神を畏（おそ）れ、その命令を守れ

キリストを愛する者はキリストに従う　ヨハネ14：18－24　　　　　　　　　　　主の2006.7.2礼拝

ヤクザという暴力団の集まりは、親分子分という上下関係の組織です。子分は親分に対して絶対に従うことになっています。ヤクザの子分は忙しいようです、例えば親分が車に乗る時にはサッとドアを開けて乗ってもらう、部屋の中で親分が「暑いなー」と言えば、すぐにエヤコンを調整する、親分がタバコを吸おうとすると、ライターに火をつけて差し出すという具合に、常に親分の行動を見て行動しています。もし車のドアを開けなかったり、エヤコンを調整できなかったり、ライターを差し出すタイミングが悪かったりすれば、親分に怒鳴られたり、あるいは殴られたりします。子分は親分を尊敬して、愛して仕えているのではなく、親分に怒鳴られ、殴られるのが怖いから、仕えているというのが実状です。今度はクリスチャンの場合を述べます。その方は、奥さんが弱ってしまったことを知ると、すぐさま仕事を調整して、なるべく奥さんの傍にいるように決心して、実行しました。食事、洗濯をする、車イスでの散歩をする。奥さんは何種類もの薬を服用しているので、薬について医学書で調べ、奥さんに合わないと思われる薬を発見して医師に伝え、それをやめてもらった。奥さんをお風呂にいれるなど日常生活のすべてにわたって実に細やかに面倒を見た。その方は「これは私の喜びです。今まで以上に妻への愛が深まりました」と感謝していました。

本日はヨハネ14：18－21です。イエスキリストは、２１節で「わたしの戒めを心に抱いてこれを守る者は、わたしを愛する者である」と言い、２３節では「もし誰でもわたしを愛するならば、わたしの言葉を守るであろう」と言われています。ヤクザは怖れをもって親分に仕えます。クリスチャンの夫はは、愛をもって妻の介護をし、「すべてが喜びである」と感謝しています。私たちはキリストを信じて、罪を赦され、神の子になりました。神の子になれたのは、罪人の私を愛して、キリストが十字架の上に命を捧げて、私の身代りになってくれたからです。私たちはキリストの十字架の愛に感謝し、キリストの御言葉に従って行きます。キリストの御言葉に従うことは、私たちの喜びです。

今朝、イエスキリストの御言葉に耳を傾け、共に祈って、新しい一週間の旅路を出発し、喜びの日々を前進して参りましょう。

内容区分

1、キリストは「あなた方を捨てて孤児とはしない」と言われる真の救主である。14：18－21

2、キリストを愛する者は聖書の御言葉に従う者である。14：22－24

資料問題

１８節孤児、原語には、友のいない孤独の人の意もある。２０節その日、キリスト復活の日を指す。２１節心に抱いて守る、直訳では持つことから、心にしっかり握るの意。２３節住む、旧約時代ヤハウェ（主）は人々の中に住むことを約束（出25：8、レビ26：11,12、ゼカリヤ2：10）。キリストはご自分を愛する信徒の心の中に御父と共にきて、居を定める（Ⅰヨハネ3：24）。クリスチャンとは心の扉を開いてイエスキリストを個人的に自分のうちに迎えた者であり、これは信仰の奥義である（黙示録3：20、コロサイ1：27）。

1、キリストは「あなた方を捨てて孤児とはしない」と言われる真の救主である。14：18－21

「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない。あなたがたの所に帰って来る」。（１８節）

この場面はキリストが十字架にかかる直前の出来事です。弟子達は自分達の師イエスキリストがユダヤ教指導者によって逮捕されることを予感していました。逮捕されるだけではなく、キリストが何度も「わたしは十字架に命を捧げる、すなわち死ぬであろう」と言われたことも聴いていました。「このまま先生がいなくなったらどうしようか」という先行き不安な気持を抱えている弟子達に対し、キリストは「わたしはあなた方を見捨てるようなことをしない、この後わたしは十字架に上り、人の罪の身代りになって死ぬ。その時あなた方はわたしがいなくなったと言うだろう。だが心を騒がせるな、わたしは十字架の死の三日後に甦って帰って来る。甦ったその日から、わたしは世の終わりまで、いつまでもあなた方と共にいる」と言われたのです。この御言葉の通りにキリストは十字架の後に甦り、今も生きておられる、まことの救主です。

キリストは「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」と約束されました。

孤児とは、文字通り親・兄弟・親族から切り離されている境遇の人を指しています。キリストは「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」と言われ、肉親に恵まれずにいる人を守り支える愛の主であることを言い表しています。

孤児とは、友のいない孤独な人を指しています。キリストは「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」と言われ、友のいない淋しい人の友であることを言い表しています。

