赦し、愛し、新しい人生を与えて下さるイエスキリスト　ヨハネ8：1

赦し、愛し、新しい人生を与えて下さるイエスキリスト　ヨハネ8：1－11　　　主の2006.6.11礼拝

最近エレベーターの事故が続発し、死亡事故まで起きています。製造元のエレベーター会社は「わが社に責任はない。管理会社に問題がある」と言って責任を回避しようとしています。「スミマセンでした」と過失を認めると、後に多額の賠償金を請求される恐れがあるので、外国では事故後の賠償責任のことを考えて、例え人が死んでいようとも、簡単に謝ろうとしないことがよくあります。ところで、人間は自分以外の他人の過失、失敗などを責め、批判します。しかし、自分の事になると、なかなか自分の過ちを認めようとしない、あるいは言い訳をするという傾向があります。アダムは、神様から「食べてはいけない」と命じられていた木の実を食べてしまい、神様から「あなたは、食べるなと命じておいた木から、取って食べたのか」と問われた。すると、アダムは抜けぬけと「神様が、私と一緒にして下さったあの女が、木から取ってくれたので、私は食べました」と答え、責任を自分の妻エバに転嫁しています。そこで、神様がエバに「あなたは何ということをしたのだ」と言われると、「蛇がわたしを騙したので、私は食べました」と言い訳をしています（創世記３：1－13）。キリスト以前の最大の賢者と言われるソロモン王は「その罪を隠す者は栄えることがない、言い表してこれを離れる者は、憐れみを受ける」と言っています（箴言28：13）。主なる神様は、罪を認め、神様に赦しと救いとを求める者を受け入れ、赦し、新しい人生の出発を与えて下さいます。何故なら、主なる神様は愛の神様だからです。

本日はヨハネ福音書8：1－11です。姦淫の罪を犯した女を責める人々に対し、キリストは「あなた方の中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」と言っています（７節）。罪を犯した女に対しては、「お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」という赦しと共に、再生の人生を歩むように祝福しています（１１節）。「イエスキリストは、昨日も、今日も、永遠（とこしえ）までも変わることのない救主です」（ヘブル13：8）。イエスキリストは、全ての人を隔てなく受け入れ、罪を赦し、限りない愛を注ぎ、新しい人生を与え、恵み深い真理の霊である聖霊によって平らかな道を歩むように日々に守って下さり、私たちを永遠の天国に導くまことの救主です。今朝、共に主のメッセージに耳を傾け、共に祈って、今週も喜びの日々、祈りの日々を前進して参りましょう。

内容区分

1、キリストは、常に罪人の側にいて下さる救主である　8：1－9

2、キリストは、常に罪人と向き合い、新しい人生へ導いて下さる主である　8：10－11

資料問題

７：５３－８：１１は残存する多くの写本に欠けているが、これを含む写本も少なくはない。写本の年代、文体などから真正のヨハネ文書であるかどうかが議論されていて、英語聖書RSVは欄外に写している、日本語聖書は本文に入れてカッコつきにしている。聖霊の奇しき導きによって、この美はしい物語が聖書の中に保存されたことは幸いである。５節「姦淫の女を石で打ち殺す」、石で打ち殺されるのは許嫁の女の場合、申22：23,24を見よ。7節「罪のないアナマルテ―トス」、単に罪がないというばかりでなく、罪の欲望がないことでもあろう。１１節「罰しない（罪せじー文語訳）」、ロマ8：1と同じ。審かないよりも重い意味。

1、キリストは、常に罪人の側にいて下さる救主である　8：1－9

「モーセは律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」（５節）、イエスは彼らに言われた、「あなた方の中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい（７節）

