イエス・キリストをいつも思っていなさい　テモテ第二2：8

イエス・キリストを、いつも思っていなさい　テモテ第二2：8－13　　　　　　　　主の2006.4.30礼拝

パスカル（フランスの数学者、キリスト教思想家、1623－62）は、「人間は一本の葦に過ぎない。自然界で最も弱いものである。しかしそれは考える葦である」と言いました。一本の葦が強い風に吹き飛ばされてしまうように、人間も何かあると倒れてしまうような弱い存在ですが、神様は人間に考える力（思考力）を与えてくれました。私たちは物事について考え、例えば危険を避ける方法を考え、行動します。人間はあらゆる事柄を考え、その考えに基づいて行動します。「今日は日曜日、いろいろな用事がある。だが何をさておいても礼拝に行こう」というふうに考えて、礼拝出席という行動が生み出され、教会に足を向けて踏み出し、私たちは、今、ここにいます。そこで、ある人は「思考を蒔いて行動を刈り取る。行動を蒔いて習慣を刈り取る。習慣を蒔いて品性を刈り取り、人生が形成されて行く。だから良いことを考え、良い行動を生み出し、良い習慣を身につけ、良い品性の者として成長させてもらい、良い人生を送りたい」と言っています。

本日の聖書はテモテ第二2：8－13です。８節に「イエス・キリストを、いつも思っていなさい」と言われています。人間にとって考えることが重要であると言いましたが、聖書は、私たちが考えるべきことの中心はイエス・キリストであることを告げています。何故なら「キリストは道であり、真理であり、命である」お方だからです（ヨハネ14：6）。道とは、キリストを信じて、私たちは罪を赦され、罪から離れ、救いの道を進むことができるからです。真理とは、キリストは右にも曲がらず、左にもそれず、私たちを常に正しい方向に導く真理の救主だからです。命とは、キリストは死から甦った勝利の主で、私たちに永遠の命を下さる救主だからです。それで、パウロは「イエス・キリストを、いつも思っていなさい」と私たちに命じているのです。

今朝は洗礼式が行われます。洗礼は、罪に支配されていた古い自分を水の中に沈めて葬るお葬式です。洗礼を通してキリストに固く結びつき、祝福の人生を歩み続けるように、洗礼を受ける宇野さんのためにお祈り下さい。先に洗礼を受けた方々は感謝を捧げましょう。洗礼を受けたいと願う方々は「一日も早く早く洗礼を受けます」という決断をもって祈って下さい。

今朝も主のメッセージを共に聴き、祈って、新しい一週間を出発いたしましょう。

内容区分

1、イエス・キリストを、いつも思っていなさい。これがわたしの福音である。2：8―10

2、イエス・キリストは、変わらない真実をもって私たちを守り支えて下さる。2：11－13

資料問題

テモテ第二の手紙は使徒パウロの絶筆である（4：6を見よ）。８節、「ダビデの子孫として生まれ」とは、キリストの人間性を憶えよということである。この地上を歩み、苦しみの数々を体験された主は、私たち人間の苦しみを最も良く理解されるお方である。「死人のうちからよみがえった」とは、単にキリストの復活の事実を憶えよ」ということではない。キリストは復活して、今も生きておられる永遠の救主であることを記憶せよ。キリストは、今、生きているお方である、今生きておられる現存の主に信頼せよという積極的勧めである。１１－１３節は当時の讃美歌と言われているが、確定はできない。１３節、「彼は常に真実である」、私たちが不信仰、不真実であっても、キリストは私たちを捨てず、離れず、裏切らず、愛をもって守り、支えて下さる恵みの主であることを示している。

1、イエス・キリストを、いつも思っていなさい。これがわたしの福音である

ダビデの子孫として生まれ、死人のうちからよみがえったイエス・キリストを、いつも思っていなさい。これがわたしの福音である。（８節）

テモテへの手紙は紀元６７年、使徒パウロがロマで殉教する直前、若い牧師テモテに教会のあり方、伝道者の生き方を教えるために記されたもので「牧会書簡」と呼ばれています。しかし、牧師だけではなく、全てのクリスチャンにとって大切な教えが記されています。

