わが助けは、天と地を造られた主から来る　詩121篇１

わが助けは、天と地を造られた主から来る　詩121篇１－８節　　　　主の2006.6.4礼拝

以前に、匿名で教会にウエディングドレスが送られて来たことがあります。何か曰くのあるものであったようですが、差出人は宗教関係のものなので、きっと棄てるに棄てられずにいて、教会に送れば何とかなると思って、教会に送ってきたようでした。ウエディングドレスに限らず、私は、今までに頼まれて、多くの異教のお札、お守り、占いの本、経文、異端であるエホバの証人関係の文書、統一教会関係の原理講論、モルモン教の経典、大きいものでは仏壇、神棚などを預かり、イエス・キリストの十字架を仰いで祈り、人目につかぬようにして整理処分して来ました。いろいろな物の中で宗教がらみのものであると、すこし怖れる気持が出て、自分では処分しずらいようです。そこで、牧師である私に預け、処分を依頼して来るのです。「ご家庭で、いらなくなった古新聞、古雑誌はございませんか」と案内をしながら、ちり紙交換車がきますが、私は「いらなくなった何の力もない偶像はイエス・キリストの御名によって整理処分しますので、偶像処理専門家である牧師へお任せ下さい」ということで、偶像を整理処分して参りました。

本日の聖書は詩篇１２１篇です。詩篇は１５０篇あり、この１２１篇は短い詩篇ですが、詩篇２３篇と並んで、その内容は主の恵みに溢れていて、多くの方々が暗誦しているものです。２節に「わが助けは、天と地を造られた主から来る」と主なる神への信仰が歌われています。主とは、この天地万物を創造された、生きている、唯一の創造主であるまことの神様です。私たちは主によって命を与えられ、父母を通してこの地上に送り出されました。８節に「あなたの出ると入るとを守られるであろう」とあるように、命を与えて下さった主が、私たちの人生全般を導き、永遠の天国に連れて行って下さるのです。命を与え、人生を導いて下さる主に頼ることが、私たちの人生に幸いをもたらします。何の役にも立たない偶像ではなく、「わが助けは、天と地を造られた主から来る」ことを信じ、私たちを守り、支え、愛して下さる主のメッセージに耳を傾け、共に祈って、新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内容区分

1、主は、天と地を造られた創造主である。121：1－2

2、主は、私たちを守り、支えて下さる救主である。121：3－7

3、主は、人生を完成して下さる永遠の主である。121：8

資料問題

詩篇120篇―１３４篇まで「都もうでの歌」（直訳、上りの）という表題がついている。年一回祝う祭りにエルサレムに上ってくる巡礼者が歌ったものと解されている（出23：7、申16：16参照）。ある学者はバビロンからエルサレムまで上る捕囚の大帰還の歌とみる（エズラ7：7－9参照）。ある学者は、神殿内の婦人の庭からイスラエル人の庭に上る15の階段で、レビ人がこれら１５の歌を歌った慣習に由来すると考え、これらを階段詩篇と呼んでいる。巡礼者の歌と解するのが当を得ている。1－2節はエルサレム巡礼団のリーダーが歌い、３－８節は巡礼者同士が歌い交わしたものであろう（１－２節は一人称、３－８節は二人称である）。６節、太陽の害、月の害が言われている。中近東では昼間の炎熱の害に悩まされていた。（列下4：18－20）、月の害、マタイ17：14てんかんと訳されているギリシャ語は、直訳では月によって冒されるである。古代人は月がこの発作や精神異常を起こさせるものと考えていた。８節日常生活の一つ一つから、人の一生の全活動を含んでいる（申28：6、31：2）。

1、主は、天と地を造られた創造主である。

わたしは山にむかって目をあげる。わが助けは、どこから来るであろうか。わが助けは、天と地を造られた主から来る。（１－２節）

日本は山国です。私たちが住んでいる所は関東平野の熊谷ですが、周りを見れば、秩父の山々、浅間山、赤城山、男体山などが目に入り、富士山も眺められます。山を眺める時に、人間は不動のものを感じ、崇高さ、雄大さ、清澄さなどを感じます。