キリストは、朝早く神殿に入ったのですが。もう既に大勢の人々が御許に集ってきています。宮の広場に朝日が射しこみ、すがすがしい気持で、人々がキリストを囲んでお話を聞いている平和な情景が目に浮かびます。ところが、その平和をかき乱す律法学者やパリサイ人らがやって来て、一人の女をキリストと彼らの真ん中に立たせています。４節から７節、彼らは口々に言っています、「私たちは、この女を姦淫の現場で捕まえました。モーセはこういう罪を犯した者は石で打ち殺せと命じていますが（申22：24）、あなたはどう思いますか」。これは「イエスを試して、訴える口実を得るため」（５節）の彼らの問いかけでした。この問いは二つの問題が待ち受けています。一つには、もしキリストが、律法の命じるとおりに、この女を石打ちの刑にしなさいと言えば、キリストは愛と憐れみの救主である、罪人の友であるというのは偽りであるという事になってしまいます。さらに、もし死刑を勧めたとなると、当時の支配者であるロマ政府が持っている死刑を宣告する権限を侵害することになり、ロマ政府から追及されることになります。二つには、もしキリストが、その女の人を赦しなさいと言えば、キリストはモーセの律法を破り、姦淫を認める者であるという非難を受けることになります。律法学者達は、キリストを陥れるために巧妙な質問を仕掛けたのです。その質問を聞きながら、キリストは身をかがめ、黙って指で地面に何かを書いて、一向に答える気配がありません。この場面から三つのことを知っておきましょう。

第一に、キリストの思いやりの深さと態度です。

キリストが身をかがめて地面に何かを書いていたのは、彼女を見ないためであったと思われます。この女性は赦し難い、姦淫という大きな罪を犯し、皆の前でさらし者になり、多くの人々に好奇の目で見られている、律法学者達からは冷たい視線をあびている。その中で、キリストだけが彼女を見ないで、地面に何かを書いている。人々は、キリストは一体何を書いているのだろうかということで、女の人に向けられている視線は、だんだんとキリストのほうに向けられ、遂には人々の視線はキリストに集中しています。

第二に、この場面で知ることは、キリストは人の心の奥底まで知っておられるということです。

人々がしつこく答を求めているので、キリストは「あなた方の中で罪のない者が、この女に石を投げつけるがよい」（７節）と答えています。罪の無いというのは、心の中に罪の欲望がないということをも意味しています。誰もが予想しなかった深い、鋭い答であり、心にズシリと響くキリストの御言葉です。キリストは言われます・・・・確かに彼女は罪を犯した、その罪は審かれるべきである。あなた方は彼女を断罪したいのなら、そうしなさい。但し罪のない者が、また心の中で罪を思ったことのない者から石を投げなさい。あなた方は自分の義を声高に主張し、自分が正義だと思っている、だが心を探ってみよ、あなた方の心には本当に罪がないのか、ないと思う者が石を投げつけなさい・・・。社会にはルールがあって、それを破れば裁判があり、罰則があります。それはそれで社会生活のために最低限必要なことですが、今はその次元の話ではないのです。キリストは、あなた方は、彼女を捕らえ、さらし者にし、しかも私を陥れる道具として彼女を利用しているではないか、という鋭い問いを発しています。

第三に、話が少しとぶかもしれませんが、教会の交わりについて考えておきましょう。

私たちは人の欠点、足りなさなどは何故か目に付きやすく、すぐに批判したり、人に言い触らしたりします。しかし、教会はキリストを中心とする愛の共同体です。教会の交わりは祈り合い、赦し合い、助け合い、励まし合う交わりです。今週はファミリーの週です。ファミリーは小さなキリストの教会ですから、キリストを中心にして交わりを大切にして（下記参照）、特に祈り合って行くようにして下さい。

