信仰生活の決め手―主イエスを仰ぎ見つつ進もうー

信仰生活の決め手―主イエスを仰ぎ見つつ進もうー　　ヘブル12：1－3　　　　主の2006.9.10礼拝

本日は３名の１０代の方々が洗礼を受けます。２００６年９月１０日、３名にとって、イエス様を信じ、天国を目指して進む新しい人生の誕生日です。３名が一生涯信仰を全うして行くように、皆で祝福を祈って下さい。１９歳で洗礼を受けたご婦人がいました。認知症が進んでも讃美を歌っていましたが、急に体力が衰え、意識を失いました。召される前の三晩、クリスチャンの娘さんが、母親の唇を湿らせながら、思い出す限り母のしてくれたことを語り、聖書を開き、天国の素晴らしさを語ってあげました。母親は話の区切りごとに息を吐き出すようにして頷いていました。娘さんが「母さん、ありがとうね！」と言うと、その閉じた目から一筋の涙が頬を伝わって落ちてきました。早朝、母親はイエス様に魂を引き取られるように、静かに天に召されて行きました。

本日の聖書個所はヘブル12：1－3です。２節前半に「信仰の導き手であり、またその完成者であるイエスを仰ぎ見つつ走ろうではないか」との勧めがあります。私たちが信仰を持ち続け、天国へ入る秘訣は主イエスを仰ぎ見ながら日々を生きることです。人間には神様のことを知る霊があります。考えたり（知性）、感じたり（感情）、物事を決める（意志）心（精神）があります。そして肉体があります（Ⅰテサ二ケ5：23）。認知症になったとしても、体が衰えても、神様のことを知る霊が衰えることはありません。１９歳で洗礼を受けたご婦人は認知症になりましたが、娘さんが語る聖書の御言葉を霊において受け止め、理解し、娘さんからの感謝の言葉を聴いて涙を流したように、私たちの霊は神様の恵みによって支えられています。信仰を終生持ち続けて行く秘訣は主イエスを見上げ、主イエスから目を離さないことです。そのためにヘブル１２:２前半の御言葉を暗誦して下さい。主イエスを仰ぎ見て、きょうといううちに、互いに励まし合って行くことが、信仰生活継続の決め手になります。

今朝もご一緒に主の語りかけを聴き、祈って、新しい一週間の旅路を出発して参りましょう。

内容区分

1、信仰生活の決め手は、信仰の決勝点である天国を目指すことである。12：1

2、信仰生活の決め手は、主イエスを仰ぎ見つつ、主イエスから目を離さないことである。12：2－3

資料問題

１節「重荷」、邪魔者、障害物のこと、また係累をさす。宗教的儀式とか伝統的習慣か、いっさいのこの世的な煩わしさなどである。この世的義理人情である。永遠の生命を受け継ぐには、家、兄弟、姉妹、父、母、子、もしくは畑を捨てなくてはならない（マタイ19：29）。「罪」、定冠詞がついているので、特定の罪、すなわち信仰に反する罪をさす。「参加すべ競走」、走ろうではないかという表現から、走る種目である。これに参加する者は全ての邪魔ものと罪とを捨て、ゴールを目指して最後まで走り抜く心構えが必要である（Ⅰコリ9：24－26）。２節「導き手アルケーゴス」は指導者、また創始者、創立者、草分けを意味する。「完成者テレイオーテス」、完結とか終末の意味が含まれている。主イエスは信仰の始めであり、終わりである。「仰ぎ見つつ」、わき目もふらず、また後ろを振り返ることなく（創世記19：27、ロトの妻を思い出せ）、ただ主イエスを見つめて走ることである。２節「恥をもいとわないで十字架」、３節「罪人らのこのような反抗」を忍ばれた罪なき主イエスを深く、充分に思うとき、私たちも苦難を耐え忍ぶことができる。それは主イエスが私たちの苦難を背負って下さるとの信仰が起るからである。私たちは苦難に目を向けるのではなく、苦難を忍ばれ、勝利をとり、父なる神の右の座で祈っておられる主イエスを仰ぎ見る時に、信仰の競争に勝つのである（ロマ8：34）。

