを求めなさい」（マタ6：33）という御言葉に従い、信仰の戦いに勝利し、前進して行くために、聖書のメッセージをしっかり聴き、祈って新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内　容

1、キリストは、サタンが示す見せかけの救いを退けている。4：2、3、6、8

2、キリストは、神の御言葉に対する揺るぎない信頼をもち、サタンに勝利している。4：4、7、10

3、キリストに倣い、神の御言葉によって勝利を得て行こう。4：11

資料問題

この箇所でキリストは旧約聖書より３回の引用をしている。４節は申命記8：3、６節は申命記6：16、１０節は申命記6：13である。キリストは、驚くほどに聖書に通暁しておられた。例えば、マタイ12：3－8、21：24、22：29、26：31、54、ルカ4：21、ヨハネ5：39、7：38,42、13：18を見よ。キリストは聖書の言葉を自由自在に引用し、父なる神の御心に従われた。悪魔とはサタンであって「敵」を意味する。創世記３章に登場し、またヨブ記に多く記されている。新約では「ディアポロス」とも言い、「この世の君」（ヨハネ12：31、14：30）、「この世の神」（Ⅱコリ4：4）、「空中の権をもつ君」（エペソ2：2）「闇の世の主権者」（エペソ6：12）などと呼ばれている。サタンの本質、起源等は、堕落した天使と言われている（イザヤ14：12－15、Ⅱペテ2：4、ユダ６節）。サタンはある範囲の自由を許され、神の子をすら誘惑するが、神と戦うことはできない（ヨブ1：7－12）。キリスト再臨の時、サタンは千年の間縛られ（黙示20：2）、その後解き放たれるが、最後に火の池に投げ入れられる〈黙示20,3,7－8、10〉。サタンは神に最も近い者を最も強く試み、時には光の天使に偽装することもある（Ⅱコリ11：14）。キリストは公生涯のはじめにサタンに勝利し、神の国の福音を伝え、十字架に向って進んで行かれるのである。サタンはこの後もキリストの十字架を阻止するために攻撃してくる（マタイ16：21－24）。だがキリストは十字架に向かい、人類の救いの道を開かれたのである。

1、キリストは、サタンが示す見せかけの救いを退けている。4：1－2、5、6、9

「・・石がパンになるように命じなさい」（３節）、「・・下へ飛びびおりてごらんなさい」（5節）、「・・ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」（9節）

この出来事は、キリストがヨルダン川で洗礼を受け、神の国の福音を伝道し、十字架に向って進んで行く直前のことです。キリストは聖霊によって荒野に導かれ、４０日４０夜断食をして祈り、腹ペコになり、体が衰弱している時に、サタンが近づき、キリストが伝道に出発しないように言葉巧みに誘惑をしています。サタンの目的はたった一つ、キリストを十字架につけさせないこと、キリストから十字架の思いを消し去ること、神と人間との間を敵対関係のままにしておくことです。サタンが最も怖れているのはキリストの十字架です。

なぜ、サタンは十字架を怖れるのでしょうか・・・。

はじめの人間アダムとエバがサタンに唆されて神の戒めを破り、罪人となってしまい（創世記３章）、サタンは勝利したかのようにみえました。事実、人間は罪を犯して以来、恵みの代わりに苦しみを、命の代わりに死と滅びを自らの身に招いてしまったのです。しかし、「神は愛なり」です。天地を創られた創造主であるまことの神は愛の神です。人間が罪に堕ちた時に、神は人間を冷たく突き放さないで、「やがてわたしの独り子であるイエス・キリストを救主として遣わす。イエス・キリストはサタンの力を十字架によって打ち砕く」（創世記3：15原紙福音）という約束をして下さいました。それから長い歳月が流れ、１９７５年前、この世に来られたキリストが人間の救いのために、十字架に出発する時がやってきました。本日の聖書箇所は、キリストが十字架に向かう事を、サタンが必死になってやめさせようとして三つの誘惑をしている場面です。サタンの誘惑の内容は次の通りです。

第１に、サタンは「人々の飢えを満たし、経済状態をよくすれば、皆が満足する」と誘惑します。キリストは、「人の生きる力は永遠の命を与える神の言葉に従うことである」と答えています。

第２に、サタンは「奇蹟をすれば、人々がについて来る」と言います。キリストは「多くの宗教が奇蹟を売り物にしている。わたしは神殿の頂上から身を投げるパフオーマンスをして、神を試みるような愚かなことはしない。奇蹟だけでは人の魂を救うことはできない」と答えています。

第３に、サタンは「一瞬でよいからサタンを拝め、そうすれば権力と世界中の富をあげる、それによって人々の欲望を満たし、人々は繁栄を楽しむことができる」と誘惑します。キリストは「神以外の者を拝みことは罪である。富は人を救わない。サタンよ、退け」と答えています。