クリスチャンの交わり

1、苦しみ、楽しみ、悲しみ、喜びを共にする交わりー天国を地上に再現するような交わり

2、祈り合い、助け合う交わりー仕え合う交わり

3、御言葉に従う交わりー主の御心を聖書によって知り、主に従う

4、開放的な交わりーあたたかい心をもって人を受け入れて行く

5、キリストを中心とした聖（きよ）い交わり

2、キリストは、常に罪人と向き合い、新しい人生へと導いて下さる主である。8：10－11

イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。（１１節）

９節の終りに、人々は去って行き、キリストと女だけが残された、とあります。彼女に注がれていた大勢の視線がなくなった時に、キリストは身を起こして彼女に話しかけています。彼女は人々がいなくなりホッとしたことでしょう。彼女はキリストの前に立ち、「このお方は何かも知り尽くしているような眼差しをしておられる、だがその目は審く目ではなく、慈愛に満ちておられる」ということを感じとったことでしょう。しかし、「私に何を話しかけるのだろうか。私の罪を断罪するのだろうか」という怖れの気持をもちながら、キリストの御言葉を待っています。キリストが話しかけたことが１０節にあります。ごく当然のことを、分かりきったことを聴いているような内容です。しかし、この問いは、彼女がすぐに答えることが出来るものでした。ここにキリストの愛があります。ごく易しい単純な質問によって、彼女との接点をもち、彼女をご自分のほうに引き付けています。彼女は11節前半「主よ、だれもございません」と率直に答えています。それを受けて、キリストは１１節後半「わたしもあなたを罰しない、お帰りなさい、今後はもう罪を犯さないように」という赦しの宣言をし、愛をもって彼女を再生させ、新しい人生に踏み出して行くように祝福しています。

このことから、救主イエスキリストの恵みを三つあげてみます。

第一に、キリストは、愛はすべての咎（とが）を覆うということを実践しておられる救主です。

姦淫の現場で捕らえられた女性は、人々の好奇の視線の中に立たされ、さらし者になっています。多くの人々がジロジロと彼女を見たことでしょう。しかし、キリストは身をかがめ、ひたすら地面にものを書いていて、彼女を見ないようにしています。ソロモンは「憎しみは、争いを起こし、愛はすべての咎をおおう」と述べています（箴言10：12）。使徒ペテロは「万物の終りが近づいている。だから心を確かにし、身を慎んで、努めて祈りなさい。何よりもまず、互いの愛を熱く保ちなさい。愛は多くの罪を覆うものである」と言っています（Ⅰペテロ4：7－8）。愛はすべての罪・咎を覆うとは、私たちは罪を審くのではなく、主に執り成しの祈りをささげ、その人が罪を悔い改め、離れるように祈り、願うことです。また、愛はすべての罪・咎を覆うとは、その人の過失を他に漏らさないことです。倫夫先生に、「主は私たちの咎と罪を雲のように吹き払い、霧のように消した」という主の御言葉を朗読してもらいました（イザヤ44：２2）。主は私たちの罪を赦し、忘れているのに、人間はいつまでも人の過失を覚えているということがないように、他に言い触らすことがないようにということを教えられます。

第二に、キリストは、人を審くことよりも、赦しを与えるために来られた救主です。

罪は神様によって審かれなければなりません。この女の人の罪も、神様の審きを受けなければならないのは明白です。キリストが言われた「わたしもあなたを罰しない」というのは、「あなたの罪を見逃す」ということではありません。罪は神様によって罰せられます。そこで、キリストは「わたしは罪のないきよい者である。そのわたしがあなたの罪の身代りになって、罪の罰を受けよう。それは十字架である」ということを予め告げていると理解できます。キリストは、この後に実際に十字架にかかり、人の罪の身代りとなり、全ての人のために救いの道を開いて下さいました。