「イエス・キリストをいつも思っていなさい。これがわたしの福音である」。この御言葉は、福音の心臓部と言われる大切な御言葉で、三つの大事な教えが含まれています。

1、キリストはダビデの子孫として生まれたお方である。

キリストは天の栄光の位を捨てて地上に降り、３３年半の人生を人間として過ごされ、人生のあらゆる苦しみ、悲しみ、試練を体験されたお方です。キリストは馬小屋に生まれ、貧しさの極みを体験しています（ルカ2：7）。良い事をしているのに悪口を言われ（マタイ11：19）、弟子に裏切られています（マタイ26：56）。子どもを亡くして悲嘆にくれる母親に限りなく同情し（ルカ7：11－17）、悪霊によって精神にダメージを受け墓場で暮らす惨めな若者を救い（マルコ5：1－20）、五度の結婚に破れ、村八分にされているサマリアの女性に新しい出発を与え（ヨハネ４：1－29）、１２年も長血の病で苦しむ女性に癒しと救いと与えています（マルコ5：25－34）。キリストはあらゆる人生の悲しみ、痛み、別れ、病、苦しみの現場に足を運び、ひとり一人の問題を解決しています。そして、人間に苦しみと死をもたらす罪の解決のために、罪の汚れのない潔い身を十字架に捧げて、私たちの罪の身代りになって救いの道を開いて下さったのです（Ⅱコリ5：21）。

2、キリストは死人のうちからよみがえったお方である。

罪の罰は死んで地獄に行くことです。キリストは十字架に死に、陰府（よみ）にまで降りましたが、死を滅ぼして復活され、今、ここにおられる、生きている主です（黙示録1：17－18）。キリストは生きておられますから、私たちの祈りに答えて下さいます。キリストは「何事でも、わたしの名によって願うならば、わたしはそれを叶えてあげよう」（ヨハネ14：14）と約束されています。

3、キリストを個人的に信じた者は「これがわたしの福音である」ことを言い表す。

一度は十字架の上に死んだが、死を滅ぼして生きている救主イエス・キリストを信じれば誰でも救われ、永遠の命を受けて新しい人生が始まる。このことを信じ、体験しているパウロは、「これがわたしの福音である」と言っています。私たちも同じです。９節以下に、パウロは、自分は福音のために捕えられている。しかし神の言葉はつながれてはいない。私はキリストを信じ、キリストによって与えられた罪の赦しによって心に喜びがある。この罪の赦しと心の喜びを、周りの人々に伝えている。伝えられた人々は、キリストを信じ、同じように喜びを受け、その喜びを次の人々に伝えるようになる。心から心へと福音は確実に伝わっている。だから神の言葉はつながれていない。私の身は獄中にあって不自由であるが、神の言葉はつながれずに広まっている。パウロは、神の言葉が伝えられ、すべての人が永遠の命を受けて行くようにということを心から祈り願っているのです。

※「イエス・キリストを、いつも思っていなさい」・・・キリストは私たちのために十字架にかかり、陰府の深みにまで行かれましたが、死を打ち破って甦り、永遠に生きておられる救主です。パウロは、十字架とよみがえりにより、自分を救ってくれたキリストを愛し、「キリスト我が内に在りて生くるなり」と告白し（ガラテヤ2：20）文語訳）、キリスト一筋の人生を貫いています。彼はキリストのために気が狂っていると言われるほど、キリストを愛し、キリストを伝え、キリストの教会に仕えています。キリストに身も心も捧げきったパウロの姿は「キリストきちがい、Jesus crazy」と言うことができます。私たちはいろいろ夢中になるものをもっています。曰く音楽、野球、様々な趣味、食べること等々何をさておいても、それにのめり込んでしまうものを持っているようです。私たちは生きるにも死ぬにも（ロマ14：8）、飲むにも食らうにもキリストの栄光を表しなさい（Ⅰコリ10：31）と言われています。ですから、キリスト以上に夢中になるものがあるとしたら、それは霊的に危険です。