この121篇では、人々がエルサレムにある神の神殿に詣でるために旅をしています。エルサレムは海抜７７０メートルの高地で、シオンの山と呼ばれ、そこに都が建てられています。旅を続けてきた一同に、はるか彼方にシオンの山の上に立つエルサレムの都が見えてきた。彼らはエルサレムを仰ぎ見ながら、リーダーが１－２節の御言葉を唱える。すると、旅のグループが二手に分かれて、３－８節までの詩篇を歌い交わしながら、都に入って行きました。ところで、多くの方々が山を見る時に、山は永遠に不動なものであると思います。私は高い山を眺めると雄大な気持になり、雪を戴いた山々を見ると崇高さ、清澄さを感じます。また山に分け入って行く時に、俗塵を離れ、気持が新しくなり、様々なことを新しい思いをもって考えることができます。古来から、日本では動かない山々に絶対的なものを感じて、山をご神体とする山岳信仰というものがあります（富士山、御岳山など）。

しかし詩篇１２１篇は山を神々とする考えではなく、創造主である主を讃美している詩篇です。昔から変わらずにある山々の存在がある、エルサレムの都は小高い山の上にある。だから、山の存在はたいしたものである、とは言っていません、その変わらずにある山々を造り、支える主がおられる、「わが助けは、天と地を造られた主から来る」という信仰の告白が歌われています。主は天と地を創造され、その中にある全てのものを造られ、私たち人間にご自分の命の息を吹きいれ（創世記2：7）、生きるものとして下さったお方です。同志社大学の創立者新島譲（1843－90）は１８歳の頃、漢文で書かれたキリスト教の書物の書き出しに「元始（はじめ）に神天地を創造（つく）りたまえり」という言葉を読んで考えさせられた。「なるほど、この世界のあらゆるものは、これを造った神様がいなくてはできないはずだ。机は大工が作ったものだ。その机を作った大工も、大工が用いた材木も、もとはといえば決して人間業でできたものではない。するとこの書物にあるとおり、この世には真の神様というものがいらっしゃって、この天地万物をつくり、ご支配しておられるに違いない」と納得し、信仰への道にはいるきっかけになったということです。

主は天と地を創造されたまことの神様であり、私たちに命を与えて下さった、生きている主です。この神様は愛の神様です。神様が愛であることは、この世界に人間が生きるのに必要な空気、水など全てのものが備えられていることによって分かります。神様は天地を６日間で創造されました。光、大空、陸地と植物、天体（太陽と月）、水の生き物と空を飛交う鳥、陸の生き物を創造され、人間が生きるために必要な全ての環境が整えられました。人間の生きる全ての条件が揃った時、神様によって人間は創造され、生きる者になりました。人間は６日目の最後に創造されたので、すぐに７日目を迎え、その日は神様を礼拝する安息の日でした（創世記１－２章）。こうした事から、神様が人間に生きる環境を整え、先ず、第一に神様を礼拝することを教え、導いておられたことは、神様が人間を愛しておられることの明白な証拠です。アウグスティヌス（354－430）は、「あなたは、わたしたちをあなたに向けて造られ、わたしたちの心は、あなたのうちに安らうまでは安んじないからである」と告白しています（告白（上）一巻一章）。天と地を造られた主を知り、信じる時に、はじめて心に安らぎが与えられます。きょうもご一緒に主を礼拝できる恵みの群れである教会の一員であることを感謝し、これからも礼拝中心の生活に励んで行きましょう。

2、主は、私たちを守り、支えて下さる救主である。121：3－7

主はあなたの足の動かされるのをゆるされない。あなたを守る者はまどろむことがない・・主はあなたを守って、すべての災いを免れさせ、またあなたの命を守られる。（３節・・７節）