第三に、キリストは、人をダメと決めつけないで、限りない可能性をもって見て下さる救主です。

キリストは、「お前は致命的な罪を犯した。もうダメだ。もうチャンスはない」という冷たいことを言うお方ではありません。使徒パウロは、クリスチャンを迫害していましたが、不思議な選びによってキリストの救いを受けた人です。昨日までは迫害者であったパウロが真心をもって悔い改めた時に、キリストは何と世界中に福音を伝道する宣教師としてパウロを用い、彼はその信任に応え、新約聖書中に１３通の手紙を残すという偉大な働きをしています。彼は聖霊に導かれて、「誰でもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である。古いものは過ぎ去った、見よ、すべてが新しくなったのである」という御言葉を残しています（Ⅱコリント5：17）。キリストを信じ、罪を赦され、生まれ変わった時に、キリストは限りない可能性を持つ者として、私たちを新しい人生に導いて下さいます。

ベーカー教授は、毎年学期初めに学生たちに言っていた。「私は勉強しない連中は好きでない。君たちは全力を尽くして頑張れ。念のため言っておくが、クラスの50％の者はパスしないであろう。それが君でないように気をつけたまえ」。教授の言うとおり、毎年５０％ほどの者が落第した。ベーカー教授は同僚の教授たちとコーヒーを飲みながら、「今年も５０％落第生が出た。厳しく教えている私たちは優秀な教授だ」と言い合っていた。ベーカー教授は妻に誘われて教会に行くようになった。そこで、「自分は生徒に学ぶ意欲を持たせるにはどうしたら良いのか」ということを考えるようになった。牧師が「聖書の中に答がある。聖書を読んで祈りなさい」と教えてくれたことを思い出し、聖書を読み始めた。そしてコリント第一１３章「愛の教え」を読んだ。それからは自分の生活の中にいつもキリストがいるようになった。ベ－カー教授は学生を集めて言った、「私は君たち全員がパスすることを望んでいる。君たち全員がパスするのを見る事が私の職務だ。学びは難しい。しかし協力し合って行けばクラス全員がパスできるはずだ」。クラスの雰囲気は変わり、学期が終わって見ると、全員がパスし、しかも殆どの学生がAまたはBという成績であった。ベーカー教授は「私は採点の基準を下げたわけではないのに」と驚き、感謝した。ベーカー教授がキリストを信じたことによって、学生たちを落第するダメな者とみる見方をやめ、キリストの愛の心を与えられて限りない可能性をもつ者として学生たちを受け入れたことによって、学生たちは真剣に学び、50％落第のクラスから100％パスするクラスに変えられたのです。

まとめ

1、8：1－9、５節、７節を読みます。キリストは常に罪人の側にいて下さる愛の救主です。思いやりの深い主です、人の心の奥底まで知っておられます。キリストを中心にして交わりを続けて行くように祈りましょう。

2、8：10－11、１１節を読みます。キリストは常に罪人と向き合い、人生を新しくして下さる主です。キリストは愛をもって罪・咎を覆い、赦しを与え、私たちをダメと決め付けないで、私たちに限りない可能性をもって期待して下さる主です。

＊聖歌総合版640番（聖歌６０２番）、２節を２回歌い、お祈りを捧げます。

祈　り　　　天地の主である神様、救主イエスキリストをこの世に遣わし、十字架の赦しと愛によって私たちを救い、新しいきよい人生の道を歩む者にしていただき、真心から感謝をいたします。私たちの心の中から、人を審く冷たい思いを取り除いて下さい。私たち全ての者の心の中に、愛の主イエスキリストのきれいな愛を満たして下さい。苦楽を共にし、どんなことでも祈り、御言葉を通してキリストに従い、あたたかい心をもって人を受け入れ、キリストを中心とした聖（きよ）い交わりをして行くように教会を導き、各ファミリーを祝服して下さい。来週の倫夫・チャチャの結婚式の全てを導いて下さい。特に雨が降らないようにお願いします。今週も恵み深い聖霊によって日々に祈りを与えられ、喜びの日々を前進できるように、イエスキリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ヨハネ注解―黒崎、バークレー、フランシスコ会、文語新約略解、榊原、羽鳥、口語新訳略解、

LANB。　　「御翼・佐藤順」、「信仰の手ほどき・尾山著・キリスト新聞社」