ここでキリストをいつも思い、キリスト一筋、キリストきちがいになる秘訣を学びます。

キリストきちがいとは・・・。

他のいかなる人についてよりも、他のいかなることについてよりも、次のことを願っています。

1、私はむしろ主イエスについて考えたい。

2、私はむしろ主イエスについて読みたい。

3、私はむしろ主イエスについて聞きたい。

4、私はむしろ主イエスについて語りたい。

5、私はむしろ主イエスに仕えたい。

キリストきちがいになるためにはどうしたら良いのか、

1、主イエスと共に時を過ごす・・・・・・デイヴォ－シヨン、黙想

2、主イエスについて時を費やす・・・・学び　ルカ24：13－35

3、主イエスのために時を費やす・・・・奉仕

4、主イエスに対して時を費やす・・・・・祈り・

2、イエス・キリストは、変わらない真実をもって私たちを守り支えて下さる。2：11－13

次の言葉は確実である、「たとい、わたしたちは不真実であっても、彼（キリスト）は常に真実である。彼（キリスト）は自分を偽ることが、できないのである」。（１１，１３節）

１１－１３節は初代教会の讃美歌といわれています。メロディーがあったのかどうか分かりませんが、キリストを讃えるさんびであることは間違いないようです（Ⅰテモテ3：16にも讃美歌がある）。紀元３３年ペンテコステの日にエルサレムに教会が誕生して以来、紀元３１３年まで教会は迫害の日々を歩んでいました。現在のような聖書のない時代にあって、人々は迫害に耐え、信仰の戦いを進めて行くために、キリストへの信仰を歌にうたいこんで励まし合っていました。クリスチャンに讃美が与えられているのは恵みです。クリスチャンの特徴の一つは歌です。聖歌、讃美歌、ワーシップソング、プレイズ、ゴスペルなどいろいろな歌があります。大いに歌って下さい。ダビデはうたっています、

主に従う人よ、主によって喜び歌え。主を讃美することは正しい人にふさわしい。

琴を奏（かな）でて主に感謝をささげ、十弦の琴を奏でてほめ歌をうたえ。

新しい歌を主に向かってうたい、美しい調べと共に喜びの叫びをあげよ。（詩篇33：1－3新共同訳）。

教会に讃美がさらに満ち溢れるように祈りましょう、皆で讃美を歌いましょう。皆さんに祈ってもらいたいことは、次代を担う若い方々が、歌で、手話で、楽器で積極的に教会讃美のために仕えて行くようにということです。開拓伝道を始めた時は、家内が結婚の時に九州から持ってきた足踏み式オルガンが唯一の楽器でした。とても音色がよく、聖歌にふさわしいものでした。それからストップつきのオルガンを購入し、奏楽奉仕者が増え、ギターを弾く人が加わり、そして現在のように楽器が増え、音響設備も整い、教会讃美は豊かなものになっています。私は、ピアノ、オルガン、弦楽器、打楽器などのあらゆるもので主を讃美し（オーケストラのように）、また歌をもって、手話をもって主を讃へ、全会衆が主を喜び、主を讃美する群れとなるように更に祈って行きます。パウロとシラスはピリピで無実の罪でムチで叩かれ、足かせをかけられ、牢に投げ込まれてしまったことがあります。その中で彼らは神に祈り、さんびを歌い続けていました。二人の祈りとさんびは神様に届き、大地震が起り、獄の戸が開き、囚人を縛っていた鎖が解けてしまった。驚き恐れる牢屋番はパウロとシラスから「キリストを信ぜよ」と言われ、全家族がキリストを信じて、洗礼を受け、喜びにあふれたと記されています（使徒１６；19－34）。祈りとさんびは大いなる恵みをもたらします。今週も聖歌にあるように「歌いつつ歩まん、ハレルヤ、ハレルヤ、歌いつつ歩まん、この世の旅路を」（総合５１６、旧４９８番）という日々を進んで参りましょう。