主は生きている神様であり、愛の神様です。そのことが「あなたを守る者はまどろむ（とろとろ眠る）ことがない・・あなたの命を守られる」という言葉の中に表されています。主は私たちを守るということを通して、私たちに対する愛を表しています。愛とは相手のために犠牲を払うことです。睡眠時間を削るということを通して、神様は私たち一人一人に対して、犠牲を払い、あなた方を見守っているということを表現しています。

主は、どのようにして私たちを守ってくれるのでしょうか。

主は私たちに祈りを与えて下さっています。私たちは困った時に信頼できる人に相談しますが、神様を信じる者は、先ず神様に相談します。それが祈りです。本日は教会誕生の聖霊降臨日、ペンテコステの日です。キリストは十字架の死後、３日目に死を打ち破って復活され、４０日にわたってたびたび弟子達に現れて神の国のことを語っています。それから弟子達の見ている前で、エルサレムのオリブ山から天に上げられ、雲に包まれ、天国に帰って行かれました（使徒１章）。今キリストは神の御座の右に座られ、私たちのために祈っています（ロマ8：34）。キリストは私たちのために祈ると同時に、ご自分の代わりに、聖霊を信じる者たちに送って下さり、祈りの力を与え、伝道の力を与えて下さっています。私たちに聖霊が臨んで下さって、キリストを信じることができるようになりました（Ⅰコリ121－3）。聖霊が臨んで下さって、聖霊自らが私たちと共に祈り、時には私たちの心の奥底にある思いを引き出し、言葉にならない呻きをもって、また異言をもって祈りを導いてくれます（ロマ8：26－27）。キリストは「何事でもわたしの名によって願うならば、わたしはそれをかなえてあげよう」（ヨハネ14：14）と約束されました。聖霊に満たされているということは、私たちがどんなことでも祈るということによって現されます。

ここで脱線しますが、祈りについて皆さんにお尋ねします（順不同で尋ねます）。

キリストは朝に祈り、徹夜で祈り、感謝の時に祈り、問題のある時に祈り、食事の時に祈り、目の前に十字架の死が迫っている時に祈り、十字架の上で祈り、甦って弟子達に現れた時に「聖霊を受けよ」と祈っています。

人生には戦いや問題があります。詩篇１２１篇には、灼熱の太陽の害、月の青白い光をあびると精神障害を起こすというようなトラブルや命の危険に巻き込まれるような時があることを告げ、その中で主の守りが在ることを告げています。主の守りを確実に得るために、聖霊は「祈れ！」と私たちを祈りに導きます。「悩みの日にわたしを呼べ、わたしはあなたを助け、あなたはわたしを崇める」という御言葉を信じて祈りましょう（詩篇50：15）。

一人の牧師の証を読みました。１９３８年（昭和１３年）I牧師は山口県の教会を辞して中国伝道に行くことを決意した。すると中国までの旅費を出してくれる人がいた。またいろいろな人々が献金を寄せて下さり、５０円になった。当時月３０円を教会からいただいていたので、５０円あれば当分生活できるということで、出発日が決まった。ところが出発前日、ある信者のために教会から４９円借りてあげたことを思い出し、本来はその信者が返すべきものであるが、牧師はそれを返済した。残りは１円である。旅費はある、だが１円では向こうに渡っても生活できない。困った。教会の会計さんに言って借りようかと思った。だが、いつもメッセージの中で「思い煩うな、あなたを守る者はまどろむことなく、あなたを守っている。主に信頼せよ」と皆に伝えていたではないか。そうメッセージしている本人が、人に借りることなど出来ない。そこで祈った、「神様、私は信者のために借りた金を会計に返し、今１円しか残っていません。眠ることなく、常に私を見守っている神様、どうか必要なお金を与えて下さい」。出発の日、行かなくてすむように腹でも痛くなればと思ったが調子がいい。家族にも変わりはない。心を決めて１円をもって出発した。防府駅から列車に乗るまえに、１３人の人が餞別を下さった・数えたら３０円あった。門司駅に着くと、知人が見送ってくれ、餞別をいただいた。１５円であった。門司港から船に乗る時に二人の人が来てくれ、餞別をいただいた。４円であった。３０円、１５円、４円で合計４９円となった。I牧師が貧しい信者のために借り、それを自分のいただいた餞別で返済したのが４９円であった。これこそ、まどろむことなく牧師を見守っていた主の恵みの答であったのです。主は、私たちを見守っておられます。真実な気持をもって主に従い、どんなことでも祈って行くならば、主は素晴らしい助けを与えて下さいます。今朝、あなたの問題のために、仕事のために、病気のために、またどんな事でも、私たちを見守って下さっている主がいることを信じて、祈りましょう。祈りは必ず届いて素晴らしい答が与えられます。