サタンはキリストの十字架をやめさせるために、「もしあなたが神の子であるなら、人間のお腹を満たしてあげ、不思議な出来事をして見せ、富を分配すれば人間は満足する。それで充分ではないか」というこの世的な救いの道を提示したのです。しかし、聖書は「世と世の欲とは過ぎ去る」（Ⅰヨハ2：17）と告げています。サタンは人間の目先の必要なことを並べ立てています。食べればお腹はいっぱいになりますが、またお腹はすいてきます。不思議なことをすれば人は拍手喝采しますが、それはすぐに忘れられて行きます。富を分配したとしても、人間はもっと欲しいと言い出します。サタンの言うことは一時しのぎのものです。共産主義は富を平等に分ければ、人間は幸せになると言って革命を起こしました。ソ連では共産主義者が政府を組織し、皆が幸せになったかと言えば、その逆です。権力を握った者が富を独占してしまい、新たな不平等が生まれ、ソ連は７０年で滅びています。

サタンはこの世のものを与えることによって、キリストの十字架を阻止しようとしています。その理由は、キリストの十字架によってサタンの力が完全に砕かれてしまうからです。キリストはサタンの力を十字架によって滅ぼし、人間が創造主であるまことの神に立ち返る道を開くために来られた救主です。キリストは、サタンが示す見せかけの救いを退け、断固として十字架に向って行きます。キリストの勝利について、次に詳しく見て行きましょう。

2、キリストは神の御言葉に対する揺るぎない信頼をもち、サタンに勝利している。4：4、7、10

イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つのことばで生きるものである』と書いてある」（４節）、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」（７節）、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」（１０節）

サタンの執拗な３回の攻勢に対し、キリストは３回とも聖書の御言葉によって勝利をしています。詩篇１９篇を朗読しましたが、作者ダビデは、神の御言葉に聴き従って行けば、「あなたの僕は、これらによって戒めを受ける。これらを守れば大いなる報いがある」（詩篇19：11）と歌っています。キリストは神の独り子ですから、サタンを打ち破る計り知れない神の力をもっています。例えばキリストは悪霊を追い出し（マルコ1：26）、38年間病気であった人を癒す力をもち（ヨハネ5：5－9）、嵐を静め（マルコ5：39）、死人をさえ生き返らせる力を持っておられます（ヨハネ11：43－44）。しかし、ここでは神の御言葉によってサタンと戦い、その結果サタンに勝利するという報いを受けています。天地を創造された神の御言葉には神の力があります。私たちは聖書を持っています。聖書の体裁はふつうの本ですが、中身は神の御言葉です。旧約聖書39巻、新約聖書２７巻、合わせて６６巻全体が神の御言葉です。私たちは聖書を通して、自分の罪を示され、罪からの救主であるイエス・キリストの十字架と復活を信じ、罪を赦され、神の子になることができました。私たちはキリストを見たことがないのに、聖書を通してキリストのことを親しく知っています。それはキリストによって罪の赦しを与えられ、心の生まれ変わりを体験したからです（Ⅰペテロ1：8－9）。

ここで、神の御言葉である聖書について考えてみましょう。

第１に、聖書は、人間が本当に生きる道はキリストを信じる以外にはないことを教えてくれます。

多くの人々が、或いは多くの宗教が正しく生きようということを教えます。しかし、いくら良いことを教えられても、人間には正しいことをする力がありません。それは人間に罪があるからです。私たちは罪の力に打ち勝つことができません。例えば「嘘をつくな」と言われても、私たちは悪いと知りながら、「嘘も方便である」と言い訳をしながら嘘をついてしまいます。このように、私たちは罪の力に打ち勝つことができないということをいやと言うほど体験しています。サタンは人間に罪を犯させ、地獄への道連れにしようと、あの手この手で私たちを誘惑してきます。罪に打ち勝つためには、罪のない人が罪を償うというのが聖書の教えです。しかし「義人はいない、ひとりもいない」（ロマ3：10）というのが人間の現実です。そこで罪のない神の御子キリストが、罪に染まらないように聖霊によって処女マリヤより生まれ、その罪のない潔い身を十字架に献げて罪の赦しの道を開かれたのです。キリストによって、人間を罪から救い出す道を示すのは聖書だけです。

第２に、聖書を読めば読むほど信仰が恵まれて成長して行きます。

皆さんにお尋ねします・・・創世記から黙示録まで、聖書全体を何回読みましたか。昔、社会党という政党があり、河上委員長という方がいましたがクリスチャンでした。若い頃、彼はお父さんのために聖書を毎日読んであげていましたが、聖書の中には繰り返し同じことがくどくどと書いてある箇所があります。面倒になって、そこを飛ばして読んだところ、「神様は必要だから、同じ事を繰り返し書かせたのである」と言って、一字一句おろそかにしないで読むようにと言ったということです。皆さんも聖書を万遍なく読んで通読して下さい。皆さんの聖書は線を引いたり、印をしたり、書き込みをしたりして中が汚れていますか。聖書をしょっちゅう開いているので、開く場所が薄黒くなっていますか。いやいや大事な聖書ですから、教会から帰ると大事に机の上に飾っています。日曜日が巡ってくると、飾ってあったので聖書に埃が積もっているので、埃を払い落としてさて、聖書をもって教会へ行きますという方がいるかも知れません。