本題に戻ります。１１―12節前半は殉教の覚悟をうたっています。１２節後半はキリストご自身の御言葉が思い出されます。「人の前でわたしを受け入れる者を、わたしもまた、天にいますわたしの父の前で受け入れるであろう。しかし、人の前でわたしを拒む者を、わたしも天にいますわたしの父の前で拒むであろう」（マタイ10：32－33）。１３節はキリストの真実が示されている恵みの御言葉です。私たちは不真実な者ですが、キリストは常に真実をもって、私たちを見放さず、棄てることをしません。私たちは主を裏切ったり、背いたり、受けた恵みを忘れて自分勝手はことをしがちな不真実な者です。しかし、キリストはどんな時でも、真実に（誠実にー新共同訳）私たちを守り支えて下さいます。

Ｙさんという方の証です。この方は２０歳の時に血液の病気が見つかり、治らないと宣告され、しかも遺伝性であるということが分かった。そのために婚約を破棄され、ギャンブルで気を紛らすようになり、働いたお金はすべて競馬、パチンコにつぎ込んでいた。ある日、風邪を引いて、薬をのめば血液の病気に悪いと知りつつ、のんでしまい、四日間生死の境をさまよい、一命を取り留め、入院生活が続いた。自分を世話してくれる看護婦が好きになった。退院後付き合いがはじまり、彼女がクリスチャンである事が分かった。彼女にプロポーズすると、彼女は三日間祈り、ＯＫしてくれ、教会で結婚式をあげた。結婚してから教会に出席するようになり、神様の愛、キリストの救いの恵みを受け、心が喜びで溢れた。子どもが二人与えられ、生活が安定して来た時に、心が世の中のほうに向いてしまい、教会から遠ざかってしまった。そして再び競馬とパチンコに夢中になってしまった。妻はひたすら夫のために祈り続け、寝ている夫の頭に手をおいて毎晩のように涙をもって祈ってくれていた。それが１３年間続き、祈りが聴かれ、Ｙさんは涙のうちにキリストの御許に帰った。Ｙさんは「自分は、キリストの十字架の時に逃げ出したペテロのような者であり、ギャンブルにうつつを抜かしていた。今は悔い改めて、私のために十字架にかかって下さったキリストにすべてを賭けて生きる日々を送っています」と言っています。

Ｙさんの証は正直な証です。クリスチャンの奥さんに巡りあい、信仰を与えられ、すべてが恵まれ始めた時に、不真実な気持に負けて、キリストの御許から逃げて生活をしていた。だがキリストは真実なお方です。奥さんの祈りを通して、背いているＹさんが滅びることがないように守って下さった。奥さんの涙の祈りを聴いて、信仰を回復して下さった。そして今では夫婦で信仰を一つにしてキリストに仕えています。イエス・キリストはきのうも、きょうも、いつまでも変わらない救主です（ヘブル13：8）。真実をもって、私たちを支え、導いて下さる永遠の救主です。

まとめ

1、2：8、イエス・キリストを思い続け、遂にはキリストの恵みで心がいっぱいになり、キリストきちがいとなるように祈って行きましょう。

2、2：13、イエス・キリストは真実な救主です。私たちを棄てず、離れず、守り支えて下さる救主です。イエス様に縋り、祈り、私たちも真実な思いをもって信仰の道を前進しましょう。

祈　り　　　天地の創造主である神様、救主イエス様を私たちの考えの中心、生活の中心にして行きます。イエス様が真実をもって私たちを愛し守って下さることを感謝します。聖霊に助けられて、私たちも、祈って、真実な主に真実をもって従って行けるように導いて下さい。洗礼式を祝福して下さい。甦って生きている、真実な主であるイエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献テモテ注解―バークレー、黒崎、ＬＡＢ、米田、文語略解。　「キリスト教の事典・三省堂」、「信仰雑誌証しより」