3、主は、私たちの人生を完成して下さる永遠の主である。121：8

主は今からとこしえに至るまで、あなたの出ると入るとを守られるであろう。（８節）

８節の御言葉は、朝、起きてから、夜、床につくまで、そして眠っている間も、主が守って下さるということを表しています。とこしえという言葉がありますので、この地上に生を受けた誕生の日から、やがて地上を去って天国に入る日までの一生を守り続けて下さるということをも意味しています。ところで人生には思わぬ苦難が起ります。例えば、誕生の時に障害を受ける場合があります。年若い時に事故、病気に遭遇する場合があります。老年になってから病気になることもあります。

S牧師は、暴走してきた大型トラックに、夫婦で轢かれ、次男は跳ね飛ばされてしまった。次男はかすり傷ですんだが、妻は即死、自分は腰椎、左大腿骨、右骨盤、右足首、その他数箇所の骨折、しかし最終的には回復することができたが、何よりの痛手は、３６年間貧乏な牧師生活に耐え、３人の子どもを育て上げた妻を失ったことであった。自分の体の痛み、そして妻を失って心は悲しみでいっぱいであった。事故後１０日目に病室を移るので寝台車によって運ばれる途中、ふと窓の外の空を見上げると、晴れ渡った空の彼方に、着物を着てにこやかに立っている妻の姿を見た。妻は生きていると思い、生きる喜びと希望とが湧いてきて、回復に向かい、再び牧師の仕事に復帰することができたのです。主は今からとこしえに至るまで、私たちの出ると入るとを守っていて下さるのです。S牧師は事故後、ベッドの中から、天国に行った妻の姿を見たことによって、改めてキリストは共にいて下さる、生きている主であることを、そのまま信じる確信を深めたのです。事故という悲惨な目に会いましたが、それで終りではなく、妻との天国における再会という希望が与えられた。そして回復を与えられ、多くの人々にキリストの恵みを伝え、自分と同じようなトラブルに遭遇している人々を慰め、キリストにある希望を伝えるために用いられたのです。

まとめ　もう一度、詩篇１２１篇を朗読します。❶主は天と地を造られた創造主である、❷主は私たちを守り、支えて下さる救主であり、祈りを通して主の守りを求めることができる、❸主は私たちの人生を完成して下さる永遠の主であることを思いつつ、朗読に耳を傾け、そして共に祈って、「わが助けは天と地を造られた主から来る」ことを信じ、「主は今からとこしえに至るまで、即ち私たちの一生を導き、天国に連れて行って下さる主である」ことを信じ、祈りましょう。

祈　り　　天地の造り主である主なる神様、私たちは多くの偶像に囲まれていますが、「わが助けは、天と地を造られた主から来る」ことを信じます。「主が今からとこしえに至るまで、私たちの一生を守って下さる」ことを信じます。今週も恵み深い神の聖霊によって、祈りながら毎日を主に従って行けるように導いて下さい。主の愛の力によって、心の病気、肉体の病気の重荷を持っている全ての方々が速やかに回復することを信じます。午後からの集い、結婚式のリハーサル、夜の礼拝に至るまで全てを主の栄光の中に導いて下さい。生きている救主イエス・キリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献詩篇注解―浅野順一、岸井、ナイト、黒崎、口語略解、新共同訳略解、フラシスコ会、LAB。「その人は慰められん・日キ教団」、「天の梯子・三浦綾子・主婦の友社」、「告白・アウグスティヌス・岩波」、「聖書事典・日キ教団」