聖書を読んで、線を引いたり、めくる箇所が薄黒くなっている方々は、聖書が汚れた分だけ心がキレイになっています。ふだん聖書を読まないで本箱に飾っていて、教会に来る時に聖書にたまった埃を払う人のことを「フーポン信者」と言います。聖書を読んで、読んで、ボロボロになるまで繰り返し読みましょう。私も何冊も聖書がボロボロになり取り替えています。現在の聖書は家内の母の形見です。信仰の先輩である家内の母の祈りを感じながら読んでいます。

第３に、聖書を信仰の土台とする教会に加わり、キリスト中心の信仰を強めることが大事です。

教会では神の言葉である聖書が常に説き明かされます。救主イエス・キリストに結びついて行くことが強調されます。それはキリストが「わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしもあなた方とつながっていよう」（ヨハネ15：5）と言われているからです。キリストにつながるということは、キリストの体である教会に固く結びつくと言うことです（Ⅰコリ１２:１２以下）。

3、キリストに倣い、神の御言葉を信じ、祝福を得て行こう。4：11

そこで、悪魔はイエスを離れ去り、そして、御使たちが御許に来て仕えた。（１１節）

サタンは、キリストを離れて行き、天使たちがキリストに仕えたとあります。天使は神のメッセージを告げ、神の祝福をもたらすものです。１１節は、キリストが御言葉によって神に信頼し、サタンを退けた時に、神の祝福が与えられたことを示しています。神の御言葉である聖書を通して、キリストを信じることが信仰であり、キリストを信じる時に祝福が与えられます。

Ｎさんという女性がいました。彼女の家は、おばあさんの代から新興宗教を信じ、「何でも感謝」と教えられて育った。だが自分のうちに心から感謝できない嫌なものがあり、表面的に感謝することは偽りのように思って、その宗教から離れてしまった。駅で教会のパンフレットをもらい、教会を訪ねた時に、聖書を通して「ゆるし」ということを知った。また「罪」ということを教えられた。彼女は感謝なんかできないと思っていたが、それは人間の心の中に罪があるからである。その罪を赦すためにキリストが十字架にかかって、罪を赦すという愛を表して下さったことを知り、キリストを信じた。自分がキリストの十字架によって罪を赦され、愛されていることを知った時に、はじめて人を大切に思い、感謝することができるようになった。キリストの十字架を信じて以来、彼女の人生が変わり、キリストの愛に満たされ、感謝の心が豊かになり、仕事も祝福されるようになったのです。

今朝、サタンはこの世のものが先だ、この世のものをもって満足せよと誘惑してきます。キリストは「サタンよ、退け」と命じています。キリストは世のものは失せてなくなる。天地を創造した神の許に立ち返り、神の御言葉に従って生きなさい。そのためにキリストは十字架にかかり、誰でもキリストを信じるなら罪が赦され、生まれ変わり、人生に祝福が与えられることを約束しています。

あなたの問題、病気、仕事、結婚、進路、試験、家族、経済、人間関係、将来などを祈る前に、キリストが私のために十字架にかかって下さった救主であることを信じ、感謝しましょう。それから自分のことを祈りましょう。その祈りは必ず神の許に届き、答が与えられます。年頭の「まず神の国と神の義とを求めなさい」（マタイ6：33）という御言葉の通りに、まず、第一に神に信頼して行く時に、真の導きと解決が与えられます。

＊キリストは、サタンの見せかけの救いを退けています。

＊キリストは、神の御言葉に対する揺るぎない信頼をもち、サタンに勝利しています。

＊私たちは、過ぎ行く、無くなって行くこの世のものではなく、キリストの十字架を通して神の子にされていることを感謝し、祈りましょう。まずキリストの十字架によって救われていることを感謝しましょう。そして様々な求めや願い事を祈りましょう。その祈りは神の許に届いて行き、答が与えられます。聖歌514（496）「主と主のことばに頼るは楽し」を讃美し、祈りをささげます。

祈　り　　　天地の主である神様、キリストが神の御言葉によってサタンに勝利し、十字架に向ってくださったことを感謝します。私たちはキリストによって救われていることを感謝し、どんな時でも神の御言葉を信じ、聖霊によってサタンの誘惑を退ける力を与えられて行くよう導いて下さい。それぞれの祈りの課題に答えて下さることを信じます。これから行われる聖餐式をキリストの臨在をもって覆って下さい。御言葉によって勝利されたイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。