孤児とは、心の罪によって悩み、迷い、不安をもっている人を指しています。キリストは「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」と言われ、心の罪に悩む人々を見捨てずに、罪を赦し、新しい人生を備えて下さる救主であることを言い表しています。聖歌220（旧245）番、イギリス・チャールズ・ウエスレー作詞による「愛するイエスよ、Jesus Lover of my ｓｏｕｌ」の讃美があり、その２節に「ほかに隠れ家もたぬ我が身は、ただ汝（なれ）ひとり頼みとぞなす、寄る辺のなき身、置き去りにせず覆いたまえや、汝（な）が翼もて」と歌われています。キリストは私たちを置き去りにせず、私たちと共にいて下さる、生きている救主です。

「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」というキリストの恵みを、福音書の中から思い起してみましょう。キリストは、裸で墓場に放り出され、石で体を傷つけている若者の所へ出かけて行き、彼に巣くっている悪霊を追い出し、心を正常にし、人生のやり直しを与えています（マルコ5：1－20）。１２年間も長血という病気に悩まされていた女性を癒し、魂の救いを与え、社会復帰できるようにして下さいました（マルコ5：25－34）。お金はあっても、友達がいないエリコに住むザアカイの家に泊まり、ザアカイはキリストとの出会いを通して、財産の半分を貧しい人々に施すという生まれ変わった心を与えられ、新しい人生の出発をしています。今朝、キリストが私たちひとり一人を孤児とせず、置き去りにせず、私たちに救いと共に新しい人生の出発を与えて下さったことを思い起し、神様に感謝いたします。

多田さんは、日曜礼拝に出席しているうちに、会社の上司を逆恨みしている自分の心の罪を指摘された。「私も新しくなりたい」と切に願い、悔改め、祈ってキリストの十字架の愛を信じ受け入れた。翌年洗礼を受けた。キリストを信じたことによって、他人を恨む心、自分で解決できると思い上がっていた罪を悔改め、キリストに明け渡した時に、心が解放された。歌が嫌いであったのに讃美が与えられ、読む本が変わり、観る映画が変わり、聖書に一歩一歩導かれる日々に変わって行った。洗礼２年後に、すばらしい助け手の妻を与えられた。息子二人も洗礼の恵みに与り、祝された感謝の日々を歩んで来たということです。

キリストを信じることによって人生は新しくなります。寄る辺のない孤児のような淋しい人生から、キリストが共にいて下さる喜びの人生に変わります。教会に導かれ、そこで多くの信仰の友に出会います。ある方は多田さんのように人生を共にするパートナーを与えられるでしょう。「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」というキリストの真実な御言葉を心に刻んで、生きているキリストに縋りながら、信仰の道を前進して参りましょう。

2、キリストを愛する者は聖書の御言葉に従う者である。14：22－24

イエスは彼に答えて言われた、「もし誰でもわたしを愛するならば、わたしの言葉を守るであろう。そして、わたしの父はその人を愛し、また、わたしたちはその人の所に行って、その人と一緒に住むであろう。わたしを愛さない者はわたしの言葉を守らない」。（２３－２４節前半）

２３節で「キリストを愛する者は、キリストの御言葉である聖書を守る、聖書に従う者である」。２４節では「キリストを愛さない者は、キリストの御言葉である聖書の御言葉を守らない、聖書に従わない者である」と言われています。２１節でも「キリストの戒めを心に抱いてこれを守る者はキリストを愛する者である」と言われています。大事な真理はいつも率直で、誰にでも分かりやすいものです。キリストの御言葉が教えていることは、道が二つあるということです。一つはキリストを愛し、その戒めに従う道です。もう一つはキリストを否定し、その戒めを破るという道です。私たちは、恵みによってキリストを愛する者であることを感謝し、聖書の教えを守り、聖書に従う者であることを感謝し、主をほめたたえます。キリストを愛するということについて三つのことをお伝えします。

第一に、キリストを愛し、キリストに従う者はキリストの体である教会に属します。

信仰生活をする場は教会です。キリストを愛する者とは、教会生活に励む者です。私が牧師になって以来、幾たびも幾たびも繰り返して言っていることは、教会を離れて信仰生活はないということです。信仰生活とは、何があっても教会に繫がって行くということです。かつて教会に行っていたという人に会うことがあります。彼らは聖書の知識はあります。しかしそれは断片的な知識です。聖書全体ではなく、聖書の一部に偏った知識なので、キリストを心から信じることができないのです。キリストを救主として主として信じないので、心に喜びがありません。ただ教会を批判し、クリスチャンのことをあげつらうだけです。キリストはブドウの木、私たちはその枝です。枝である私たちは幹であるキリストに繫がることによって、命をもらい、生きることができます。キリストは言われました「枝が幹から離れたら、枝は確実に枯れて行く。枯れた枝は捨てられ、焼かれる」と言われました（ヨハネ15：5－6）。教会について幾つかの大事な点を述べます。