1、信仰生活の決め手は、信仰の決勝点である天国を目指すことである　12：1

こういうわけで、わたしたちは、このような多くの証人に雲のように囲まれているのであるから、いっさいの重荷とからみつく罪とをかなぐり捨てて、わたしたちの参加すべき競争を、耐え忍んで走り抜こうではないか。（12：1）

本日のヘブル１２：１－３はヘブル人への手紙全体の中で最も重要な個所です。何故なら、私たちの信仰生活の決め手となる教えが述べられているからです。どんな教えでしょうか・・・・。

第一に、信仰を保ち、天国という決勝点に向かって前進せよ！

「参加すべき競争」とは、私たちの前に置かれている競争ということで、神様が天国に行くように備えて下さったもので、キリストを信じ続ける道です。その道は細い道です。「赤信号みんなで渡れば怖くない」と言いますが、信仰の道はそれとは正反対の道、一人で行く道です。明治の時代（1８９１年）に、今の東大教養学部にあたる所で朝礼があり、天皇陛下署名がある教育勅語に対し、教師も生徒も最敬礼する決まりでした。教師である内村鑑三（1861－1930）は自分の番が来た時に、咄嗟に「これに最敬礼して礼拝の態度を表すのは偶像礼拝である」と判断して、礼をしませんでした。この事が天皇をないがしろにしている、クリスチャンは日本の国体に反する者であるという非難を受け、教師を辞めさせられ、住む所を追い出され、日本全国を流浪し、その中で奥さんが天に召されるという悲運を味わいます。しかし彼はキリスト信仰を貫き通し、後年「聖書の研究」を発行して多くの人々にキリストを紹介し、天に召されて行きました。日本の国は、彼を国体に反するとして迫害しましたが、戦争が終わってから、日本に寄与した人として彼の記念切手が発行されました。どんなに細い道であってもキリストに従うことが勝利です。

第二に、信仰を応援してくれる証人がいる、重荷と罪を捨てて信仰生活を続けよう！

私たちの信仰生活は孤独ではありません。「多くの証人に雲のように囲まれている」のです。高校時代に駅伝で走ったことがありますが、坂のあるコースを走り、苦しさのあまり、もうやめよう、棄権しようと思った。その時に「ガンバレー！」という声援を聞き、その声援に励まされ、無事に次の走者に引き継ぐことができました。信仰のレースを走っている私たちを、多くの信仰の先輩たちが天国から応援してくれています。現在私たちは教会に属して、互いに励まし合っています。今週はファミリーの週ですが、私たちに祈りの家族があり、共に祈り合えることは素晴らしい恵みです。祈りの励ましを受けながら、「いっさいの重荷とからみつく罪をかなぐり捨てて」進むことが大切です。重荷とは信仰の邪魔になるもの、この世の宗教的習慣、義理人情を指しています。あるご婦人はクリスチャンになって、いつの間にか自分は神棚の花を取り替え、仏壇にご飯を供えることをやめてしまったことに気づいたそうです。存在しない偶像に花を捧げることは虚しい、食べもしないご飯を形ばかり備えても仕方がないことです。一つ一つ私たちを縛っていた重荷から私たちは自由になって行きます。罪とはキリストに反する思い、不信仰を指しています。スミルナ教会の牧師ポリュカルポス（69－155）は捕らえられ、信仰を棄てるように脅迫されますが、「キリストは８６年の今日まで私に対し一度も悪いことをしませんでした。どうして、この愛の主を裏切ることができましょうか」と告白して火あぶりの刑を受けて天国へ帰って行きました。どんな時にも、キリストに背く罪を犯してはならないのです。サタンは言います「一度だけだから大丈夫。皆がしていますよ。こんな小さいことだから見逃してもらえる。この次からしなければ良いのだ」。このワナにハマらないようにして下さい。