聖書の教える教会とは

第二に、キリストを愛し、キリストに従う者は、祈り、讃美をします。

毎日お祈りをしていますか・・・。毎日主を讃美していますか・・・。

ではお祈りについて聞きます・・・自分のための祈りと、人のためのお祈りと、どちらが多いでしょうか。教会で早天祈祷会をしています。聖書を共に読み、ショートメッセージを聴き、祈ります。早天祈祷会では自分のために祈ると言うことは殆どありません。自分の事を祈るよりも、人のために、教会のために祈りを捧げます。早天祈祷会を終わると、ひとり一人が恵まれた顔をして仕事に出発します。キリストは「受けるよりは与えるほうが幸いである」（使徒20：35）と言われましたが、それは祈りにおいても真理です。人のために祈れば祈るほど、主は心に祝福を注いで下さいます。

讃美はどうでしょうか・・腹の底から歌って下さい。世の中は音楽で溢れています。歌の上手な人やグループがあって、音楽の楽しみを提供してくれます。しかし「歌は世につれ、世は歌につれ」と言われているように、歌には流行があります。けれどもキリストを讃える歌は永遠です。讃美に溢れているのがクリスチャンです。

第三に、キリストを愛し、キリストに従う者の信仰は神様によって覚えられて行きます。

細川ガラシア（1563－1600）という女性がいました。本名は玉といい、明智光秀の三女として生まれ、１５歳の時に織田信長の媒酌で大名細川忠興と結婚します。ところが父光秀が信長暗殺という大事件を惹き起こし、光秀自身も反乱から１１日後に土民に殺されてしまいます。玉は細川家から離縁されますが、天下をとった秀吉によって、二年後に細川家に復縁を許されます。玉は２４歳の時に、ひそかに教会を訪れ、聖書の話を聴いて感動し、洗礼を希望しますが、教会側は秀吉のスパイではないかと疑い、洗礼を認めなかった。玉は主人忠興に外出を禁じられ、仕方なく侍女を教会に行かせ、彼女が聞いてきた聖書の話を熱心に聞いていた。この侍女は主人玉の命令で教会に行き、話を聞いている内に、信仰をもち洗礼を受けます。ところが秀吉が教会と切支丹（当時の日本におけるクリスチャンの呼び方）を迫害し始め、切支丹大名である高山右近はマニラに追放されてしまいます。その最も困難な時期に、彼女は洗礼を受け、洗礼名をガラシア（恵み）としたのです。主人忠興は、彼女の洗礼によって、細川家が滅亡すると考え、非常に怒って刀を突きつけて信仰を捨てるように言うが、彼女は応じない。その後、種々のことがあって、１６００年細川家は包囲され、ガラシア夫人は我が子と召使を逃がし、自らは家臣によって命を絶ってもらい、天国へ旅立って行く。忠興はその後九州小倉に移り、彼女のために追悼ミサを営んだ。それから時は流れ、明治８年（１8７６年）世は明治政府になり、熊本藩主細川侯はアメリカの軍人ジェーンズ大尉を招き、熊本洋学校を開設した。ジェーンズ大尉の聖書講義を聞いて、３６名が信仰決心をし、その中から教会指導者が生まれて行きます。明治初期、横浜、札幌そして熊本で信仰決心者が起され、教会誕生の原動力になったのですが、その一つが細川ガラシアの系譜につながる熊本バンドと呼ばれる働きであり、彼女の信仰が時を経て新しい日本の世代に受け継がれて行ったのです。

個人的な事ですが、先ず家内の母が信仰をもち、次に家内が信仰をもち、その次に家内の祖母が信仰をもち、やがて家内の父が信仰をもっています。祖母、父母、家内と三代が続き、四代目が敦子、愛雄であり、その次に慧、愛、拓愛が続きます。皆さんの所でも一人の人がキリストを信じ、キリストを愛し、キリスに従う人生を歩んだことによって信仰が受け継がれていると思います。皆さんがもっている信仰は、決して絶えることがなく、神様が覚えて下さり、後の子孫に伝えられて行きます。

まとめ

1、14：18、「わたしはあなた方を捨てて孤児とはしない」という恵みに感謝し、主の守りの中にあることを感謝して行きましょう。

2、１４：２３－２４前半、キリストの教会に繫がり、祈りと讃美を絶やさず、キリストを信じ、愛する信仰は神様が覚えていて下さることを信じて、主に従い続けて行きましょう。

祈　り　　天地の主である神様、独り子イエスキリストにより、救いを受け、キリストの教会に導かれ、信仰生活を継続していることを感謝します。これからもキリストを愛しキリストに従う祝福の道を歩ませて下さい。７月の月もキリストを信じる方々が起されますように導いて下さい。病気の方を癒し、仕事を求める者に仕事を与えて下さい。イエスキリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献ヨハネ注解―榊原、フランシスコ会、バークレー、米田、黒崎、ライル、ＬＡＮＣ。

よろこびの泉７月号、チャペルタイムス７月号、「三浦綾子・細川ガラシア夫人・小学館」、「尾山令仁・主の弟子となる・羊群社」