第三に、信仰の道を「耐え忍んで走り抜こう！」

信仰生活はインスタントなものではありません。ある作家が田舎に行き、食堂に入った。「コーヒー下さい」と注文した、「しばらくお待ちください」と言われた。見ていると、店主が奥からコーヒー豆を取り出し、それを手回しの道具を使って豆を丁寧に挽いた。鉄瓶でお湯を沸かし、おもむろにコーヒーを淹れてくれた。作家は田舎の食堂だから、インスタントのようなコーヒーが出ると予想していたのでビックリした。そして、何かもインスタントの時代に手間ヒマかけて注文に応える姿勢に感動したということです。自動販売機にお金を入れ、ボタンを押せばコーヒーが出てくる時代です。「神様、お願いします」と言えば、自動販売機のようにすぐ答があれば便利なのですが、信仰はインスタントで結果を得られるものではありません。きょうも、一週のはじめの日曜礼拝に出席したという恵みがあります。聖書を読み、祈るという日々があります。それが重なり、つもり積もって、私たちの信仰が形成されて行きます。だから耐え忍んで信仰の道を走り抜こうと言われています。

2、信仰生活の決め手は、主イエスを仰ぎ見つつ、主イエスから目を離さないことである。12：2－3

信仰の導き手（創始者）であり、またその完成者であるイエスを仰ぎ見つつ（目を離さないで）、走ろうではないか。彼は自分の前に置かれている喜びのゆえに、恥をも厭わないで十字架を忍び、神の右に座するに至ったのである。あなた方は弱り果てて意気阻喪しないために、罪人らのこのような反抗を耐え忍んだかたのことを、思いみるべきである（２－３節）

２節、「信仰の導き手であり、またその完成者であるイエスを仰ぎ見つつ走ろうではないか」という御言葉こそが信仰生活の決め手になるものです。主イエスはガリラヤ湖の漁師ペテロたちに「わたしについて来なさい」（マタイ4：19）と呼びかけ、彼らをご自分の弟子になさいました。私たちがクリスチャンとなり、主の弟子となるために、主イエスは何か特別なこと、例えば聖書に精通すること、誰よりも多く集会に出席すること、学歴、年齢、性別、民族、身分、地位などを要求しませんでした。主イエスは言われました、「わたしはあなたを愛している。だから、わたしはあなたのために十字架に架ったのだ。わたしは陰府（よみ）にまで下ったが、死を滅ぼして甦へり、あなたに永遠の命を与える者だ。再び言う、わたしはあなたを愛している。あなたはわたしを愛して、わたしだけについて来なさい」と。私たちは聖霊に導かれ、罪を悔い改め、「イエスキリストは主である」いう信仰告白をして、ひたすら主イエスに従う道を歩んでいる者であることを感謝しましょう（ピリピ1：11。ロマ10：10）。

主イエスについて行くことが信仰です。主イエスが「信仰の導き手」です。「導き手」には「創始者」という意味もあります。主イエスが信仰を完結させ、私たちを天国に導きいれて下さる「信仰の完成者」です。主イエスは「わたしについて来なさい」と言われました。主イエスについて行くことを、12：2前半では＜私たちに信仰を与え、導いて下さるお方は主イエスである。主イエスが信仰を完成させて下さるお方である。この救主イエスキリストを仰ぎ見て信仰生活をしなさい。決してイエスキリストから目を離してはならない＞というふうに言い表しています。聖書朗読の詩篇１６篇で、ダビデは「わたしは常に主をわたしの前に置く」と歌っていました（詩16：8）。私たちは、主イエスを常に自分の前において、どんな時でもイエス様が一番であるという信仰に立って行くことが大切です。

しかし、サタンはイエスキリストを仰ぎ見ないように、イエスキリストから目を離すように誘惑してきます。サタンに騙されてはいけません。サタンの手口の一つは人のことを気にする、人のことにお節介を焼きすぎる（過干渉）、人の噂話をするということです。ペテロは甦った主イエスに再献身し、命を捧げる覚悟をしましたが、ふと横を見るとヨハネがいた。彼は思わず、「イエス様、ヨハネはどうなるんですか」と聞いてみた。すると、主イエスは「人のことを気にしないで、あなたはわたしに従って来なさい」と答えています（ヨハネ21：20－23）。先ず自分が主イエスに従って行くことを実践して下さい。人のことが気になっても、それを審かず、また人に言い触らさないで、黙って陰で祈ることが大切です。何か噂が耳に入ったら、自分の所でとどめて、その聞いたことは祈って主に任せることです。大体ゴシップは間違いが元になっています。ある人が「キリスト教書店に行ったら『子供を叱りつける方法』という本が出ていました。聖書に根ざしている本が、『子どもを叱りつける方法』というのは良くないと思います」。調べてみたら、その本は「子どもをしっかり躾（しつ）ける方法」というのが正しいタイトルでした。人の噂話はこうした間違いなどが拡大されて伝えられて行きます。ゴシップというサタンの手口に乗らないようにするためには、ただ主イエスを仰ぎ見る、主エスから目を離さないということが大切です。

次の三つの事柄は主イエスに従って行くための三つの基本的な標準です。これにに合わないものはサタンからのものです。

２節後半から３節には、主イエスが十字架を忍び、恥を受け、人々の侮辱に耐えて下さったことが記されています。私たちも信仰のために様々な困難な目にあったり、いじめられたりするようなことがありますが、主イエスが、すでに信仰の故に全ての苦しみを体験されています。ですから私たちの苦しみを主イエス様はよく分って下さり、私たちを支えて下さいます。

十字架を忍ばれた主イエスのことが出ています。主イエスの尊い犠牲によって救われたことを感謝し、何とかして主イエスの福音を伝道して行くように祈って下さい。

中央聖書神学校関東分校で教えていますが、４月―９月の前期は「伝道学」という科目でした。私のクラスには１０名の生徒がいて真剣に学んでいます。一昨日生徒の証の時間をもちました。これは一人の生徒の証です。「何とかして主イエスキリストを伝えたい。自分の心に『出て行って伝えなさい』という主の声が聞こえた。そして主は思いもかけない方法を示した。路傍伝道であった。『新橋エスエルランドで語りなさい』というものであった。約３０日間広場に行ったができなかった。しかし遂に時が来て、大勢の通行人に向って語り出すことができた。月に２回は行く。他の場所にも行く。語っている時に、首を縄で絞められたことがある。頭から一升瓶の酒を浴びせられたこともある。この働きに協力者も表れた。ある外国人は頭を緑に染めてトラクトを配ってくれる」。この生徒は、余りにも多くの人々が神様を知らないままでいる、何とかしようということで、やむに止まれず路傍伝道をしているのです。この学生の証を聞いて心打たれました。悔い改めを促されました。ただイエス様を仰ぎ見て、ひたすら福音を宣べ伝えて行くことを黙々として実践していることに心が熱くなりました。

まとめ

12：1－3を読みます。

信仰生活の決め手は、第一に、信仰の決勝点である天国を目指すことです。第二に、主イエスを仰ぎ見つつ、主イエスから目を離さないことです。主イエス様を伝道するために、私の生徒の一人は東京の真ん中で路傍伝道をしています。私たちにできることを示していただき、主イエスキリストを伝道して行くように祈って下さい。

内　容

天地の主である神様、独り子であるイエスキリストの十字架と復活による救いをいただいていることを感謝します。主イエスを信じて信仰生活をして行く決め手は天国を目指すことです。主イエスを仰ぎ見つつ、主イエスから絶対に目を離さないように導いて下さい。これからの洗礼式を豊かに祝福して下さい。今週も真理の霊である聖霊に導かれて、主イエスに従う喜びの日々でありますように導いて下さい。各ファミリー、こどもファミリーを祝福して下さい。主イエスキリストの御名によって祈ります、アーメン。

参考文献へブル注解―名尾、フランシスコ会、黒崎、バークレー、文語略解、塚本、LABNT。　　「ロマ時代の殉教者・宮坂亀雄・教会新報社」「キリスト教ナビ・関栄二・教会新報社」「聖書とキリスト教・佐藤陽二・アンカークロス社」